「青い花」を思い浮かべると、ある春の日に、ネモフィラの群青の大群落を初めて見たときの記憶が蘇りました。450万本とも言われた数の多さとスケール感。空の青さが降りてきたのか、はたまた丘の向こうに広がる太平洋の海の青さが流れ込んだのか……。そのような印象を抱かせるほど、青色が強烈でした。最近ではあちこちの公園でも見かけ、比較的撮りやすくなりましたが、今回は一味違ったネモフィラの撮り方を工夫してみましょう。
多重露出で撮影してみました。よく見ると芯の部分が白くかわいらしい花ですので、まずその部分がわかる程度に、こちらを向いている花をやや大きめに撮ります。その後、焦点距離は変えずに、AF(オートフォーカス)をM(マニュアル)にしてピントを外し、ぼんやりさせてシャッターを切ったものを、重ねました。ちょうどソフトフィルターをかけて撮ったようにも見えます。
春のほんわかした光と雰囲気と、花自体の優しさ、かわいらしさのようなものが表現できればと思い、撮った一枚です。撮影メニューの中に「多重露出モード」という項目がありますから、チャレンジしてみてください。
レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
焦点距離:56mm
絞り値:f/4
シャッタースピード:1/5000秒
ホワイトバランス:晴天
露出モード:絞り優先オート
測光モード:マルチパターン測光
露出補正:-0.3段
フォーカスモード:AF-S
ISO感度設定:ISO 400
VR機構を搭載し、NIKKOR初のED非球面レンズを採用。極限の画質を追求した高性能大口径標準ズームレンズ。
丘の麓にあった松の木を利用し、トンネルのような効果を狙って、ネモフィラの先にいる小さな人物に視線が行くよう考えました。奥行き感を強調した表現です。ネモフィラが満開のタイミングに撮影できると、奥側が真っ青な世界になりさらなる松の木のコントラストが面白くなります。
ネモフィラの近くにポピーが一輪だけ咲いていました。色も含め、その意外性が面白いと思い、こちらを主役にしてピントを合わせています。望遠系のレンズを選び、背景のボケ効果を考え、絞りは開け気味のf/4にしています。主役と脇役の入れ替えの面白さを狙いました。
撮影・解説:芳賀 健二