第72回ニッコールフォトコンテスト

受賞作品

グランプリ 「夏祭りの空模様」

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自由部門(単写真)

金賞 「神域」

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自由部門(組写真)

金賞 「女子旅」

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ネイチャー部門(単写真)

金賞 「夢の世界へ」

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ネイチャー部門(組写真)

金賞 「闇を待つ者」

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U-18部門(単写真)

金賞 「砂男子(すなだんご)」

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U-18部門(組写真)

金賞 「夢現」

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総評 ニッコールクラブ アドバイザー 熊切 大輔

世の中がいよいよ活発に動き出し、作品の幅が広がってきた

 素晴らしい作品の数々を楽しく、興味深く審査することができました。今回の審査で一番感じたことは、作品のジャンルの幅広さ、豊富さです。世の中がいよいよ活発に動き出し、イベントや祭りが復活し世界への旅も幅を広げています。そこにはそんな楽しさ嬉しさを心の底から楽しむ笑顔が生まれてきます。今回の応募作品に多くの笑顔が活き活きと描かれた作品が多かったことが何より嬉しいポイントでした。そしてシャッターチャンスを見事にとらえた作品も多かった印象です。
 カメラの進化はもちろんのこと、皆さんの技術向上が感じられ大いに驚かされました。加えて表現の豊かさはその作品の仕上げにも現れています。より印象的にドラマチックに、しっかりと世界観を後押しする現像テクニックは、作品のクオリティを一段上げてくれる役割を持っています。それもまた表現のひとつなのだと改めて実感いたしました。しかし一方でそれに頼りすぎ、写真が加工のための材料になってしまうような本末転倒な状態の作品も見受けられました。現在、生成AIなどテクノロジーは進化し、無尽蔵に画像を簡単に作り出せる時代になりました。そんな中で、逆に一瞬にこだわる、リアルに表現することの価値は上がっているような気がしています。一期一会の瞬間に思いを込めてシャッターを押す。それこそが撮影、写真表現の真の楽しみだと考えます。作品の仕上げはあくまでも表現の後押しであることを前提に、効果的に程よく使えることが良質な作品を生み出すポイントになるのではないでしょうか。
 いずれにせよすべての受賞作品が印象的でひとつひとつの作品に個性が光っていました。
 グランプリに輝いた、「夏祭りの空模様」井口 絵理香さんの作品です。シチュエーションとしてはシンプルですが、反射が生み出したドラマチックな空模様をうまく背景に取り込み、青春アニメの一コマのような素晴らしい一瞬を切り撮る事ができました。地面のアスファルトの模様が星空のようにも見え、そんな偶然性も素敵な作品となりました。
 では、いくつか上位作品について振り返りたいと思います。自由部門の吉村 俊祐さんの「女子旅」。奥様と娘さんの旅姿を同行したご主人がとらえた作品、つまりは女子旅ではないのですが(笑)。黒子に徹したご主人の努力が実ったと思います。そんなご主人の優しい目線が表現にも現れており、母娘の関係性をやわらかく、バリエーション豊かに切り取っています。ネイチャー部門は全体的にスケールの大きい作品が多かった印象です。土屋瞳さんの「夢の世界へ」は、まるで宇宙空間を漂っているようなウミガメの姿がなんとも印象的でした。構図に大きめの「間」を作り主体をポツンとさせることで悠々なのか孤独なのか様々なストーリーを見るものに想像させてくれます。「闇を待つ者」佐野 文男さんの作品は、フクロウの生態、それはどこか神秘的で、フクロウそのものを撮った、というより「フクロウのいる世界」という空間や空気感がそこに写っていると感じさせる作品となりました。静けさという音を感じました。
 どの作品も素晴らしく非常に接戦でした。どれが上位に来てもおかしくない、力作ぞろいだったというのが、今回の応募作品全体の印象でありました。

審査員

ニッコールクラブ アドバイザー 秋山 華子、上田 晃司、熊切 大輔、小林 紀晴、佐藤 倫子、三好 和義
ゲスト審査員 別所 隆弘(フォトグラファー/文学研究者/関西大学社会学部メディア専攻講師)
星野 佑佳(写真家/フォトエッセイスト)