第72回ニッコールフォトコンテスト
金賞 | |
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銀賞 | |
銅賞 | |
入選 |
応募点数 | 4,271点 |
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講評 | 佐藤 倫子 |
自分だけが見つけた瞬間を信じ、表現する喜びを楽しむ
72年の歴史を持つニッコールフォトコンテストは、今年から大きく生まれ変わりました。長年の応募方法に慣れている方にとっては新しい形に戸惑いもあるかもしれませんが、よりシンプルでわかりやすいコンテストになったと感じています。時代の流れとともに、フォトコンテストや応募作品の表現方法も進化を続けていますが、写真に込める情熱は変わることがありません。今年も数多くの作品が寄せられ、それぞれの写真に込められた想いが伝わってきました。
受賞作品には、作者の視点や構図、そして色彩が際立っており、強く印象に残る一枚が選ばれていると感じました。その時代や文化を映し出すさまざまな視点が集まる場であるフォトコンテストは、作品から感動やインスピレーションを得ることができる貴重な機会だと今回のコンテストで改めて実感しました。
今回、自由部門応募作品からグランプリに輝いた井口絵理香さん「夏祭りの空模様」は、まさに誰もが眼を引く一枚でしょう。水たまりの反射が空と地面に奥行きを持たせ空間が広がり、そこに映る姿が詩的な雰囲気を漂わせています。全体の色調も美しく、水面の影の黒や浴衣の赤い帯が印象的なアクセントとなっています。また、娘さんが遠くを見つめる姿勢や表情から、お祭りを待ちわびる気持ちが伝わってくるのは作者の優しい眼差しから感じることなのでしょう。
金賞の竹石和朗さん「神域」は弥彦山から映る早朝の景色がまるで雲海の中に浮かんでいるかのようです。朝靄の中に街灯が宝石のように輝き、夜明け前の静けさに神秘性を感じさせます。そう思わせるのも、中央に位置する鳥居が威厳を際立たせており、まさに「神域」というタイトルにふさわしい雰囲気が伝わってくるからだと考えます。自然とここに暮らす人の生活が調和する瞬間を見事にとらえています。また、三脚を使用しての安定した撮影や丁寧な画像処理は、作者のこだわりを感じます。
銀賞の田畑寿彦さん「力走」は、犬ぞりイベントの一瞬を見事に捉えています。手前の犬たちの必死さと活力溢れる表情、中央の犬がカメラ目線でこちらに向けていることもインパクトある瞬間です。背景に写る子供の笑顔はこの場の楽しさがより強く伝わってきます。犬たちの毛並みや顔のディテールがシャープに写されており、雪の舞う動きも美しく、臨場感が際立った作品です。
モノクロの表現も良く活かされていて、白い雪景色と犬の模様のコントラストで構図全体がまとまっています。
他の入賞作品にも、作者自身の独自の世界観やその感性をしっかりと表現された作品が多く見られました。それぞれの作品が評価されることは勿論素晴らしいことですが、それ以上に、自分だけが見つけた瞬間を信じて、写真に表現する喜びを楽しむことが大切だと思います。写真を通していろいろな作品から刺激を受けることで、これまで気づかなかった視点やアイデアが生まれることもあります。そうした新しい発見や想像力に自信を持ってその瞬間をこれからも撮り続けていきましょう。