第72回ニッコールフォトコンテスト

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ネイチャー部門(組写真)

金賞
銀賞
銅賞
入選
応募点数 1,221点
講評 三好 和義

講評 ニッコールクラブ アドバイザー 三好 和義

組写真に仕上げるのは、撮影した時とは、また違う創造

 自然の魅力をそれぞれの視点でとらえ、それを組写真という形にまとめる。写真愛好家にとっては、この上ない楽しみであり、芸術的な表現方法でもあります。今回も目の覚めるような力作が揃っていました。本当に見ているだけで、それぞれの世界に吸い込まれていくようでした。
 見事、金賞に輝いたのは、佐野 文男さんの「闇を待つ者」。森の気配を見事に表現している作品です。写っているフクロウの目線になって、森の中にいるような気持ちになれます。ボケ味を最大限に活かした手法が成功していといえるでしょう。すべて絞りが開放で撮られています。こんな撮り方があったのかと驚きました。望遠レンズでとらえた深い森の空気が写されている、今までに見たことのない雰囲気の作品です。
 銀賞を受賞した田畑 寿彦さんの「故郷の香を求めて」。迫力のある生態を描写した写真です。跳ね回る鮭を間近でリアルにとらえています。鮭仲間の目線になっているところがすごいです。一緒に泳ぎながら撮ったかのようなシーンの連続です。生命感に溢れた素晴らしい作品。海の青さの美しさも目をひきます。
 銅賞は3点、大島 淳之さんの「屋久島鳥獣戯画」。屋久島の深い森の中で、珍しいヤクシカとヤクザルの交流を美しい光の中でとらえることに成功しています。もう1作の銅賞、小川 龍一さんの「天から送られてきた手紙」。こんなに小さな雪の結晶をよくとらえることができましたね。寒い空気の中、息をころしてシャッターを切りながら、心はウキウキしている様子がこちらに伝わってきます。美しく詩的な写真です。作者が詩人の心を持たないと撮れない作品です。最後の銅賞は峯田 翔平さんの「仙郷」。石鎚山山頂で別々の日に撮られています。深度合成などをして、緻密な作品を作り上げています。四季折々の頂の表情が、まさに仙人の住む世界を見せてくれます。雄大でよいですね。峯田さんの仙郷は石鎚山にあったのですね。
 金賞、銀賞、銅賞、入選までバラエティに富んだ作品が揃いました。最近は、何がネイチャー写真なのかという議論もあります。そんな中、今回の審査で拝見した作品は力作ばかりで、胸弾む思いでした。鳥、動物、星など写真を拝見してドラマやストーリーを感じさせてくれるのは組写真ならではの表現です。鳥や動物をとらえた作品に秀作が多かったのも、瞳AFの進化のおかげです。逆光性能も上がり、透明感のある作品も数多く見られました。カメラの進化で暗い中でもオートフォーカスが素早く、正確に合う。望遠レンズで開放でもしっかりと写る。撮影していて、満足な絵がとれる、これほど愉快なことはないです。僕も日々、カメラの進化、レンズの質の向上に感謝する気持ちで撮影しています。
 今回の組写真を拝見して、皆さんが撮影現場で、笑顔を浮かべているようすが浮かんで来ました。満足いく作品を選び出し、組写真にして仕上げる。撮影した時とは、また違う創造。組写真を編集することの難しさも、また楽しいものです。
 次回どんな作品と出会えるのか、楽しみで仕方ありません。何故なら毎回期待を上回る作品に出会えるからです。今回も堪能しました。