第72回ニッコールフォトコンテスト

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U-18部門(単写真)

金賞
銀賞
銅賞
入選
応募点数 394点
講評 熊切 大輔

講評 ニッコールクラブ アドバイザー 熊切 大輔

今しか撮れない「瞬間性」はおおきな魅力

「若者らしい」写真ってなんなのだろう。私自身もその言葉を使いながら考えることがあります。ただ単に同世代の若者が写っていればそれで良いわけではありません。その世代がその場で経験すること、その瞬間に立ち会えることは実は特別なことなのです。大人がいくら写真がうまくなっても、「その場」にいること「その時」に戻ることは不可能です。今、生きている身の回りを丹念に見ると、何気ない日常も被写体に溢れています。その時にしか撮れない写真を撮ること。それこそが「若者らしい」写真ということなのかもしれません。
 今回はピュアでストレートなまさに若者らしい作品が多かった印象です。特に人々が見せる瞬間の表情を活き活きと、素直に切り撮った作品が多くあったように感じました。
 金賞の中山 鈴花さんの作品「砂男子(すなだんご)」はまさにそんな作品なのではないでしょうか。砂まみれの少年の無邪気さがそのなんとも言えない表情の中に楽しさが溢れています。良い被写体を良い表情の瞬間を逃さず撮る、そんな原点的な写真の魅力が伝わってきました。
 銀賞の雑賀 杏夏さんの「やぎどろぼう」も同様です。非常に大事に小さな命を運ぶ子どもの純粋さと一生懸命さをお母さんでしょうか、やさしく見守る目線にそれぞれの感情が見えてくるようです。シチュエーションの面白さがシンプルに切り撮られています。
 銅賞の宮城 芽唯さんの「晴耕雨読」はひいおばあさんの日常風景と深い歴史を感じさせる表情を合わせる事によって長く続く人生を感じさせる表現ができていると感じます。大胆なフレーミングによりインパクトがありました。同じく銅賞の賀久愛那さん「出番待ち」は私が気になった作品の一つです。通常スポーツ写真はその迫力ある競技を動感豊に写し出すものが多いと思います。しかし本作はある意味裏方にスポットライトを当てています。しかしそれだけではなく、光と影や色彩、デザイン的面白さを構図に散りばめ、情報量の多い見ごたえのある作品に仕上げることができています。さらに銅賞の壇辻永遠さんの「みてて」はインパクトの強い作品となりました。偶然性もあるのでしょうが、アウトフォーカスしたお母さんの表情が強烈です。何が起きたのか、怖さも感じますが実は何気ない一枚なのではないでしょうか。デジタルになって表現に出にくくなったブレボケの魅力を思い出させる作品になりました。
 さまざまなテクニックを活かして良い意味でバカバカしいほど突き抜けた演出作品も若さやパワーが全面に出て楽しいものです。美しくライティングした表現もきっと撮影そのものが楽しいのではないでしょうか。ある意味それらも今でしかできないことでしょう。しかし被写体の個性や感情を素直に、さらに光と影や周りの環境などを活かして、荒削りでもよいのでナチュラルに、ストレートな表現で写し出された作品の今しか撮れない「瞬間性」は写真に大きな魅力を与えます。そんな素直で力強い作品が多く集まったことを今回感じられたのはとても嬉しく印象に残る審査となりました。
 今後もますます素晴らしい作品が応募されるのを楽しみに期待しております。