撮影・解説：ミゾタユキ


街スナップ

世田谷線沿線を散歩しながらのスナップ。線路沿いには住宅が並び、登校途中の子供たちが踏切待ちをしていました。時刻を見るとちょうど期間限定で走行する猫の電車がやってきます。スナップでのAFモードはAF-Sですが、この時は遠くから手前を通過する電車を連続して撮りたかったのでAF-Cで連写しました〈作例1〉。

電車以外の周りを一緒に写すと、その時の天気や時間帯、人物の存在で街並みの様子が感じられます。

近くのカフェに立ち寄り、美味しそうなショーケースの中を撮らせてもらいました。

スペシャルエフェクトモードの極彩色が意外といい雰囲気。マフィンのように色が薄いものや反射しているところを撮ると濃厚な色で深みが増すようです〈作例2〉。

絞り優先モードでF値（絞り値）を小さくしてショーケースに映り込む風景にピントを合わせました。電車とその前を人が通るタイミングでシャッターを押すと、マフィンやお菓子がボケて水面をのぞき込んでいるような不思議な写真になりました。 映り込みをボカすとニュアンスや広がりができ、ピントを合わせると不思議な印象になるので、スナップするときは映り込みを探してみるのもおもしろいです〈作例3〉。

広角ズームで道の真ん中から全体を撮るとガランとして街並みというより道に。白線の内側のあたりでオシャレな暖簾が目立つ距離感でスナップ。フレームの周辺まで見渡して構図に入れるお店や大きさを考えると撮影ポジションも自然と決まりました。また手前から奥まで対角線上に続いている道が商店街の長さを想像させる印象に変わりました。ひとつのお店から外に向かうような構図で全体の広がりを遠近感で伝える撮り方もコツのひとつです〈作例4〉。

本屋の中では広角ズームでたくさん本が並んでいる様子をダイナミックに、壁面の本を手に取る瞬間は35mmで人物の動きに合わせて見たままの自然な雰囲気に撮りました。撮りたいシーンに合うレンズ選択をすると狙った写真が撮りやすいと思います〈作例5・6〉。

店先でチャパティを作っている方に会いました。声をかけてみたところ、写真を撮っていいよとOKがもらえたので張り切って近いところで撮りました。

手元を撮ってみたり〈作例7〉、

オシャレな店の雰囲気をいれつつ、カッコいい瞬間を狙い何枚も撮りました〈作例8〉。

風景の一部のときはそのまま撮ったり、挨拶ができる距離では会釈をしたり、近くで撮りたいときは声をかけるなど、人を撮るときはコミュニケーションも大切です。

また、光の方向や影、コントラスト、色から撮りたいイメージが浮かぶことがあります。写真を印象づける大きなアクセントになるので構図を決めるときのポイントにもなります。

ブルーのお皿に盛られたカレー、ボケのあるイメージ写真のように撮りました。青と黄色の補色ですっきりとした香りがたつような印象にみえます〈作例9〉。

植栽の葉がフリンジっぽくフレームにかかるようなアングルを探して、オシャレな壁に色を足して奥行き感を合わせました〈作例10〉。

ホワイトバランスを電球にして青みが強くなると水面のゆらぎと映り込んだ木々が幻想的な色合いになって夢の中の風景のようです〈作例11〉。

最後は招き猫がたくさんいる豪徳寺へ行きました。縁起物は明るく希望を感じるアングルが似合います。主役の猫が手を挙げながら空を見上げる方向に空間をつくり、奥には玉ボケで穏やかな空気と輝きのある雰囲気にしました〈作例12〉。

カメラを持って歩くと街並み、風景、お店、人、食べ物など、様々なものに目がいきます。帰り道にたくさん撮った写真を振り返ると、興味を持ったすべてが写真のなかにあり、思い出をたくさん抱えているようなうれしい気持ちになります。 また広角ズームの広がりと遠近感、単焦点35mmの自然な画角やボケのように、レンズの特徴を表現力にかえて魅力ある写真にする大切さにも気づきます。 スナップは簡単なようで奥が深く、被写体を通して目に見えないけれど感じた何かを撮るのが楽しいです。

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【撮影協力】aminchi / nostos books / バレアリック飲食店 / マルショウ アリク / 豪徳寺