撮影・解説:ミゾタユキ
広角の特徴をいかした撮り方
標準レンズと比べて、より広い範囲を写すことができるのが広角レンズです。画角が広いので写る範囲が広く、「広がり」のある写真を撮るには最適。同時に、なんとなく撮ってしまうと余計なものがたくさん写り込んでしまうということもあります。ファインダーを覗いたときにフレームの周辺まで意識して撮るのが上手に使いこなすポイントのひとつです。
建物の中など限られた空間や、後ろに下がれないような状況で「狭いところを広く」全体を捉えることができます。本屋のように部屋の角が構図の奥に入ると広がりにくわえて奥行きも感じられます。ここでは上に吊り棚もあったので腕を伸ばしてハイアングルで撮りました〈作例1〉。
目の前の紅葉を見上げると、透過した緑の葉がカーテンのように覆いかぶさりキレイでした。左右の葉が少し重なりトンネルになるアングルから撮ると、実際よりも紅葉が大きくお寺が小さく感じられます。広角は手前のものがより大きく、遠くのものがより小さく写る特徴があるので、「遠近感(パース)」が強調されます。また望遠レンズと逆で、被写界深度が深く全体的にピントが合う「パンフォーカス」という特徴もあるので、写真がシャープな印象になります。見上げて撮ると重厚感や迫力も合わせて表現できます〈作例2〉。
F値(絞り値)を小さくするほかに、レンズの最短距離(一番近づける距離)ぐらい近いところで被写体を大きく捉えると、広角でもボケのある描写になり、さらに遠近感を強調できます。枯れた花や隙間が目立たず、大きく捉えたコスモスが花畑の広がりの中で引き立たちます。かなり接近しているので、自分の影が被写体にかからないように注意しながら、主役のコスモスが空に向かって元気に咲いているように見えるアングルを先に決めて、その後に背景の花畑の位置や青空をいれる量を選び構図を決めています〈作例3〉。
ヤギが目の前でのぞき込んだ瞬間と横切った瞬間です。広角はレンズ前に近いほど「デフォルメ」されて歪む特徴もあるので、動物など顔を撮るとユニークで楽しい雰囲気になります〈作例4〉。また動きがあると躍動感や勢いも感じられる表現になります〈作例5〉。
広角のレンズはただ広く撮るだけよりも「遠近感(パース)」の特徴をうまく表現力につなげられると、ダイナミックで魅力的な写真になります。縦位置でも横位置でも、少しの撮影アングル(角度)で写真の表現に大きな変化が現れます。様々なシーンで使ってみると表現の幅も広がるのでおもしろいと思います。
*「マザー牧場」では園内の草花を傷つけたり採取したりする行為は禁止されています。
コスモスの大斜面は花畑の中に入って近距離で花を鑑賞することができますが、マナーを守って撮影しましょう。
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