今回のテーマは「超望遠レンズ」です。“大きくて長い、プロが使うレンズ”というイメージがあるかもしれませんが決してそんなことはなく、特長を知って扱えるようになれば撮影できるシーンも増え、表現の幅をぐんと増やすことができます。そしてさらに撮影を極めたい方に、“大きくて長い”超望遠レンズの扱いかたも解説していますので、参考にしてみてください。
撮影監修:斎藤勝則
おおよそ85mm以上の画角を持つレンズのことを望遠レンズと呼んでいますが、その中でも特に70mm~135mmを中望遠、そして300mm以上を超望遠と呼びます。
望遠レンズの写りかた(広角、標準とのちがい)についての詳細はこちら
望遠になればなるほど被写体を大きく、画面いっぱいに切り取ることができます。乗り物やスポーツ、動物、運動会や発表会などの他、風景やスナップなど特別なシチュエーションでなくとも超望遠画角のレンズが必要になるシーンは意外と多くあります。被写体との距離、撮影シチュエーションによって必要な画角は変わってきますが、超望遠画角を含む手軽な高倍率ズームなどもあるので、1本持っておくと便利です。
遠くにあって近寄れない被写体、またさほど遠くなくても被写体自体が小さい場合などでは、超望遠画角でググっと大きく寄って撮ることができます。
大きく寄れるということは、たとえば被写体の周辺に写したくないものがあるときはそれを避けて撮ることができますし、画角によってはその被写体の一部を切り取るような大胆なフレーミングも可能です。
メインの被写体と背景との距離感がなくなる圧縮効果を活かした撮影も、焦点距離が長くなればなるほどその効果が大きくなります。長い被写体が短くなったり、奥行きのあるものが平面的になったり、背景が迫ってくるような迫力ある画に仕上がります。
超望遠レンズの焦点距離、長いものでは一般的に600mmや800mmなどが使われていますが、それだけ長くなるとレンズ自体も大きく重く、値段も高価になってきます。
それ以上の焦点距離が必要な場合や、手軽に超望遠画角で撮影したいという場合には「テレコンバーター」がおすすめです。レンズとカメラの間に装着することで焦点距離を増やすことができるアタッチメントレンズのことで、持ち運びもしやすく便利に使うことができます。
写真のように、レンズとカメラの間にテレコンバーターを装着して使用します。
また、被写体を大きく写すならフルサイズ(FXフォーマット)よりAPS-Cサイズ(DXフォーマット)での撮影が有利となります。フルサイズのレンズをAPS-Cサイズのカメラに装着すると、そのレンズの約1.5倍の焦点距離が得られます。
レンズの構造上、基本的に焦点距離が長くなるほどレンズ本体は重く、長くなっていきます。そんな超望遠レンズならではの三脚の使いかた、手ブレを防ぐ構えかたをマスターしましょう。
長く重いレンズですので、手持ちで撮影せざるを得ない被写体以外は三脚、または動きの予測がしにくいスポーツ撮影などの場合は一脚を使って撮影する機会が多くなります。
通常、三脚を使う際にはカメラのボディー部分を「雲台」(カメラを自由な角度で固定することができる三脚のヘッド部分)に固定しまずが、超望遠レンズの場合はレンズの重さで重心が前に傾いてしまい三脚が安定せず、ブレの原因になったり三脚が倒れてしまったりする恐れもあります。そのため超望遠レンズには「三脚座」と呼ばれる台座が取り付けられており、この三脚座を雲台に固定します。
動きの予想がつきにくく、かつずっと構え続けなくてもよい被写体、例えば飛行機のような被写体は手持ちで撮影をします。長く重いレンズ、手ブレしないようしっかり構えましょう。
三脚の取り付けかた
取り付け方法や稼働の仕方など三脚の雲台部分はメーカーごとに特徴が異なりますが、雲台から出ているネジに直接カメラボディーの三脚穴をねじ込んで装着する「直付け方式」の雲台は、長く重い超望遠レンズの装着には向きません。取り付けの際に落としてしまうといったトラブルも考えられるため、あらかじめネジの付いたプレートをカメラボディー(三脚座)に装着しておき、そのプレートを雲台に固定し三脚に取り付ける「クイックシュー方式」の三脚をおすすめします。
また三脚、雲台には対応重量がありますので、超望遠レンズの重さに対応した頑丈で丈夫な三脚、雲台を選んでください。
カメラを縦位置で撮るには
横位置でカメラを装着した後、三脚座のネジ止めを少し緩めカメラを縦に回します。再びネジをしっかり締めて固定します。
画角が狭くなるにつれ、レンズの構造的にブレの影響を受けやすくなります。焦点距離の長い超望遠になるほどより手ブレしやすくなるということを覚えておきましょう。モニター上で見てブレていないように見えても、拡大するとブレている場合もありますので撮影の際に確認する癖をつけておくとよいでしょう。
ブレにくいシャッタースピードの目安は「1/焦点距離」です。たとえば600mmの超望遠レンズなら1/500秒、または1/1000秒あると安心です。
多くの望遠レンズには「手ブレ補正機能」が付いています。手ブレ補正機能をON(有効)にしておくことで、使わない時と比べシャッタースピードを遅くしてもブレを軽減できるため、それだけ撮影の幅が広がります。
手ブレ補正機能には、[ノーマル]モードと[スポーツ]モードがあり、[ノーマル]は撮影者が静止している状態で、風景など動かない被写体を撮影する際に適しています。[スポーツ]は動いている被写体を追って連写するときなどに最適なモードです。
三脚使用時には誤作動を防ぐため、手ブレ補正は[しない]に設定しますが、[ノーマル]または[スポーツ]に設定しておくことで三脚ブレを軽減する場合もあります。また三脚を使っていても雲台を固定しないときや一脚を使用するときには必ず、[ノーマル]または[スポーツ]に設定しましょう。
撮影画像を確認しながら、最適な手ブレ補正のモードを選んで設定しましょう。
画角が狭くなるにつれ、取り込める光の量は少なくなります。一般的に焦点距離の長い超望遠になるほど、より撮影時に多くの光が必要になります。つまり、シャッタースピードが遅くなったり、ISO感度を予想より上げなければならなかったり、夜など暗いシチュエーションでは撮影自体難しいケースも出てくるかもしれません。
なお一般的に、同じ焦点距離でもズームレンズより単焦点レンズのほうが明るいレンズが多いため、撮影の幅を広げることができます。
超望遠画角に限ったことではありませが、画角が狭くなるにつれ一般的に最短撮影距離が長くなっていきます。つまり、超望遠レンズは物に近づいて撮るシチュエーションが苦手ということです。とはいえ、比較的近くにある被写体であれば超望遠レンズを使うことなく撮れるケースも多いでしょう。被写体との距離感、写真の仕上がりイメージを考えて最適なレンズを選びましょう。
撮影していて、あの被写体を大きく写したいけれど焦点距離が足りない。小さくて見えにくくても写しておこう、撮影をあきらめよう、となった経験、皆さんもあるのではないでしょうか? そんな悩みを解決してくれる超望遠画角のレンズは、皆さんの撮影の楽しさをぐんと広げてくれるはずです。ぜひチャレンジしてみてください。