以前「Lesson1」で「広角」「標準」「望遠」、それぞれのレンズの撮影範囲や写りかたの違い、それぞれの焦点距離を活かした使いかたなどについて解説しました。今回はそこでは触れていなかった「中望遠」について、どのような特長を持ったレンズなのかを楽しみかたも含めてご紹介します。
撮影協力:アロハガーデンたてやま、館山ファミリーパーク
まずは復習の意味も込めて、こちらの写真をご覧ください。
こちらは「Lesson1」でもご紹介した、広角、標準、望遠、それぞれのレンズで同じ場所から人物を中心に撮影した写真です。背景の入りかたや写っている人物の大きさなどの違いが見てとれますね。
広角、標準、望遠の詳細な解説を見たい方はこちら「Lesson1:ズームレンズ」
このように広角、標準、望遠で写りかたが変わるのは、“写っている範囲=「画角」”が違うからです。それを表した図がこちらです。
画角は角度で表すことができ、この角度が広いほど広角に、狭いほど望遠になります。また画角はレンズの「焦点距離」と密接な関係にあり、焦点距離の数値が“小さいほど画角が広くなる=広角”に、“数値が大きいほど画角が狭くなる=望遠”になります。
「Lesson1」でも触れましたが、どこからどこまでの焦点距離が広角、標準、望遠なのかという明確な定義はありません。一般的に広角は35mm以下、標準はおおよそ35mm~85mm、望遠は85mmより上となります。
では今回取り上げる中望遠レンズとは、この図でいうとどの辺りに相当するのでしょうか。先ほどの図に中望遠の画角を当ててみましょう。
図を見ると、中望遠とは標準レンズと望遠レンズの間あたりの画角を指していることがわかります。焦点距離でいうと、おおよそ70mm~135mmくらいです。
では今度は広角、標準、中望遠、望遠、それぞれの焦点距離で、人物が同じくらいの大きさに写るように位置を変えながら撮影します。人物の背景に注目してみてください。
比べてみると、人物の大きさはほぼ同じですがそれぞれ背景の写りかたが違っています。広角になればなるほど周囲の風景を広く写し込んでいますが人物と背景の距離感が離れ、望遠になるほど背景の写る範囲が狭くなり背景が近づいたように写っていますね。
中望遠は標準ほど広く背景を写すことはできませんが望遠ほど狭くもなく、距離感も見た目の印象からさほどかけ離れてはいないことから周囲の様子も伝わります。周りの風景の雰囲気を残しつつ、ほどよい背景整理ができる「画角」だということがわかります。
また中望遠レンズは標準に比べ焦点距離が長く、かつ一般的に望遠に比べ「最短撮影距離(被写体にピントを合わせることができる最短の撮影距離)」も短いため、幅広いシチュエーションでボケを活かした写真が撮りやすいレンズだともいえます。
それぞれの背景のボケかたを比べてみてもわかるように、中望遠は写りの歪みが少なく自然な距離感や美しいボケが表現できる、そして背景を整理しやすい画角を持った“いい塩梅”のレンズだといえるかもしれません。
中望遠レンズの特長を知ったところでさらに中望遠レンズ(中望遠域の焦点距離)で撮影された作例をあげながら、中望遠の楽しみかたをご紹介しましょう。
その風景の一部分を切り取るように撮ることができ、背景を整理しやすい画角を持つ中望遠レンズ。風景写真やスナップの撮影においては、そこを意識しアングルを決めることで、伝えたいものをよりはっきり示しやすくなります。逆に、主題がしっかり決まらないと何を撮っているのかわかりにくくなる画角ですので、明確なテーマを持ちながら撮影するとよいでしょう。この画角を活かし、あえて被写体の全てを写さず創造力をかきたてるようなスナップを撮ってみるのも面白いかもしれません。
中望遠はポートレート撮影に向いているといわれることがあります。撮影者と被写体となる人物が程よい距離感を保ったままでも顔のアップが撮影でき、また背景を整理しつつ中望遠ならではのボケ味を活かすことで人物を効果的に引き立たせたり、前ボケや圧縮効果など前景、背景の入れかたに工夫を凝らしたりすることもできます。このように、さまざまなバリエーションでポートレートの画作りを楽しむことができるのがそういわれる理由ではないでしょうか。
次回のレンズレッスン「Lesson24」では、中望遠レンズを使ったポートレート撮影について詳しくご紹介していきますのでぜひあわせてご覧ください。