第71回ニッコールフォトコンテスト

受賞作品

第1部 モノクローム

ニッコール大賞 「頂へ」

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第2部 カラー

ニッコール大賞 「Resonance(共鳴)」

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第3部 ネイチャー

ニッコール大賞・長岡賞 「アタカの冬」

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第4部 TopEye&Kids

ニッコール大賞 「青い世界の僕たち」

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総評 ハナブサ・リュウ

デジタルの機能を駆使しつつ品格ある作品

 長いコロナ禍からやっと抜けて、以前に近い社会環境に戻りつつありますが、まだ完全にとはいえない状況のような気がします。おまけに日本では円安や物価上昇、世界では異常気象、戦争や紛争が起こるなど、暗い話題ばかりが多い時代になりました。しかし、デジタルの世界はどんどん進化していて、飛んでいる鳥の表情や鮮明な星空など、昔は撮れなかったものが普通に撮れるようになってきました。応募作品にもその機能を最大限に生かした、人の目では見えない自然の世界や機能を駆使して表現したものも多くなりました。
 さて、今回のニッコールフォトコンテストですが、それぞれの部の上位に輝いた作品をご紹介いたします。
 長岡賞に輝いた、第3部ネイチャーの「アタカの冬」瓜田英司さんの作品は、厳冬の青森県下北半島にあるアタカ放牧場の寒立馬を撮影している4枚組です。一枚一枚の作品の完成度もさることながら、組み方の巧みさにより、降りしきる雪の中の寒立馬の姿が痛々しくも美しく、その存在感を際立たせています。詩情豊かな表現から、寒立馬を愛おしく想う瓜田さんの気持ちが強く伝わってきて、とても好感が持てました。
 第1部モノクロームのニッコール大賞「頂へ」深野達也さんの作品は、まさに王道を往く山岳写真の極みを彷彿とさせるような威風堂々としていて、力強く見ごたえがありました。雪をまとった美しい大山の姿が見事に表現されていて、この一枚に掛けた情熱と本当に山を愛する心が伝わってきました。
 第2部カラー、ニッコール大賞「Resonance (共鳴)」中井秀樹さんの作品は、外国人のモデルを撮影した4枚組。クラシックな異国情緒ある場所を選び、意識的に文学的な要素を加味して、まるで旅先で出会ったようなシークエンスを気品あふれる自身の表現で昇華しています。映画の一部のような、美しく儚い小さな物語性を感じました。
 第4部TopEye & Kids、ニッコール大賞「青い世界の僕たち」柳生陽音さんの作品は、高校生活をおくる自分たちの精神世界を一枚の作品に凝縮したような、まさに渾身の作品です。楽しいばかりではない、苦い青春の現実を、誰もが感じたことのある想いとして表現しています。はるか昔の自分自身の青春を思い出し、とても共感を覚えました。
 また、U-31賞は、第3部推薦「 78°」高橋海斗さんに決まりました。北緯78度のノルウェー領スヴァールバル諸島で撮影された4枚組は、ホッキョクキツネや固有のスヴァールバルライチョウなど生息する生き物のいる美しい風景とともに、北極圏で出会った感動を見る人に伝えてくれる瑞々しい作品です。
 長岡賞、ニッコール大賞、U-31賞になった作品に共通していえることは、デジタルの機能やテクニックを使いつつ、表面的な絵柄にとらわれない作品の奥深さ、堂々とした品格があり、ゆるぎない普遍性を持った、誰が見ても「素晴らしい写真」といえる作品がそろいました。
 余談になりますが、今回のニッコール大賞の受賞者が全員50歳未満であったことは、世代交代が起こったのでしょうか。かつてのベテラン勢の台頭を考えると若干の寂しさもありますが、これからのアマチュア写真の世界に希望が持てると感じました。
 来年も若年層のさらなる飛躍を、そして、ベテラン勢の頑張りを期待したいと思います。

審査員

ニッコールクラブ アドバイザー 大西 みつぐ、小林 紀晴、佐藤 倫子、ハナブサ・リュウ、三好 和義
ゲスト審査員 榎並 悦子(写真家)
笠原 美智子(石橋財団アーティゾン美術館副館長)

入賞作品動画