第71回ニッコールフォトコンテスト

トップへ戻る

第3部 ネイチャー

ニッコール大賞
推選
特選
入選
応募点数 4,382点
講評 三好 和義

講評 三好 和義

長岡賞もU-31賞も第3部から選出

 今回も格調高い作品が揃いました。上位の順番を決めるのが非常に難しく、審査員の中で何度も激論を交わし決定しました。
 結果、長岡賞に選ばれたのは瓜田英司さんの「アタカの冬」。青森県下北のアタカ放牧場で撮られた寒立馬。出産間近のお腹の大きな馬もいます。吹雪の中で、じっと耐えている姿に感動を覚えます。どっしりとした力強い立ち姿。ドラマチックで、ストーリーを感じさせる静かな世界観が魅力です。アップにした時のキラキラと輝く目の描写、柔らかな毛並みの質感も上手くプリントされています。4点の組み合わせも、寄り、引き、のリズム感があって良いですね。
 推選、U-31賞に選ばれた高橋海斗さんはカラー部門でも特選に入賞しています。間違いなく将来が期待される若い人です。ネイチャー部門で入賞した作品「 78°」はノルウェーのスヴァールバル諸島で撮った、真っ白な画面だけを組み合わせた大胆な作品です。良く見ると、どの画面にも生き物が写っていて、厳しい自然との対比が、雄大なスケールの中でとらえられています。また、雪の微妙な調子を引き出して表現しています。北極の大地はとても美しかった」という繊細かつ大胆な感性。ぜひ大事にしてほしいと思います。高橋さんの作品は、写真展で大きなプリントで拝見してみたいです。
 特選の「散りゆく小鉢」。小さな花と虫たちを組み合わせた見たことのない世界。独特な世界へ誘われる作品です。暗い背景に浮かび上がらせた花々。虫たちの息遣いも聞こえて来ます。この作品を見ると自分が虫になって、一緒に食事をしているような気持ちになってきますね。マイクロレンズとスピードライトの組み合わせが上手くいきました。タイトルも良いですね。
 特選の「ヒグマの四季」。迫力満点でヒグマの生態を伝えています。1点1点がそれぞれ完成度の高い作品ですが、4点を組み合わせることによって、よりヒグマのいる自然の世界観が伝わってきます。黒いヒグマの目の表情が良いですね。優しい目、ひょうきんな目。ポーズも川の中で座っていたり、木に登っていたり、たくさん撮ったカットの中から選び出して、組み合わせたところが上手ですし、フレーミングもよく考えられています。
 特選の「滝のごとく」。不思議な現象です。山から流れて来た雲海が月の光に照れされています。手前の街灯りをフレーム入れたことにより、スケールとリアルさが伝わって来ます。コメントにもありますが、この世のものとは思えない美しさです。夜空の星もシャープに写されています。雲が生き物のようです。
 入選作はそれぞれに力作ぞろいで選ばれた作品は、どれも甲乙つけがたい作品ばかりでしたが、その中で印象の残ったのは「極北の地を旅して」。アイスランドをキャンプしながら3週間かけて巡ったということです。なんとも羨ましい旅ですね。どのカットも絵画のような美しいシーンで、安定感があります。組み合わせもバリエーションがあり、見応え十分です。それに「至宝」。雪解けの山を背景にライチョウが丁度良いところに収まっています。ここに来て! という木村さんの気持ちがライチョウに伝わったようですね。フレーミングも安定感があります。水のエメラルド・ブルー、すっきりした青空、ライチョウの赤い肉冠が美しいコントラストです。