新幹線/特急列車

鉄道大国日本。その代名詞として世界に知られる「新幹線」をはじめ、
名だたる高速車両たちはさらなる速さと快適さを求め、
今も進化を続けている。彩りの島に生まれた名車たちの洗練された姿を、私はファインダー越しに見つめてきた。
より速く、より強く、そしてより美しく、一瞬の輝きと共に敬愛と想いを込めて……。

  • 0109

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    N700系「のぞみ」
    兵庫県 山陽新幹線 相生~岡山

    カメラ:D500 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/125秒、f/11 
    焦点距離:460mm ホワイトバランス:晴天 
    ISO感度:ISO 200 ピクチャーコントロール:ビビッド



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    美しく高貴な白いボディー

    世界に冠たる日本の高速鉄道「新幹線」。現在、東海道・山陽新幹線で活躍するN700系は名車0系からのDNAを脈々と受け継ぐ主力車両だ。真っ白なボディーにすらっと伸びた先頭部のデザインは実にスタイリッシュ。まさに日本を代表する鉄道車両である。 そのN700系の洗練された横顔と新幹線らしいスピード感を余すことなく表現するにはやはり流し撮りがふさわしい。離れた場所から超望遠レンズで狙うのがベストだろう。そこで今回選んだ撮影地は、山陽新幹線の相生~岡山間の山中でやや俯瞰をするポイント。新幹線車両が横から綺麗に見える場所だ。ただし線路までの距離は約200m。先頭部だけ切り取るにはDXフォーマット機をもってしても焦点距離は450mmを越えなくてはならない。よってここでもAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRの登場である。ただ、それだけの超望遠撮影となるとちょっとしたブレも大きく写ってしまう。そこで三脚のスイング部だけをフリーにし、線路と並行に振れるようにしたうえでAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRをセット。さらに流し撮りに有効なVRの[スポーツモード]を併用することで縦ぶれを強力に抑え込む算段だ。後はN700系の動きに合わせてカメラを振るだけ。 しかしここはN700系が時速300km近くで疾走する高速区間であり、超望遠レンズで撮影するのはとても難しい。N700系の鼻先が画面の端で切れないよう必死に追いかけながらシャッターを切る。結果、新緑を背景にN700系が美しく疾走する瞬間をとらえることができた。
  • 0209

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    E6系「こまち」
    秋田県 秋田新幹線(田沢湖線) 生田~角館

    カメラ:D850 画質モード:JPEG NORMAL (8-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/50秒、f/14 
    焦点距離:200mm ホワイトバランス:晴天 
    ISO感度:ISO 64 ピクチャーコントロール:ビビッド



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    深緑を疾走する赤い矢

    新幹線というと高架の専用軌道を高速で走るイメージがあるが、JR東日本の「こまち」「つばさ」は新幹線車両が新幹線と同じ幅のレールを敷いた在来線区間も走る「新在直通」という方式をとっている。この区間は最新の新幹線車両がのどかな田園風景や美しい山河を背景に撮影できるのだ。今回は夏の終わりが近づく深緑の中で赤いラインが鮮やかなE6系「こまち」の流し撮りに挑んだ。 流し撮りでは手ブレをするほどの低速シャッターを用いて被写体の動きに合わせながらシャッターを切る。被写体は止まりつつ背景が流れるという動感表現が可能だ。このとき、標準レンズや広角レンズを使うと、ピントを合わせた一点以外は大きくぶれてしまう。イメージ的な表現ならばそれでも良いが、車両全体をシャープに捉えてE6系の美しいアローラインスタイルを描き出すには線路から離れた場所から望遠レンズで撮影する必要がある。そこで線路から約100m離れた場所に立ち、AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRを構えた。このレンズは全焦点域でほとんど歪みが見られないため13mもあるE6系の長い先頭部も鮮明に写すことができるだろう。 やがて遠く踏切の音が聞こえ始め、木々の隙間からE6系「こまち」が姿を現した。高ぶる気持ちを抑えながらヘッドライトの一点に集中し、速度に合わせてレンズを振りながらシャッターを切る。撮影後にモニターを確認して思わずガッツポーズが出た。そこには躍動感にあふれた赤い矢が、深緑の中に鮮やかに浮かび上がっていた。
  • 0309

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    キハ281系「スーパー北斗」
    北海道 函館本線 礼文~大岸

    カメラ:D810 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/640秒、f/8 
    焦点距離:390mm ホワイトバランス:晴天 
    ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:ビビッド



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    漆黒を背にする北の俊足ランナー

    北の大地を最高時速120kmで駆け抜けるキハ281系「スーパー北斗」。振り子装置を使い、カーブで車体を傾けながら高速で走る姿は「北の俊足ランナー」の二つ名にふさわしい豪快さを感じる。 撮影地は函館本線礼文駅近くのトンネル出口を選んだ。すぐ横の道道608号線から気軽に撮れる有名ポイントだ。通常は望遠レンズを使ってトンネルポータルを入れた説明的な写真を撮ることが多いが、今回は超望遠でトンネルの暗闇から浮かび上がる「スーパー北斗」をイメージ的に狙うことにした。気をつけることはフレーミングの正確さ。非電化区間のためトンネルの高さが意外と低く、いい加減にフレーミングしてしまうとトンネルポータルが画面の隅に入ったり、逆に望遠にしすぎてしまうと「スーパー北斗」の運転台まで切れたりしてしまう。実は針の穴に糸を通すような繊細なフレーミングが要求されるのだ。シャッター時のミラーショックでさえ失敗に繋がりかねない。だからこそ望遠域で絶妙な焦点距離を選ぶことができ、4.5段分※の手ブレ補正効果が得られるAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRはベストレンズである。 撮影までのまったりとした時間を楽しんでいると、やがてトンネルの奥からエンジン音が響いてきた。ヘッドライトが見えると、あっという間に「スーパー北斗」がトンネルから顔をのぞかせる。すかさずその瞬間をシュート。緊張の一瞬だったが仕上がった作品は最高の出来栄え。このドキドキ感と撮れた時の嬉しさがあるから鉄道写真はやめられない。
    ※ NORMALモード使用時。35mmフィルムサイズ相当の撮像素子を搭載したデジタル一眼レフカメラ使用時。最も望遠側で測定。
  • 0409

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    285系「サンライズ出雲」
    岡山県 伯備線 備中川面~方谷

    カメラ:D7500 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/1000秒、f/10 
    焦点距離:340mm ホワイトバランス:色温度(6200K) 
    ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:ビビッド



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    今や日本で唯一となってしまった寝台特急「サンライズエクスプレス」。夜のしじまを抜け、遠くかの地で朝を迎える夜行列車は、旅情にあふれ、鉄道ファンのみならず多くの旅行愛好家からも羨望のまなざしを受ける。撮影地は伯備線の備中川面~方谷。岡山県の中国山地の山間だ。初夏の朝日が柔らかく霞む清々しい空気の中、「サンライズ出雲」がやってきた。逆光に輝く姿がまた神々しい。乗客は車窓を流れゆく、見知らぬ風景を楽しんでいるだろうか。それともまだ夢の中だろうか。様々な思いを巡らせながらファインダーでその姿を追った。山間に響き渡った夜行列車の走行音がトンネルに消えゆくと、やがて、早鳴きのセミたちが歌い始めた。
  • 0509

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    E3系「つばさ」
    栃木県 東北新幹線 那須塩原~新白河

    カメラ:D500 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/50秒、f/14 
    焦点距離:1000mm ホワイトバランス:色温度(4500K) 
    ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:ビビッド 
    ※AF-S TELECONVERTER TC-20E Ⅲを装着


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    有名撮影地で撮影していると、同じ場所でも定番とは違った撮影をしてみたくなるのはよくあること。この場所も東北新幹線の那須塩原~新白河の間にある有名な撮影地で、迫りくる新幹線を望遠レンズで狙う人の姿をよく見る。トンネルを出たところで編成写真を撮るというのがお決まりの構図だ。私は、そのトンネルの奥まで入れた印象的な写真が撮りたかった。そこで、AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRにAF-S TELECONVERTER TC-20E Ⅲを装着。さらにDXフォーマットのD500の1.3倍のクロップ機能を使用し、35㎜換算で約2000mm相当の画角の超々望遠で挑んでみた。日没後の青い時間、E3系「つばさ」が丘を越えるように姿を見せると、ヘッドライトによってトンネルの壁面が黄金色に浮かび上がる。その美しさを目の当たりにして、無心になってシャッターを押し続けた。
  • 0609

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    キハ187系「スーパーまつかぜ」
    島根県 山陰本線 仁万~馬路

    カメラ:D7500 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/60秒、f/8 
    焦点距離:500mm ホワイトバランス:晴天 
    ISO感度:ISO 400 ピクチャーコントロール:ビビッド









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    トンネルに突入した山陰本線の特急「スーパーまつかぜ」のイメージカット。トンネル入口の明るい部分を額縁に仕立てて車両をシルエットで表現した。トンネル出口側の風景も入れることで空間に奥行きを出した。
  • 0709

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    N700系「のぞみ」
    兵庫県 山陽新幹線 相生~岡山

    カメラ:D500 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/1000秒、f/9 
    焦点距離:550mm ホワイトバランス:色温度(4700K) 
    ISO感度:ISO 3200 ピクチャーコントロール:ビビッド 
    ※ AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲを装着


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    夕暮れ時の強い雨が降りしきる中、豪快に水煙を巻き上げながらN700系「のぞみ」同士が高速ですれ違う。迫力のあるフォトジェニックな瞬間だ。当初はAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRにAF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲを装着し、目一杯の超望遠で先頭部アップの印象的な一コマを狙っていた。N700 系「のぞみ」が来る頃合いに反対側の線路を同じN700系「のぞみ」が通過する。すると間髪入れず遠くのフェンスがヘッドライトで照らし出されるのが見えた。「来る!」と思った瞬間、手が自然にズームリングをワイド側に回して上下線が収まる構図に変更。厳密に構図を確認する間もなくN700系が姿を現した。ピントはD500のAF性能を信じてシャッターを切るだけ。わずか数秒の出来事だった。
  • 0809

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    キハ283系「スーパーおおぞら」
    北海道 根室本線 音別~古瀬

    カメラ:D7200 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/15秒、f/5.6 
    焦点距離:500mm ホワイトバランス:晴天 
    ISO感度:ISO 400 ピクチャーコントロール:ビビッド



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    根室本線の音別~古瀬は海岸線を走る鉄道絶景ポイントだ。その海岸線を狙う場所は線路から2km以上も離れた丘の上。超望遠撮影をすることで、うねるような海岸線をダイナミックに写すことができる。北の海は夏でも冷たく、海風に乗って霧が浜辺に漂うことがあるが、この時も海霧が絶景に華を添えてくれた。夕暮れ時にも美しいシーンが撮れたが、日の入り時刻の20分後に特急「スーパーおおぞら」が来るというので欲を出して粘ることにした。青い霧が漂う幻想的な世界に、遠く霞む「スーパーおおぞら」のヘッドライトが見えた。徐々に近づく海岸線をなぞる光芒が一瞬レールに輝きを与える。大自然の中、人間の生み出した光の力強さに感動を覚えた瞬間だった。
  • 0909

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    30000系「こうや」
    和歌山県 南海高野線 橋本~紀伊清水

    カメラ:D810 画質モード:RAW(14-bit) 
    撮影モード:マニュアル、1/3200秒、f/8 
    焦点距離:270mm ホワイトバランス:晴天 
    ISO感度:ISO 400 ピクチャーコントロール:スタンダード



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    夏の暑い一日が終わるころ、南海高野線の紀ノ川橋梁が夕日に彩られた。河原で特急「こうや」を撮り、意気揚々と引き返すと地元の人が「河原はマムシが出るから気いつけや」と一言。もう少し早く教えてほしかった。

1975年生まれ。秋田経済法科大学法学部、東京ビジュアルアーツ写真学科卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。鉄道車両が持つ魅力だけでなく、鉄道を取りまく風土やそこに生きる人々の美しさを伝えることをモットーに日本各地の線路際をカメラ片手に奮闘中。鉄道趣味誌や旅行誌の取材、各種時刻表の表紙写真を手掛ける。日本鉄道写真作家協会(JRPS)理事。(有)マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ所属

AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

疾走する列車の決定的な瞬間を逃さず、
風景も美しく描きだす、
鉄道撮影に必須の超望遠ズームレンズ

AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRは、開放F値5.6一定で望遠200mmから超望遠500mmまでを1本でカバーする超望遠ズームレンズです。3枚のEDレンズにより色収差を効果的に抑えた高い光学性能で、優れた描写力を発揮。手ブレ補正効果4.5段※(CIPA規格準拠)のVR機構を搭載し、手持ちでの撮影にも幅広く対応できます。さらに高速で疾走する列車の流し撮りにも適したVRモード[SPORT]も搭載。また、電磁絞り機構による高精度な絞り制御により、高速連続撮影時にも露出が安定。新幹線など高速列車の決定的な瞬間を美しく描き切ります。

※ NORMALモード使用時。35mmフィルムサイズ相当の撮像素子を搭載した
デジタル一眼レフカメラ使用時。最も望遠側で測定。