入学式や卒業式、結婚式、旅行や親類の集まりなど、大人数で集まる際に撮影する集合写真。簡単に撮影できそうに思えて、意外と難しいものです。今回はそんな集合写真の撮りかたについて作例を交えながらレクチャーします。
撮影協力:日本大学第三高等学校 写真部
集合写真で最も重要なのは、“全員の顔がしっかりきれいに写っている”こと。喜ばれる集合写真を撮影するために気をつけたいポイントをご紹介します。
撮影する人数にもよりますが、写した場所の雰囲気も伝わる集合写真を撮るには広い画角のレンズが有効です。ただし超広角域のレンズを使うと、よりパース(パースペクティブ)の効果が強くなり人がゆがんで写ってしまうこともありますので、一般的には標準域のレンズ(24~70mmくらい)が使いやすいでしょう。
また単焦点レンズよりも、シチュエーションに応じで自由に焦点距離を調整できるズームレンズがおすすめです。周囲をより広く写せるよう、広角側を使って撮影するとよいですね。
集合写真の撮影時に注意すべきポイントはこの2つです。
撮影前に、カメラを構える位置からこれらのポイントを意識しながら並びの指示を出しましょう。並ぶときあまり横に広がりすぎないよう、人数に合わせて列を増やして配置すると集合写真としてまとまりが出やすくなります。
また集合写真はプリントして配ることもあるでしょう。画面ギリギリまで人物を入れて撮影してしまうと、プリント時に周囲が切れて端に立っている人が欠けてしまうことがあります。人物はなるべく真ん中に、周囲に少しゆとりを持たせてフレーミングしましょう。
平坦な場所で何列かに並んでもらう場合は、後列の人の顔が隠れやすくなります。後列の人は前列人の間に立ってもらう、前列の人は座ったり中腰や立膝をしてもらう、後列の人には台を準備し登ってもらうなどの工夫をしましょう。
平坦な場所やあまり広くない場所での撮影、大人数を撮る場合など並びを工夫するだけでは全員の顔を写しきれないことがあります。そんなときは、ハイアングルでの撮影が有効です。少し高い位置からカメラを構えると顔が見えやすくなります。
ステージの上や階段の上に並ぶようなシチュエーションでもアングルに配慮が必要です。下から撮るとどうしても顔が見えにくくなってしまうため、同じ高さか、上からカメラを向けられるような場所を探して撮影を行うとよいでしょう。
並びも決まり、そのまま本番撮影したくなるところですが、ここで確認のためのテスト撮影をしましょう。すべての人にピントを合わせるのが重要なので、撮影時のモードは[A:絞り優先オート]がおすすめです。
テスト撮影でチェックするポイントはこちらを参考にしてください。各チェックで調整した場合は、もう一度テスト撮影をして調整箇所が修正されているか確認しましょう。
構図に問題があればここで修正しておきましょう。ファインダーで確認するのではなく撮れた写真で確認するのをおすすめします。
何列かに並んでいる場合は、1列目から最後列まで全員の顔にピントがあっているか(ボケすぎていないか)画像を拡大して確認し、最適な絞り値を選ぶとよいでしょう。
室内や暗い時間帯での撮影など、光量が足りない状況で絞りを絞った設定になるとシャッタースピードが遅くなってしまう場合があります。テスト撮影で手ブレや被写体ブレが起きてしまうようであればISO感度を上げる、スピードライトを使うなどして対応しましょう。
いよいよ本番撮影です。撮影時は「カメラを見てくださいね、いきますよ」など合図をしながら全員がカメラに注目した瞬間にシャッターを切ります。大人数での撮影ですから、全員のタイミングを合わせるのは簡単ではありませんので何枚か続けて撮っておきましょう。「3枚撮ります」などとあらかじめ声を掛けておくと、相手も撮影に臨みやすくなります。
集合写真でより自然な笑顔、表情を引き出すのはなかなかに難しいものです。まずは全員をしっかり写すことを目標にしながら、さらに表情のバリエーションを増やしたいと思ったら、何かポーズをつけてもらうとよいでしょう。また違った笑顔を引き出せます。シャッターを切るとき一斉に、「いえーい」といった声を出してもらっても表情がやわらぐことがありおすすめです。
つい忘れてしまいがちですが、撮影したあとには必ず画像を拡大し全員がきちんと写っているかチェックをすることが大切です。ピントが合っているか、手ブレや被写体ブレはないか、そして誰かが目をつぶってしまったりしていないかなど1回1回確認しましょう。
三脚は集合写真撮影時の強い味方です。集合写真は構図を考えながら撮影位置を決め、声を掛けて移動指示をだしたり、ファインダーを覗いて確認したりと撮影者が気を配ることが意外に多い撮影です。一度決めた撮影位置をずらすことなく手ブレの心配もなく、落ち着いて撮影できる三脚はあまり集合写真を撮る機会がない方にこそぜひ使ってもらいたいアイテムです。ライブビューで画面を確認しながら撮影したい場合も三脚の利用がおすすめです。
三脚は、カメラがしっかりと固定できる大きさのものを選びましょう。小さく折りたためるためるタイプのものもあり、旅行や登山、ツーリングなど、荷物を制限したい場合など様々なシーンで重宝します。
卒業式や団体旅行など、撮影した場所の雰囲気もしっかり入れた記念写真を撮りたい場合はどのような点に注意すればよいのでしょうか。まずこちらの写真をご覧ください。背景となる建物を入れた記念写真です。
背景を広く写してはいますが、人物がとても小さくなってしまい顔の表情が伝わらない写真になってしまいました。建物の前に人物を並ばせたあと、背景を広く写そうと意識するあまり撮影者が後ろに下がってしまったのです。
大切なのは撮影者と並んだ人物、背景の位置関係です。背景の入れかたを考えながらおおよその撮影位置を決めたあと、撮影者に近づくように人物に並んでもらいましょう。最後に背景と人物の入りかたのバランスを見ながら、撮影位置やズームで微調整して撮影するとベストな配置で撮りやすくなります。
そうして撮影した写真がこちらです。
背景とのバランスを見ながら、全員の表情がしっかりわかるところまで撮影者に近づき並んでもらい撮影しました。顔も背景もしっかり写すことができました。
たとえば入学式で校舎の全景を背景に入れたい、旅先で観光地の風景を広く入れたい、結婚式で大人数いる出席者全員を一緒に撮りたいなど、場合によって標準レンズの画角では写し切れないことがあります。そんなシチュエーションが予想されるときには、広角レンズを用意しておくとより広い画角で写すことができるため安心です。
広角レンズのパース(パースペクティブ)の効果を利用することで背景を広く写し込み、ダイナミックな印象の集合写真にしてみるのもよいでしょう。広角レンズを使う場合、人物はなるべく中心に配置するようにしましょう。
日陰になっている場所、窓からあまり日が入らない室内や逆光でのシチュエーションなど、日中の撮影でも顔が暗く写ってしまうことがあります。そんなときは露出をプラスに補正する、フラッシュを使って「日中シンクロ撮影」撮影を行うなどするとよいでしょう。
また、室内でフラッシュ撮影をする場合には、外付けスピードライトを使った「バウンス撮影」がおすすめです。バウンス撮影とは、フラッシュヘッド部分が回転する外付けスピードライトを使い、天井や壁に向かってフラッシュを発光させる方法です。反射した光がやわらかく被写体を包むため、自然な光りかたで顔に余分な影などを作らず撮影することができます。
外付けスピードライトがあれば、誰でも簡単に行うことができるバウンス撮影。持っていないという方も多いと思いますが、室内のバウンス撮影だけでなく日中シンクロや暗い室内の撮影など光量を調整しながらさまざまな場面で使うことができますので、1台準備しておくのもおすすめです。
大人数で撮影する場合、カメラのシャッター音が撮られている側に聞こえにくいことがあります。その点フラッシュを用いて撮影すると、相手に「今撮られたな」ということが明確に伝わるため、撮るタイミングをお互い計りやすくなるという利点もあります。場面に合わせ、上手にフラッシュを活用してみてください。
今回は5~10人程度の集合写真の撮りかたを基本に解説しましたが、少人数の家族写真を撮る際の並びかたや明るく撮る方法、スピードライトの使いかたなどは、こちらを参考にしてみてください。