Nikon Imaging
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vol.19 写真家の想いを形にする表現力。最新NIKKORレンズ対談

3. 「変わらないニコンらしさ」への期待。

表現欲求を掻き立てるニコンのレンズ。

佐藤さんは様々なカメラを使われた上で、再度本格的にニコンで作品に取り組もうと考えられたとのことですが、D800と現行のレンズを使われて、あらためて感じられたことはありますか?

佐藤「『レンズを使っていて楽しい』。そんな気持ちになったのは久しぶりでした。
実はフィルムカメラからデジタルカメラに移行した時点で、カメラが好きになれなくなった自分がいました。フィルムカメラの時は味わいや質感など自分の好きなように表現できたのに、デジタルカメラに変えてから自分の表現をカメラに合わせなければならなかったのです。例えばフィルムカメラと同じ感覚でライティングをすると、デジタルカメラでは描写が違ってしまうなど…。それはデジタルカメラの進化の過程だから仕方ないと思いながらも、カメラに対する愛着がだんだん薄れていき、いつの間にか道具としか感じなくなっていました。
それがD800を初めて触った時、ついニヤニヤしてしまっていることに気づき…(笑)。105mm f/2.8のレンズをつけてファインダーを覗き、その質感やクオリティを感じながら、自分の表現を探るのが凄く楽しかった。
レンズを使う上での、安心感やストレスレスといったことはニコンのレンズでは当たり前で、それ以上のものを与えてくれたというのかな。
撮影に新鮮な感動や喜びを感じていた頃から様々な経験を重ねてきて、今の自分はカメラを始めた当初とはまた違った形で写真と向き合っていると思いますが、ニコンのカメラとレンズがその時の感覚を思い出させてくれた。そんな気がします。」

Nikon D800
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
f4.5 1/5秒 ISO320
Nikon D800
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
f6.3 1/125秒 ISO200
Nikon D800
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
f11 1/160秒 ISO100

鈴木さんはずっとニコンのレンズを使われてきて、以前と現在の違いについて、何か感じられた点は?

鈴木「85mm にしても標準ズームにしても、実は比較的最近までフィルムカメラ用のレンズを使っていました。NPSの人からは『今のレンズはデジタルカメラに合わせて開発されたもの』と聞かされてはいましたが、そうは言ってもさほど違いはないだろうと半信半疑で最新のレンズを使ってみたのです。そうしたら全然違っていて驚きました(笑)。
中でもお気に入りは先程お話した24-70mm f/2.8で、以前の28-70mmと比べてみた時の感動と言ったら!どこまで綺麗なのかと、思わず撮影した画像をどんどん拡大して確認してしまいました(笑)。デジタルカメラにはデジタルカメラに合ったレンズというものがあるのだと、あらためて実感しましたね。
新しいカメラが出るとすぐに買い換える人もいらっしゃいますが、私の意見としては、カメラよりもレンズにお金をかけた方が良いのではないかと思います。同じボディなのに、撮れるものが全く違いましたから。」

Nikon D700
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
f11 1/640秒
Nikon D700
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
f4 1/80秒
Nikon D700
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
f8 1/640秒

最新のカメラでなくても、レンズで写真は変わるということですね。
佐藤さんはニコンの変わった点や変わらない点について、いかがですか?

佐藤「これは私個人の印象かもしれませんが、ニコンの描き出す『赤』ってずっと変わらないような気がします。ニコンの赤は日本人だからわかる赤というか、私達の気持ちに響く赤なんです。
そんなニコンの繊細なこだわりを感じられる自分も嬉しいし、それを意識的に作り出しているニコンもニクい(笑)。」

ニコンはニコンのまま、さらなる進化を。

Nikon D700
AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
f13 1/160秒

これから試してみたいレンズなどはありますか?

鈴木「仕事に使うレンズはひと通り揃えたので、しばらくは他のレンズを使うことはないかなと思っていましたけれど、先程の佐藤さんの話を聞いていて『やはり単焦点レンズっていいな』と感じました。最新のレンズで単焦点は、85mm f/1.4しか持っていないので。私も学生の時は50mmで普通に撮っていたのに、ズームレンズに慣れてしまった今から考えると、よく50mmで撮れていたなと…。きっとあらためて時間をかけて50mmと向き合ったら、新鮮な気持ちで写真が撮れるような気がします。
無駄な物が削ぎ落とされるというか、撮りたいものが自分の中で洗練されていくというか…。撮る前に選ぶ。撮ることの原点ですね。
普段ポートレートで85mmを使う時も、そのようなことを意識しています。ズームレンズですと、基本的に撮影位置から動かないで済みますよね。寄ったり引いたりが気軽にできるので、同じ場所で画角を決めがち。でもポートレートは本来それではダメで、構図をきちんと決め、それに合わせて自分が前後に動いて撮らなければなりません。
ズームレンズを使うと、自分に甘えてしまうんですね。自ら動くことで厳格な画作りができるので、あえて85mmを使っています。
もちろん単焦点ならではの描写力というのもあります。欲しいところにピタッとピントが合う感じやボケ味、明るさや画面の繊細さも違います。」

佐藤「私は新たに別のレンズを試したいというより、しばらくは単焦点レンズでの撮影にこだわりを持って取り組んでいきたいと思っています。
仕事で様々な条件で写真を撮るわけですが、仕事の内容により、普段自分の作品制作では行わないような撮り方をしなければならないこともありますよね。でもニコンのカメラやレンズは、私やおそらくクライアントがイメージしたように描写してくれる。逆に失敗写真を撮れと言われる方が難しい気がします(笑)。
以前、仕事でCOOLPIXを使う機会があったのですが、私はこれまでCOOLPIXのようなコンパクトデジタルカメラをほとんど使ったことがなく、ちょっと不安でした。でも実際に撮ってみて、その機能の面白さには感動しましたね。
高いレンズを使うから良いのではなく、ニコンだから性能が良いのだなと感じました。」

今後ニコンに望むことはありますか?

鈴木「現在、十分に良いカメラやレンズを出されていると思うので、その点で私としては新たに望むことは無いですね。
D200なども使っていたのですが、フィルムカメラの頃の画角のイメージが強かったため、実はあまりDXフォーマットには馴染めず…。ここに来てFXフォーマットのカメラも増えましたし、それに適したレンズも揃い、ようやくフィルムカメラの頃と同じような環境になってきたと嬉しく思っています。
変えてほしくない点としては、色味でしょうか。私は半ば趣味で、海外メーカーのアンティークカメラも使っているのですが、肌の色合いなどはやはりニコンが好きなんです。日本人に合っているというか。オートで撮っても、イメージに近い色が出る気がします。
それからカメラのボタンの位置ですね。今のような配置であれば、目をつぶっていても撮れるほど使い方が染み付いているので。ずっとニコンを使っている身として、ぜひこれからも踏襲して欲しいポイントです。
そうそう、一つお願いが。以前販売されていた迷彩柄のストラップを復活して欲しいです(笑)。このストラップ、気に入っていたのに今は手に入らないんですよ。先日ニコンとPORTERがコラボレートしたバッグを購入しましたが、今後も男性でも女性でも使える、実用性とファッション性を兼ね備えたグッズの開発にも力を入れて下さい。」

鈴木氏お気に入りのニコンの迷彩柄ストラップ。(既に販売終了)
ニコンダイレクト限定のオリジナルシリーズのカメラバッグ。

佐藤「私の希望も、現状の方向性で突き進んで欲しいということですね。このクオリティをさらに進化させるとどうなるのか、またそこから自分達の作品がどう変わるのか。カメラやレンズの性能と私達写真家は、並走していますので。
そういった意味で、私も表現者としてカメラの進化に負けないようにしていたいと思います。期待しています。」

インタビューを終えて・・・

きちんとお話しするのは初めてという佐藤さんと鈴木さんでしたが、最初から打ち解けられ、笑いの絶えない場に。しかし、自らの作品や考え方について語る時の口調とまなざしは、真剣そのもの。それぞれ写真家として、強い信念のもと日々活動されていることが窺えました。
また興味深かったのは、経験と実績を重ねてきたお2人が最新のレンズ性能に感激をされ、今あらためて原点に戻り写真を楽しみたいと語られていたこと。お2人の写真への情熱を感じると共に、NIKKORレンズには先端技術だけでなく表現者の欲求を刺激する魅力が詰まっていることを実感したインタビューでした。

プロフィール

佐藤 倫子 氏

佐藤 倫子 さとう みちこ

東京都出身。東京工芸大学短期大学部 写真技術科卒業後、株式会社資生堂 宣伝部入社。アシスタントを経て、商品撮影、広告ビジュアルの撮影などを手掛ける。資生堂を退社後フリーランスとして活動を開始。写真家として都内中心に個展・グループ展を開催し、講座、セミナー、TVその他でも活動。化粧品などの広告写真を撮り続けてきたことが基本となり、「美」をテーマとした作品を創造し続けている。独自の色彩感覚、画面構成力、光と影の演出を大きな特長とする。日本広告写真家協会(APA)正会員。中華民国楊太極武芸協会 太極拳教練(インストラクター)の資格も取得している。

■作品展

1994-1999 銀座ギャラリーくぼた『zip展』
1997 コダックフォトサロングループ展
2000 第28回APA入選
2001 目黒雅叙園内写真展示
2004-2006 青山桃林堂『土なぶり展』写真展示
2005 渋谷MEWE『RINGO』個展
2006 オリンパスギャラリー『E-500による女性写真家展』
青山カミネット『RINGO II』個展
2007 オリンパスギャラリー『E-410による女性写真家展』
2009 Deco's Dog Cafe 田園茶房 『CROPPINGS』個展
2010 ギャラリー築地堂アーティストによる E-P1写真展
2011 PENTAX 645Dの世界 + 写真展
PENTAXデジタル一眼レフ最新撮りおろし作品展
APA2011年度新入会員展 『写真家のプロフィール』
社団法人日本広告写真家協会企画展 『主(あるじ)の風貌』
monochrome V 『Self portrait』展
2012 第40回 APAアワード2012 写真作品の部 入選
ニコンD800 撮り下ろし五人展
monochrome VI 『TOKYO』展
monochrome VII -Snapshot " flaming 2:3 " 展
2013 DGSM Print 『7人の写真家 』展 Vol.II
『HOPSCOTCHINGS』個展 オリンパスギャラリー東京/大阪
monochrome VIII 『Rain…(雨) 』展
鈴木 麻弓 氏

鈴木 麻弓 すずき まゆみ

1977年宮城県女川町生まれ。逗子市在住。
大学卒業と同時にフリーランスのフォトグラファーとして活動を始める。主にポートレートを得意とする。

東日本大震災発生後、両親は行方不明。「写真館は継がなくとも、写真に携わっていて欲しい」という父の願いを胸に、今後も逗子の自宅と女川を往復し、佐々木写真館三代目として故郷の人々と繋がっていきながら、女川の人々の復興の様子をおさめるべくシャッターを切り続けている。

■出版

2012年3月 『女川 佐々木写真館 ~2011年3月11日その日から~』(一葉社)

■写真展

2011年5月 『The Day and After~memory of ONAGAWA』
アメリカニューヨークAIGAギャラリーにて(Hug Japan主催)
2011年8月 『LIFE~父の眼差し、娘の視線』富士フイルムフォトサロン東京、仙台、大阪にて
2012年3月 「復興願う二人の写真家 菊地信平・鈴木麻弓二人展」四谷ポートレートギャラリーにて

■メディア出演

2011年5月 日本国際放送ドキュメンタリー番組forwardにて「snapshot」放送
2013年2月 NHK Eテレ「グランジュテ」

■講演会

2012年6月 PHOTONEXTセンターステージ

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