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vol.19 写真家の想いを形にする表現力。最新NIKKORレンズ対談

2. それぞれのこだわりを形にするレンズ群。

自らのテーマについて。

Nikon D700
AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
f5.6 1/100秒
Nikon D700
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
f11 1/400秒
Nikon D700
AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
f8 1/125秒
Nikon D700
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
f11 1/400秒

鈴木さんはポートレート写真を撮っていらっしゃいますが、写真館をされていたお父さんからの影響ということもあるのでしょうか?

鈴木「まず第一に、最近ポートレート撮影を望まれる人が増えてきたということがあります。そして実家の写真館と父の仕事を、今私が継がなければという想いもありました。実はその写真館は東日本大震災の津波に襲われて、二代目であった父も母も行方不明なのです。私は現在、神奈川を拠点としているのですが、肩書きを『佐々木写真館三代目』とし、これからポートレートを極めていきたいと考えています。
私が写真を撮る上で根底にあるものは、『人に喜んで貰いたい』という気持ちです。そういった意味でポートレートの仕事は、撮った写真を御覧いただいた時、その人の嬉しそうな表情を見られるのがいいですね。」

佐藤「確かにプロフィール写真を撮りたいという人、増えていますよね。例えばSNSで使用されているプロフィール写真も、徐々にクオリティが上がっていますから。以前は携帯電話のカメラを使った自分撮り写真ばかりだったのに、最近では本格的に撮られたような写真を多く目にするようになりました。見せる場が多様化するにつれ、自分写真への意識も変わってきているのかもしれません。」

それから鈴木さんは、被災地となった故郷・女川も撮り続けていらっしゃるとか。

鈴木「女川へは月に1回、多い時には週1回程行っているでしょうか。写真を撮ってはネットで公開しています。
荒れたままの土地を写したり、一度ボランティアに来てくれた人向けに新たな見所を紹介したり。それからやむなく故郷を離れてしまったような人に今の女川をお伝えするため、街のあちこちの様子も掲載しています。
本当は女川に住んでいらっしゃる人がリアルタイムの情報を流して下さるのが一番良いと思うのですが、皆さん日常業務があまりにも多すぎて、それを記事にしてアップする余裕がないんですね。
被災地に行きたいと思いながら躊躇している人達にも、ぜひ私のブログを御覧頂きたいです。」

Nikon D800
AF-S VR Zoom-Nikkor 24-120mm f/3.5-5.6G IF-ED
f11 1/160秒 ISO160

佐藤さんも仕事がお忙しい中、ご自分の作品制作も精力的に行われていますね。作風もオリジナリティがあって素敵です。

佐藤「ありがとうございます。現在のような作風になったのは7~8年程前でしょうか。作庭家である重森三玲さんの作品に出会ったことをきっかけに庭園に魅せられ、しばらく京都のお寺を巡っては撮影をしていた時期がありました。
その時、庭の全景を撮るのではなく、風景の中から平面構成のように自分の琴線に触れた一部分を切り取っていたんですね。当時はそれを作品にしようとは考えていませんでしたが、自然と私の作風になっていきました。」

Nikon D800
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G
f8 1/125秒 ISO200

このような作品を制作するにあたり、コンセプトとしていることはありますか?

佐藤「もともと広告からスタートしているからかもしれませんが、自分の作品は『絶対的に非現実』な世界観でありたいのです。現実のものやそこに存在するものを撮ってはいるのですが、例えば自分の思う『キレイ』『可愛い』『面白い』といった、感性が反応する被写体を撮ることで、『全てがポジティブな世界』を表現したいのです。
レタッチを多用するだけの完成作品ではなく、あくまでも実際に目にした光や影を撮ることにこだわっています。
日々の生活の中でも、テレビのニュースでも、憂鬱になるような話って多いですね。でも、ネガティブな思いの時も綺麗な花を見るとパッと気持ちが華やぐように、私の作品を観た人が一瞬でも気分が晴れやかになってくれたら嬉しいんですよね。」

鈴木「よくこのようなシーンを見つけられますね。いつもカメラを持ってモチーフを探しているのですか?」

佐藤「普段カメラは持ち歩きません。撮りに行こうと決めて出かける時は、そういうものに出会えるように願掛けをして出かけるんですよ(笑)。着ていくものなど身の回りを好きなもので固め、今日は絶対撮れると念じて出かけると、必ず撮れます。」

鈴木「それは偶然出会えるものなんですか?」

佐藤「意識的に探しに行きます。事前に大まかなリサーチを行ったりもします。ただ、気分が沈んでいると景色を感じ取ることができなくなる気がするので、とにかくテンションを上げて頬を緩ませながら街中を歩いています。きっと端から見たら怪しいでしょうね(笑)。」

鈴木「楽しそう。テンションが上がると全てが素敵に見えてきますよね。」

佐藤「とても楽しいですよ。ずっとスタジオで理想のライティングにするべく格闘していたので…。
そんな中、ある時偶然に外で自然光の綺麗なグラデーションを見たんです。とても美しい。『あぁ…、やっぱり、自然の光にはかなわないんだなぁ』としみじみ感じました。それからですかね。外での光の見え方が変わったというか、『私の好きなライティングがされてる場所が色々な場面にあるじゃない』、そう感じる様になったんです。」

Nikon D800
AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
f8 1/500秒 ISO200
Nikon D7100
AF-S DX NIKKOR 16-85mm f/3.5-5.6G ED VR
f11 1/200秒 ISO200
Nikon D800
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
f11 1/125秒 ISO200

試行錯誤し行き着いた、NIKKOR単焦点レンズの魅力。(佐藤氏)

Nikon D700
Nikon D7100
Nikon D800

現在使われているカメラは何ですか?

佐藤「D800を使っています。それから最近気になったのは、D7100。しばらく使ってみたのですが、あのコンパクトさは良いですね。画質も十分満足のいくものでした。
小型・軽量という点では、今はいわゆるミラーレスといったカメラが多く出ていますけれど、既に一眼レフに慣れてしまっているので、こちらの方がホールド感がしっくりきます。」

鈴木「私は今、D700を使っています。
最初のデジタルカメラでの仕事は、D70を使ったウエディング写真撮影でした。その後D200を買って、さらにD700。ほぼ3~4年に1回くらいのペースで買い換えています。そろそろ私もD800が欲しいですね。」

佐藤さんは、今お使いのレンズもD800と一緒に購入されたのですか?

佐藤「そうです。しかし、レンズ選びには少し決断を要しました。
D800を買う前は、ニコンの一眼レフはD2Xでした。その後はデジタルカメラ業界全体の技術革新が加速してメインにするカメラを定めにくい状況があり、メーカー各社から仕事の声がかかるたびにそのメーカーの機種を使っていました。でもようやくデジタルカメラの開発ペースも落ち着き始め、そろそろ本当に自分が使う機種について真剣に考えた時に、あらためてニコンに戻ろうと思ったのです。
そこでD800を購入するわけですが、レンズについて悩んだ挙げ句、単焦点のレンズを揃えることにしました。
例えば女性を撮る際、スタジオ内で完璧なライティングをして美しい肌質を作った上での撮影でしたら、正直他のカメラやレンズといった選択肢があるかもしれません。しかし十分なライティングが行えない状況でも、肌質の美しさを引き出してくれるのは、やはりニコン。繊細で、クオリティの高い結果を得ることができます。そして、そのレンズのポテンシャルを最大限に活かすには、単焦点レンズだろうと。
普段は主にズームレンズを使っていたのでそれはチャレンジでもありましたが、なにより丁寧に撮りたいという思いが勝りました。たとえ単焦点レンズであっても、描いたイメージを表現する余裕がきっと私の中にはあるはずだから、それを信じて勝負しようと考えたのです。」

AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G

しかし女性もさることながら、例えば街中でこのように風景を切り取るには、単焦点レンズだとさらに難しいのでは?

佐藤「そうですね。単焦点レンズで街中を撮るにあたっては、まず50mmで撮影してみました。しかしズームレンズに慣れてしまっていたため、この時あらためて単焦点レンズで自分の作風に合わせた切り取り方をする難しさを再認識させられましたね。でも逆に、だからこその面白さもありました。」

佐藤倫子氏使用の主なレンズ

あらためて感じた最新NIKKORレンズの凄さ。(鈴木氏)

鈴木さんは普段どのようなレンズをお使いなのでしょう?

鈴木「仕事に応じてセットを使い分けています。スナップを撮る時は24-70mm f/2.8、もしくは70-200mm f/2.8をカバンに入れて出かけることが多いですね。ポートレートの場合は85mm f/1.4と24-70mm f/2.8といった組み合わせでしょうか。
やはり日常のスナップを撮るには、24-70mm f/2.8が最適ですね。これ1本あれば、何でも撮れます。
ちなみに私はよく、レンズをあちこちにぶつけたり落としたりしています(笑)。でもこれまでニコンに調整をお願いしたのは、フィルムの時代にレンズを床に強く置いて調子をおかしくした時の一度だけ。それ以外は不具合無く快適に使えています。」

鈴木麻弓氏使用の主なレンズ

佐藤さんも「私のNIKKOR」では、24-70mm f/2.8をお使いでしたよね。

佐藤「今私の中の流行りは単焦点レンズなのですが、24-70mm f/2.8は良いレンズなんですよ。周囲でも評判が良いし、写真を勉強している学生さんでこのレンズが欲しいと言う人は多いですね。
それにレンズ性能もさることながら、このレンズには本格的な雰囲気というか、『撮っている感』があるんです。街中で撮影をしていても、妙に人目を引きます。このこともアマチュアの人達を惹きつける理由なのではないかと。」

鈴木「撮影のモチベーションを上げるためにも、カメラやレンズが醸し出す『撮っている感』って大切ですよね。」

AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
Nikon D700
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
f9 1/640秒

広角レンズを使われることはありますか?

鈴木「普段広角レンズはあまり使いません。でもこの観光船の復活開通式の写真は16-35mm f/4で撮っています。広角のズームレンズなので若干周辺光量は落ちるのですが、それが逆に欲しかったのです。青空を撮影したい時など、このレンズを持って行く時があります。空の青が強調されますから。」

Nikon D700
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
f10 1/640秒

こちらの写真はどのレンズで撮られましたか?

鈴木「70-200mm f/2.8で撮りました。凄くクリアですよね。
レンズ交換する時に邪魔なので普段フードは付けていないのですが、ゴーストなども入っていません。最近はこれが当たり前になって、この良さをほとんど意識せずに撮っていました。以前のレンズは、似たようなシーンでフレアやゴーストなどを起こしていた気がします。」

佐藤「光が強いような状態でも優れた描写ができるのは、ナノクリスタルコートならではですよね。遠景の海面のキラキラした感じなども、新しいレンズの特性が良く活かされていると思います。」

鈴木「私は本当にずっとニコンで、使っていたカメラやレンズに物足りなくなるとそのまま新しいニコン製品に買い換えていたため、正直あまり細かな技術やスペックを気にかけずにいて…。きっとこちらの方が高価だから良いレンズなんだろう、といった感じです(笑)。もちろん旧型と新型では写りが全く違うことは実感していましたが、変化の理由まではそれほど気にしていませんでした。今のレンズには、新しい技術がきちんと活かされているんですね。
それにしてもここまで写りが変わると、画が良くなった理由の何割かは自分の腕が上がったからだと気分が良くなる人もいるでしょうね(笑)。」

佐藤「確かにそのくらい描写力は向上しているかもしれませんね(笑)。
ただニコンは、フィルムカメラ用のレンズをデジタルカメラにも使うことができますよね。中には、フィルムカメラ用のレンズの味わいや使いこなしにこだわっている人もいて、それはそれで一つの楽しみとして素敵だと思います。」

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