撮影・解説:山野 泰照
タイムラプスムービーの特徴
タイムラプスムービーは、一定の間隔で撮影した多くの静止画をつなげて作る動画のことで、時間を圧縮して見せることができるだけでなく、星空のような暗い被写体でも1枚1枚を長時間露出にすればきれいに写せるという特徴があります。さらに、最終的な作品としては、カメラの画素数が多ければ FHD(フルハイビジョン)、4K UHDだけでなく8K UHDなどのタイムラプスムービーをつくることも可能です。
タイムラプスムービーを作るには、インターバルタイマー撮影で素材を得るパートと、それらをつなげて動画にするパートがあります。インターバルタイマー撮影をし、カメラ内で動画ファイルまで作ってしまうのがタイムラプス動画機能、静止画の素材ファイルを得るところまでを行うのがインターバルタイマー撮影機能です。タイムラプス動画では動画ファイルしか記録しませんので、手軽に試してみたい方向け、インターバルタイマー撮影は、特に RAW画像で記録しておけば撮影後の画質調整でも画質劣化の心配が少なく、動画にする編集過程でさまざまな効果をつけることができるので、上級者向けと言えるでしょう。いずれも撮影もインターバルタイマー撮影ですので、いかにうまくインターバルタイマー撮影の設定をするかがポイントになります。
タイムラプスムービーが期待される被写体と撮影時間
タイムラプスムービーが注目されているのには、さまざまな背景があります。既述のように「時間を圧縮した表現をしたい」、「暗い天体の動きを動画として見せたい」というような表現意図を実現する手段としての注目が一番大きいと思います。さらにそれだけではなく、静止画で言えば1枚1枚の、動画で言えば1フレーム毎の画像が綺麗ということから、高精細、高画質の動画コンテンツを制作したいという場合にもタイムラプスムービーという手段が注目されています。具体的には、4Kあるいは8Kの最高画質の動画コンテンツを作りたいというようなニーズになります。
また、当然と言えば当然のことなのですが、最高の画質が得られるような機材とか撮影条件でインターバルタイマー撮影をしていけばそれぞれの画像は最高の静止画としても利用出来るため、あとからタイムラプスムービーで動画作品にも仕上げたいし、決定的瞬間の静止画としても使いたいというような、複数のニーズにも応えられることになります。特に皆既日食のような現象で、皆既に入る前から後までをインターバルタイマー撮影することが注目されているのにはそのような背景があります。
以上のようなことから、タイムラプスムービーやインターバルタイマー撮影に対する期待を体系だって説明することは難しいのですが、タイムラプスムービーの表現力に魅せられて筆者がこれまでに制作してきたタイムラプスムービーの画面を静止画で紹介しておきましょう。
タイムラプスムービーを始める上で最大の関心事は、「どの位の時間、撮影すればよいか」でしょう。
まず、撮影したい被写体の変化のスピードから再生時になめらかに動くような撮影間隔を決めます。また撮影枚数は、再生するときに「どのくらいのフレームレートで、何秒間見せたいか」という、そのムービーを見せるときの「鑑賞条件」から見積もることができます。たとえばフレームレート30fps(1秒間に30フレームで再生)で30秒間のムービーを作りたい時には、30(フレーム/秒)x
30(秒)= 900(フレーム)必要になるという計算です。もちろん制作の過程でもっとゆっくり見せたいというような要望が出てきたり、不要な部分が出てくる可能性がありますから、十分余裕を持った枚数の撮影をするのが普通です。それらの結果、撮影間隔×撮影時間が撮影に要する総時間ということになります。
例を挙げれば、雲の流れをゆったりと見せたい場合には、撮影間隔は1秒、作品としてフレームレート30fpsで60秒のものを完成させるとして、最低必要な撮影枚数は30×60 = 1800、現実的には2000枚とかもっと多くの枚数を撮影する計画をすることになります。仮に2000枚とすれば、撮影間隔が1秒ですので全体では2000秒、すなわち33分20秒が撮影の開始から終了までの総時間という計算です。
D850の特徴
D850は、これまでD810で評価されてきたインターバルタイマー機能を引き継ぐだけでなく、さらに表現力を拡大するための機能、生産性を高めるための機能が搭載されています。
最短撮影間隔0.5秒
インターバルタイマー撮影において、撮影間隔をどこまで短くできるか、が注目されることがあります。タイムラプスムービーにした時に撮影間隔が1秒でも被写体の画面上での動きがカクカクすることがあるというような場合です。動きをなめらかにするだけなら、露出時間をできるだけ撮影間隔に近づければよいのですが、1枚1枚の画像は被写体の動きにより全体としてシャープ感の乏しいものになります。そのような時に、比較的短い露出時間でもカクカクする動作を目立たなくする方法が撮影間隔を短くするということで、D850では撮影間隔で0.5秒が選択できます。(インターバルタイマー撮影のみ、タイムラプス動画は不可)
撮影可能枚数
タイムラプスムービーのためのインターバルタイマー撮影では、数100枚から1000枚を超える枚数の撮影がほとんどです。そういう撮影で重要なのが、1個の電池で撮影できる枚数です。D850はD810の性能を越えて、約1840枚もの撮影が1個の電池(EN-EL15a)で可能なだけでなく、また別売のマルチパワーバッテリーパックMB-D18にEN-EL18bを装填して取り付けておけば最大約5140枚もの撮影が可能ですので、安心して多くの枚数の撮影ができます。ただし撮影可能枚数は、露出時間や撮影間隔によっても変わってきますので、特にEN-EL15a1個で10秒以上の長時間露出を繰り返すような場合には、あらかじめ撮影可能枚数をテストしておくと安心です。
サイレント撮影
インターバルタイマー撮影で、ミラーやメカシャッターを動作させると、音や振動などを気にする以外に、耐久性が心配されることがありました。D850に搭載されたサイレント撮影は、最初と最後にミラーが動作するだけで、撮影途中にはミラーやメカシャッターの動作は一切ありません。したがって、音、振動、耐久性のすべての心配が払拭されますので、インターバルタイマー撮影には最適な撮影方法です。 カメラ内[RAW現像]の一括処理
タイムラプスムービーを制作する場合、撮影開始時に、これから被写体がどのように変化するかが予測できないこともあり、できるだけ撮影後でも明るさやホワイトバランスを調整できるようRAW画像で記録したくなります。一方、撮影枚数は数100枚から1000枚を超え、記録画素数は4500万画素以上ということで、撮影後の画像処理の負荷が大変大きくなってしまいます。
そこで、RAW画像から現像する負荷を低減させるために搭載されている機能が、カメラ内[RAW現像]一括処理です。パーソナルコンピュータ(以下PC)でCapture
NX-Dを用いて現像すると、PCの性能にもよりますが1000枚で約3時間(※1)かかるRAW現像(※2)が、カメラ内の[RAW現像]機能を用いて一括処理すると約25分(※3)で完了します。出力ファイルがJPEGのみという制約はありますが、作業時間が大幅に短縮できることで、いくつかの現像条件で現像してみて最適化を図るのにも有効です。
低輝度測光限界の拡張
D850では、インターバルタイマー撮影でたとえば絞り優先オートにして、サイレント撮影と露出平滑化を組み合わせれば、自動的に低輝度測光限界が大幅に拡張されます。肉眼で天の川が見えるような、空が暗いところで撮影をすれば、満天の星空が撮影できるほど低輝度被写体の撮影が可能なのです。
もちろん、そういう暗い被写体を撮影するには、明るいレンズ、適切な露出モード設定、ISO感度の自動制御などをうまく組み合わせる必要がありますが、これまで自動露出では撮れなかった暗い被写体まで適正露出で撮れるようになることで表現の幅が大きく拡大するのは、創造力が豊かな人ほど嬉しい機能でしょう。
絞り優先モードは言うまでもなく自動露出(AE)ですから、単に暗い空が撮影できるというだけでなく、「夕方から満天の星空まで」というような明るさの変化が大きい被写体に対しても対応できるということです。
※1 Mac Book Pro(OSX Ver.10.10.5、intel Core7 2.5 GHz、16
GB 1600MHz DDR3)でCapture NX-Dを使い、JPEG(最低圧縮、最高画質)に変換した場合。
※2 RAWファイル(14ビットロスレス圧縮)をJPEG
FINE★・サイズLに変換。
※3 SONY SF-G(128 GB)SDカードから読み込み、Lexar Professional 2933×(128
GB)XQDカードに書き込む場合。
【撮影のコツ|ピックアップ】タイムラプスムービー2 目的に応じた設定と動画化
【撮影のコツ|ピックアップ】タイムラプスムービー3
新しい表現の可能性