7月半ばも過ぎると、いよいよ花火シーズン到来です。味わいのある「線香花火」などのおもちゃ花火から、迫力満点の「打揚花火」まで。日本各地でさまざまな花火が夜を彩り、その美しさに心奪われます。老若男女問わず人々の心を癒やしてくれる、夏の風物詩です。
現在のような観賞用の花火が登場したのは、江戸時代はじめごろ。1600年前後に伊達政宗や徳川家康がお城で花火を鑑賞したと記録が残っており、それらを機に将軍家をはじめ諸大名の間で流行となり、じきに江戸庶民にも広がったとされています。
花火大会のルーツは、1700年中盤に行われた「両国川開き花火」。全国的な飢饉と疫病増加で多数の犠牲者が出ていた当時、慰霊と悪疫退散を願い、時の将軍である徳川吉宗が川開きの日に水神祭を始めました。そこに水茶屋などが協賛し祭礼の一貫として、花火を盛大にあげたものが「両国川開き花火」と呼ばれ、その後年中行事に。この頃活躍したのは花火師の玉屋市郎兵衛、鍵屋弥兵衛ですが、花火が打ち揚がった際によく聞かれる「たーまやー」「かーぎやー」という掛け声は彼らの屋号にちなんだものなのです。
花火は、光(色)、音、煙、それに形状の四つの要素で構成されています。
打揚花火で打ち揚げられる花火玉にはそれぞれ「玉名(ぎょくめい)」が付いており、この玉名は花火が打ち揚がり消えるまでの現象を表現しているのです。
打ち揚げられて火の花が丸くぱっと開き、星が中心から炭火色の尾を引いて広がっていく形を「菊」。菊とは対照的に尾を引かず、最初から色の炎を出して開くものを「牡丹」。そして菊などの花の中心にひとつ芯があるものを芯入といい、二重の芯は八重芯、三重より多い芯は三重芯、四重芯、五重芯と増していきます。
たとえば「昇小花三重芯変化菊」という花火。この玉名は「昇りながら小さい花を咲かせ、三重の芯を持った炭火色の尾を引く星が丸い花を描き、星の色が変化する華麗な玉。」であることを説明しているのです。
長年における技術開発の努力もあり、日本の花火は世界で最も精巧で華麗なものとして世界中から絶賛されています。
真ん丸く整然と開花し、花弁のひとつひとつの星の色も変化し、同心円に二重三重の芯を重ねて開花することができる。これら三点が日本花火の最大の特徴。限りない日本の花火師達の強い芸術探究心によるもので、他国ではなかなか見られないものなのです。
そよ風が吹いた快晴の日の夜が花火撮影にとってはベストな条件。少し風が吹いて煙が左右に移動してくれる状態でないと、煙が残ってしまい美しい写真が撮れません。
打ち揚げられた花火は、なるべく近くで大きいものを見たい!と思ってしまいがちですが、特に写真を撮る際には、構図が大事。背景がわかってくると叙情的な絵になるので、少し離れた所から見ることをおすすめします。そうすることで、花火がファインダーからはみ出してしまうといったことも防げます。
取材協力:日本煙火協会
実際にここで知ったことを活かしながら、花火の写真を撮ってみませんか?大きさ、形、色など撮ってみないとわからない意外性がある、花火を撮るコツをご紹介しています。