迫力ある大きな動物から愛らしい小さな動物まで、さまざまな動物の撮影が楽しめる動物園。生き生きとした写真を撮るコツは、動物の種類は違っていても同じです。
撮影監修:斎藤 勝則
撮影協力:多摩動物公園
この写真は、檻の中のユキヒョウを写したものです。檻の中にいるのに、間近に迫ってくるような迫力があります。この写真のいいところを具体的に見てみましょう。
通路に沿って横に長い檻が設置されています。檻の奥には岩山があり、その背後にも檻の鉄格子があります。ユキヒョウはこの空間を自由に行き来しています。
近づいてきたユキヒョウを、何も気にせずに写した写真がこちらです。ありがちな写真ですが、どこかパッとしません。何がよくないのでしょうか。
これらを解消して、生き生きとしたユキヒョウを撮るためのテクニックをご紹介します。
AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR
大型の檻にユキヒョウがいます。鉄格子をできるだけ見えないようにぼかして雰囲気よく撮影するには、ユキヒョウがどの位置に来たときに狙うとよいでしょうか。
答えは、Bの位置に来た時です。
それぞれの作例と一緒に見ていきましょう。
手前の鉄格子とユキヒョウの距離が近過ぎるため、カメラを可能な限り鉄格子に近づけても、鉄格子がどうしても写り込んでしまいます。
手前の鉄格子に可能な限りカメラを近づけ、レンズを望遠端の300mmにして撮影しました。被写体がこの位置の場合、やや見下ろしたアングルにすることで背後の鉄格子をいれないでフレーミングできました。前の鉄格子はユキヒョウから離れているので、前ボケを利用して消すことができました。
手前の鉄格子をぼかして消すことができましたが、今度は背後の鉄格子が写り込んでしまい、雰囲気を壊してしまっています。
檻の周りをまわれる場合は、狙った被写体との位置関係がうまくとれる撮影位置を探して歩いてみましょう。ベストポジションに動物がいない場合、やってくるのを根気よく待つことも時には必要です。また、後ろを向いているなど動物のポーズや表情のタイミングがよくない場合も、動いてくれるのを待ってシャッターを切りましょう。
鉄格子をぼかして消す方法は、前ボケ、後ボケを応用したテクニックです。
小さくかわいらしい動物は、鉄格子越しではない飼育エリアにいることも多いので、アングルや撮影の仕方はさらに工夫ができますが、ちょっとしたコツを知っておくと、より自然な雰囲気の写真が撮れます。
今度は、水鳥がたくさんいる広い飼育スペースで撮影してみましょう。ここは人が立ち入って見学できる場所で、間近まで寄って撮ることができます。どの鳥をどのように撮ったらよいでしょうか。
つい、自分の一番近くにいる鳥に目が行ってしまいますが、近過ぎる小さな被写体にレンズを向けるとどうしても見下ろすような視線になってしまい、背景が地面ばかりになってしまいます。地面のゴミや葉が目障りに写り込むので、見下ろしての撮影はあまりおすすめはできません。
少し離れたところにいる鳥を、望遠で大きく引き寄せて撮影したのがこちらです。ポイントは、なるべく鳥の目線に近い高さまでカメラ位置を下げて撮ることです。低い位置から撮影することで背景に奥行きが出てよくボケるので、被写体が引き立ち、自然な雰囲気の写真になります。水鳥の美しいフォルムも表現されました。しゃがみ込んでカメラを構えることになりますが、ライブビューを使ってモニターを見ながら撮影すると、楽な姿勢で撮影できます。
アップで顔の表情に迫ったり、周辺の環境を入れて広く撮ったりすることで幅広い表現ができます。焦点距離や切り取りかたを工夫して、いろいろ楽しんでみましょう。
動物園撮影で役立つテクニックは鉄格子を消すだけではありません。ほかにも知っておくと便利な望遠ズームレンズの活かしかたをご紹介します。
ガラス張りの飼育スペースの場合、ガラスに光が反射したり自分の姿が映り込んだりしてうまく動物を撮れないことやガラスの汚れのせいで写りが悪くなることがあります。
ガラス越しの撮影では、まず汚れの少ないところを選びましょう。ガラスへの映り込みが動物と重なってしまう場合、撮影位置やカメラアングルを少し変えるだけでも避けられることがあります。ガラスに可能な限りレンズを近づけ、レンズは望遠にし、絞りを開けて、なるべくガラスから遠いところにいる動物を狙います。こうすれば、ガラスへの映り込みや汚れは前ボケとなり、目立たなくなります。
200mmの望遠で撮影しました。白い映り込みはボケていますが、ガラスから離れて撮影したため、消すことはできませんでした。
ガラスにレンズを密着させるようにして撮影したら、映り込みが消えました。撮影距離が近づいた分、焦点距離を150mmに短くしています。
人工物が入ると動物の生き生きとした雰囲気を壊してしまうので、避けるようにしましょう。背景を見て撮影位置やアングルを工夫することはもちろん、レンズを望遠にすることで人工物をぼかしたり、動物を大きく切り取るなどして、人工物を目障りでなくすることもできます。
長い尾を持つインコの全身を画面に収めて撮影したところ、背後の小屋が写り込んでしまいました。撮影位置を左右にずらしても避けにくい状況でした。
カメラを縦位置にし、レンズをズームして、尾の先は思い切って画面から排除しました。ズームしたおかげで背景の小屋はボケて、インコの表情も大きく写り、臨場感のある写真になりました。
300mmまでの焦点距離をカバーしながら、軽量設計で携行性に優れた望遠ズームレンズ。4.5段※(CIPA規格準拠)のVR機構を搭載。VRモードには、[SPORT]モードも採用し、スポーツシーンなど動きの変化が激しい被写体を狙う場合でもファインダー像が安定し、思い通りの構図で撮影できます。1.2 mと短い最短撮影距離と0.25倍の最大撮影倍率でクローズアップ撮影も楽しめます。
このギャラリーでは「レンズレッスン」で撮影した作品を掲載しています。
レンズの種類や目的で絞り込んで作品を検索することができますのでこの種類のレンズでどんな作品が撮れるのか、またお持ちのレンズの参考にしながらご覧ください。