これまでにも、どうするとボケが生じるのか、逆にボケなくなるのかについて複数回にわたってふれてきましたが、今回はあらためておさらいしながら、背景のボケ(後ボケ)、前景のボケ(前ボケ)を活かした撮影方法についてお話します。
ボケ感をコントロールするために大切なポイントは以下の4つです。
ひとつずつ見ていきましょう。
撮影協力:アロハガーデンたてやま、館山ファミリーパーク
撮影監修:斎藤 勝則
1つめのポイントは、レンズの焦点距離です。下の写真は6枚ともモデルの位置と大きさ、絞り(F5.6)の条件を変えずにレンズの焦点距離のみを変えて撮影したものです。モデルの背景のボケかたに注目してください。焦点距離が長くなるほど背景がボケて、焦点距離が短くなるほど背景がシャープに写っていることがわかります。
2つめのポイントは、絞り(f値)です。レンズの絞りが開放になるほど(絞り値を小さくするほど)よりボケて、絞りを絞るほど(絞り値を大きくするほど)ボケは小さく鮮明に写ります。絞り値とボケの関係について説明した下の画像を見てみましょう。
絞り値が小さいほどピントの合う範囲が狭く大きくボケる写真に、逆に絞り値が大きいほどピントの合う範囲が広くシャープな写真になります。このピントが合っている範囲を「被写界深度」と言います。手前にも生じるボケを「前ボケ」と言い、背景のボケと同じように前ボケも絞り値が小さくなるほど顕著になります。
3つめのポイントは、「カメラー被写体」の距離です。この距離の取りかたによってボケかたが変わってきます。
下の写真は、同じ位置に立っているモデルを撮影距離を変えて撮ったものです。焦点距離と絞りの条件は2枚とも同じです。背景のボケかたに注目すると、モデルに近づいて撮影したものの方が後ろの植え込みが大きくボケています。「カメラと被写体の距離が近づくほど背景がボケる」ということがわかります。
4つめのポイントは、「被写体ー背景」の距離です。カメラからモデルまでの距離(撮影距離)を同じに保ちながら、モデルに立ち位置を変えてもらいました。焦点距離と絞りの条件は同じです。背景のボケかたに注目すると、モデルが壁から離れた方が背景の壁がボケています。「被写体と背景の距離が遠くなるほど背景がボケる」ということがわかりますね。
ボケ感は、以上の4つのポイントが重なり合いながら変化します。これらを理解することで、ボケをコントロールします。
ではここで、ボケを活かした2つの作例をご紹介しましょう。よりボケやすいように、どちらも絞りは開放で撮影します。焦点距離は、撮影場所や構図に合わせて適宜変えています。
モデルの手前に花が来るような位置から絞り開放で撮影しています。絞り値を小さくしたことでピントの合う範囲がモデルの座っている付近のみになっています。モデルの足元の花ははっきりと写っていますが、手前の花はふんわりとした色のボケになり、背景もきれいにボケて被写体が引き立ちました。
ここで実験です。カメラの前に枝を配置してモデルを撮影します。ボケ感をコントロールする4つのポイントを応用して、この枝を消してみましょう。
カメラとモデルの間に、すこしづつ位置を変えながら枝を配置して撮り比べてみましょう。カメラとモデル、それぞれの位置から枝の配置場所との関係に注目しながら作例をみていきましょう。すべてよりボケるよう焦点距離の長い200mmの望遠レンズを使い、絞り値も開放にしました。
まずはモデルの近くに枝を置いて撮影。枝が目障りな写りかたをしています。
枝をカメラに近づけて撮影すると、枝がボケて目立たなくなりました。
枝をカメラに至近距離まで近づけて撮影すると、枝はほとんど見えなくなりました。
このようにどうしても避けられない障害物が手前にあるときは、その部分を大きくぼかすことで消えたように写すことができます。前ボケの応用ですね。 まとめると、カメラと被写体の間の障害物を消すには、以下の条件をクリアすればよいということがわかりました。
前景、背景をどれだけぼかすことができるかは、状況に合わせて4つのポイント「レンズの焦点距離」「絞り」「カメラー被写体の距離」「被写体ー背景の距離」をバランスよくコントロールすることです。うまいバランスを見つけて、作品づくりに活かしてくださいね。