みなさんは、お手持ちのレンズのお手入れをしたことはありますか? レンズに付着した汚れは傷やカビの原因となり、さらにレンズの劣化や画質にも影響が出てしまう恐れがあります。今回は、レンズのコンディションをベストに保つためのお手入れ「レンズクリーニング」の基本をご紹介します。
ほこりやチリが付着していたりレンズ面を手で触ってしまっていたりと、撮影後のレンズは意外に汚れています。撮影が終わったら、正しい道具を正しく使って愛用のレンズをピカピカにしてあげましょう。
今回は、カメラやレンズのお手入れに必要な道具一式がセットになった「クリーニングキットプロ2 CK-P2」を使ってレンズクリーニングを行います。
①ブロアー
レンズボディーやレンズ面についたほこりやゴミを吹き飛ばすために使用します。
②ブラシ
レンズボディーについた大きなゴミを払って取り除くために使用します。
③クリーニングクロス
レンズボディーやレンズ面をふいてほこりやゴミを取り除く、ハンカチサイズのクロスです。
④シルボン紙
レンズやフィルター面に付着した、ブロアーでは落とせない汚れを取るために使うクリーニングペーパーです。レンズ面を掃除するときは市販のアルコール(無水エタノール)を浸み込ませて使用します。
⑤クリーニングスティック
先端がマイナスドライバーのような形状になっているレンズ清掃用のスティックです。スティックにシルボン紙を巻きつけ、レンズ面を掃除します。
⑥ハンドラップ
アルコールを入れる容器です。上部の皿を軽く押し下げるだけで一定量のアルコールが出せる仕組みになっており、作業が楽に行えます。
シルボン紙は開封後、束のまま手に取り端をしっかりと持ちパタパタと振って紙に付着している余分な繊維を落としておきましょう。また湿気やほこりからシルボン紙を守るため、ケースやジッパーつきのビニール袋などに入れて保管しておくとよいでしょう。
シルボン紙には表面と裏面があります。触ってみてつるつるとしている方が表面でざらざらとしている方が裏面となり、掃除をする際は表面がレンズ面にあたるようにして使います。クリーニングスティックに巻きつける際に、表裏を間違えないよう注意しましょう。
アルコールが浸透したシルボン紙は引火しやすい状態になっているため大変危険です。アルコールと同様にお取り扱いには細心の注意を払いましょう。シルボン紙は使ったらすぐに取り換える必要があります。
ではさっそく、これらの道具を用いながらレンズクリーニングを行ってみましょう。
レンズをクリーニングする前に、あらかじめレンズキャップ(フロントキャップ)と裏ぶた(リアキャップ)、カメラのボディーキャップのほこりをブロアーを使って吹き飛ばしておきます。レンズにフィルターをつけている場合は外しておきましょう。
カメラからレンズを外し、カメラにはボディーキャップを、レンズにはレンズキャップと裏ぶたを装着します。
レンズを手に取り横に回しながら、ブラシをフォーカスリングやズームリングの溝や隙間に沿うように動かしレンズボディー部分のほこりを払います。ズームレンズの場合は鏡筒部を伸ばし、ほこりを内部に入れないよう内から外に掃き出すようにブラシを動かしましょう。
次にブロアーを使い、レンズを横に回しながらレンズボディー全体のほこりを吹き飛ばします。
最後にクリーニングクロスでレンズボディーについた手脂などの汚れをふき取ります。ズームレンズの場合は鏡筒部も丁寧にふき取りましょう。
レンズキャップを外し、ブロアーでレンズ前面のほこりを吹き飛ばします。
次にクリーニングスティックにシルボン紙を巻きつけ、ハンドラップを使いシルボン紙にアルコールを浸み込ませます。それをレンズの中心にあて、外側に向かって円を描くようにクリーニングスティックを動かしレンズ前面をふいていきます。レンズの端までふき残りがないように、外周部分はクリーニングスティックの先端を徐々に立てるように持ち上げながらふき上げましょう。ふき終わったらレンズキャップを装着します。
なお、クリーニングスティックは45度~60度くらいの角度でレンズ面にあて、ふくときは力を入れず軽くなでるくらいの強さで行います。レンズ中心部分で1周1秒、外周部分で4秒程度を目安にした速度で動かすとよいでしょう。
シルボン紙を1枚手に取り、シルボン紙の表面が外側に来るように角を三角に折ります。それをクリーニングスティックの平らに加工されている方にかぶせ、指で押さえながらシルボン紙を手前にくるくると、先端をそろえるように巻きつけます。
このとき、クリーニングスティックの先端からシルボン紙の先端を5mm程度繰り出すようにして巻くのがポイントです。またシルボン紙の先端付近はレンズ面に接触する部分なので、なるべく指で触れないようにしてください。
次に、シルボン紙の先端をハンドラップ上部の皿の上にのせ、2回ほど皿を軽く押し下げ出てきたアルコールをシルボン紙に浸します。アルコールを浸し過ぎるとふきむらが残る原因となりますので、皿を押し下げるのは2回までを目安にしてください。
レンズの裏ぶたを外し、ブロアーでレンズ後面のほこりを吹き飛ばします。
クリーニングスティックにシルボン紙を巻きつけアルコールを浸し、レンズ前面と同じように中心から外側に向かって円を描くようにレンズ後面をふき上げます。
レンズのマウント部分に目立った汚れがあった場合にはクリーニングスティックに新しいシルボン紙を巻きつけ、アルコールをつけずに汚れ部分をふき取りましょう。
最後にレンズの裏ぶたを装着し、レンズクリーニングの完了です。
フィルターをお使いの場合は、レンズと一緒にフィルターのクリーニングも忘れず行いましょう。
まずブロアーを使い、フィルター両面のほこりを吹き飛ばします。クリーニングスティックにシルボン紙を巻きつけアルコールを浸し、レンズ面と同じように中心から外側に向かって円を描くようにフィルター面をふき上げます。フィルターの表面が終わったら裏面も同様に、必ず新しいシルボン紙を巻いてからふき上げましょう。レンズ保護フィルターの場合はクリーニングが終わったらまたレンズにつけておくようにします。
レンズクリーニングの基本手順を、最初から最後まで通して確認してみましょう。
クリーニングが終わったレンズは、次に使用するまでカメラと一緒に正しく保管しておきましょう。
また、長く快適に愛用していただくためにも定期的にプロによる点検・清掃を行っていただくことをおすすめします。詳細は各ニコンプラザのサービスセンター窓口までお問い合わせください。
A.レンズ前面で行う掃除(シルボン紙を巻きつけたクリーニングスティックにアルコールを浸み込ませ、中心から外側に向かって円を描くようにレンズ面をふく)を、汚れが落ちるまで何度か繰り返しましょう。汚れが広がるのをふせぐため、必ず1回ごとにシルボン紙を変えてレンズをふくようにしてください。
A.基本的には通常のレンズ、フィルターと同様の方法でクリーニングすることができますが、軽度の汚れであればクリーニングクロスなどでふくだけで簡単に取ることができますのでより便利にお使いいただけます。
A.レンズボディーやレンズ面、レンズキャップなどについた水分を乾いたきれいなタオルで丁寧にふき取ってください。ズームレンズの場合は鏡筒部も伸ばしてふきましょう。その後、自然乾燥させてから基本のレンズクリーニングを行いましょう。
A.海水が乾くと塩分がレンズに残ってしまうことがありますので、レンズボディー部分は水で濡らし硬く絞ったきれいなタオルで丁寧にふき、塩分をしっかり落とします。ズームレンズの場合は鏡筒部も伸ばしてふきましょう。その後、自然乾燥させてから基本のレンズクリーニングを行いましょう。
A.レンズの中に入り込んでしまったほこりやチリは、写りに影響がない限りあまり気にする必要はありません。ただし、ほこりやチリではなくカビが生えてしまった可能性もありますので、気になるようであれば各ニコンプラザのサービスセンター窓口までお問い合わせください。
A.レンズをぶつけたり落としてしまったりした後、動作がおかしいようであれば修理が必要になります。また一見動作に問題がないようでもレンズ内部に大きな被害を受けている可能性がありますので、サービスセンター窓口などへ相談することをおすすめします。なお、写りに支障が出ている場合はサービスセンター窓口に相談に行く際に、問題を確認したカメラも一緒に持って行くとよいでしょう(問題の原因がカメラにあるのかレンズにあるのかを確認するため)。