結婚の記念に撮影するウェディングフォト(ブライダルフォト)。結婚式の前後に撮影する前撮り・後撮り、結婚式の代わりに写真を撮るフォトウェディングなどさまざまな形があります。最近ではプロフォトグラファーに撮影を頼むのではなく、自分たちで撮影をしたり友人に撮影を頼んだりと「セルフ前撮り」をするカップルも増えています。低コストでできるだけでなく時間もスタイルも自由に、プライベートだからこそ肩肘張らず自分たちらしさを出せる写真を撮ることができます。今回はそんなセルフ前撮りについて、撮影のポイントとコツをご紹介します。
撮影監修:斎藤勝則
撮影協力:株式会社ワールドパーク
まずは撮影する場所を決めましょう。ポイントは以下です。
私有地に勝手に入って撮影したり、利用者や通行者の妨げになるようなことのないよう、マナーに配慮しながら撮影を行いましょう。
ウェディングらしさを演出するなら、ウェディングドレスをイメージさせる白を基調とした衣装を準備するとよいでしょう。ワンピースやジャケットスタイルを取り入れるとフォーマル感を出すことができ、またブーケや指輪、ベールなど結婚式で身に着けるものを準備しておくとグッとウェディングフォトらしくなります。2人のイニシャルモチーフの置物やウェディングに関するガーランドなども売っていますので、準備しておいてもよいですね。
今回準備した衣装は白のワンピースとベージュのセットアップです。どちらもカジュアルな衣装です
ブーケや指輪、ベールの他、衣装にあわせた髪留めや帽子なども準備しました
小物の用意は必須ではありませんが、いくつか準備しておくと写真のバリエーションが増えますよ
とはいえ、ウェディングフォトに決まりはありません。ドレスとタキシードでもTシャツにジーンズのカジュアルな衣装でも、どんなイメージの写真にしたいのかどんな雰囲気が自分たちらしいのか、2人の希望する衣装や小物を揃えてみてくださいね。
標準(広角)レンズ
2人をメインにしながらさまざまなシチュエーションで撮影するウェディングフォト。標準域のズームレンズはマストとなりますが、おすすめは広角域のレンズです。背景を広く入れることができるため、撮影場所の雰囲気を活かした写真を撮ることができます。
望遠レンズ
望遠画角のレンズがあると圧縮効果を狙った画や背景を大きくボカした写真が撮影できるため、バリエーションを増やすことができます。少し離れた位置から撮影する必要があるため、三脚を使って自分たちだけで撮るには難しい場合もあります。
三脚
自分たちだけで撮影する場合には、三脚が必須です。
撮影モード
「絞り優先(A)オート」が撮影しやすくおすすめです。どれくらい背景をボカしたいのか、好みのボケ具合に合わせて絞りを決め、あとはカメラまかせで撮影することができます。
ピント(AFエリアモード)
ウェディングフォトでは何よりも2人にピントを合わせることが大切です。「AFエリアモード」を[オートエリアAF]にしておけば、カメラが自動で人の顔や瞳を検出しピントを合わせてくれますので安心です。
写真保存形式
撮影した写真は「JPEG+RAW」で保存しておくのがおすすめです。RAW画像で保存しておけば後からじっくり肌の質感や背景の色味などを好みに調整することができます。
ホワイトバランス
撮影当日の天候や撮影状況にあわせて人物の肌色が自然に見えるように、また衣装が白色の場合は白が自然に見えるようにホワイトバランスを変更しましょう。
ホワイトバランス:オート0
ホワイトバランス:曇天
「ピクチャーコントロール」とは写真の雰囲気を変える画作り設定のこと。数種類あるモードの中から撮りたいイメージや自分好みのイメージに合わせてモードを選び、撮影します。
今回は、人の肌をきれいに見せてくれる[ポートレート]や[ニュートラル]に設定にしておくとよいでしょう。さらにそこから「明瞭度」を-3、[ミドルレンジシャープ]を+1にすると、肌がよりふんわりとしておすすめです。
ピクチャーコントロール:ポートレート
ニュートラルに近い効果で肌がやわらかく描写され、髪の毛のディテールをつぶすことなく再現することができます
ピクチャーコントロール:ニュートラル
コントラストがやや低くやわらかい描写で、被写体に忠実な色再現をします
ピクチャーコントロール:ニュートラル(明瞭度-3、ミドルレンジシャープ+1)
ニュートラルからさらに肌をふんわりなめらかにした画作りです
ウェディングフォトを撮影しながら気をつけたいポイント、撮影のコツをまとめました。
撮影も自分たちで行う場合には三脚を使い、リモコンやセルフタイマーなどでシャッターを切ります。おすすめはカメラと手持ちのスマートフォンを接続し、スマートフォンで映りかたを確認しながらシャッターを切ることができる「SnapBridge(スナップブリッジ)」です。対象のカメラをお持ちの方は、事前にアプリをダウンロードしておくと便利です。また、三脚を使うときには「手ブレ補正機能」を必ずオフにしておきましょう。
スナップブリッジを例に、撮影方法を説明します。
1
三脚をセットし、スナップブリッジ(スマートフォン)で映りかたを確認、撮影ポジションを決めます。リモコン(セルフタイマー)で撮影する場合は、1人がカメラの前に立ち、もう1人が構図を調整しながらカメラ(三脚)の位置を調整します。
2
構図が決まったらシャッターボタンを押します。このとき、必ずセルフタイマーの設定をしておきましょう。シャッターが切れるまでの時間を3~5秒程度にしておくのがおすすめです(長すぎると、タイミングを計るのが難しくなるため)。
3
シャッターを押したら、スマートフォン(リモコン)をカメラから見えない位置に隠し、ポーズをとってシャッターが切れるのを待ちます。
4
ウェディングフォトは後からハガキにしたりアルバムにしたりと様々なシーンで利用するものです。特にセルフ撮影のときには細かな構図が調整できないこともありますので、あとからトリミングできるように余裕を持った画角で撮影しておくとよいでしょう。
草原や森の中など緑にかこまれた場所で撮影する場合、緑かぶりする(本来の色より緑色っぽく写ってしまう)ことがあります。そういったシーンでは、再度ホワイトバランスを確認しておくとよいでしょう。
ホワイトバランス:オート1
肌の色などを見ると、全体的に緑っぽくなっているのがわかります
ホワイトバランス:曇天
肌の色が自然に、赤みのある色合いになりました
撮影中、走ったり歩いたりジャンプしたりと動きのある写真を撮影したとき、当日の撮影状況によっては被写体ブレを起こしてしまうことがあります。ブレてしまうときはISO感度を上げて、シャッタースピードを速く設定しましょう。
ISO感度:100
シャッタースピード:1/25秒
2人で走ってもらったところを撮影、シャッタースピードが遅くブレてしまいました
ISO感度:1600
シャッタースピード:1/400秒
ISO感度を上げたことで速いシャッタースピードを確保、ブレずに撮影できました
自然光での撮影の場合、当日の日差しの向きによって逆光になったり、日陰の場所で顔が暗く写ってしまったりすることがあります。顔を明るく写すためにはいろいろな方法がありますが、お持ちであれば、どんなシチュエーションでも対応できるスピードライト(またはフラッシュ内蔵のカメラ)を持って行っておくと便利です。
日陰になったシチュエーション。補正なしでただ撮ると、このように顔が暗く写ってしまいます
露出補正を+1.7かけました。顔は明るく写っていますが、背景も白く飛んでしまっています。このように、状況によっては露出補正だけでは上手く行かない場合もあります
白飛びや黒つぶれを軽減する「アクティブD-ライティング」を[より強め]に設定。明暗差のあるシチュエーションでは、顔を明るく写すのに有効に働きます
スピードライトを焚き、日中シンクロ撮影。どのようなシチュエーションでも顔を明るく、背景も白飛びせず写すことができます。カメラに着けて常時被写体を明るく照らしてくれるLEDライトでも代用可能です
2人の大切な思い出の写真、イメージを変えてバリエーション豊かに撮影してみましょう。
同じシチュエーションで撮影した2枚の写真。標準レンズでは2人を中心に大きく写していますが、広角レンズでは海岸の広々とした雰囲気を活かした写真になっています。同じ場所でも画角を変えることで写真から伝わるイメージを変えることができます。
焦点距離:50mm
標準ズームで撮影した1枚。2人を大きく、メインに捉えています
焦点距離:24mm
広角ズームレンズで撮影した1枚。背景を広く入れ、“風景の中にいる2人”というイメージになります
背景をはっきり写すか、大きくボカすかでも写真のイメージは変わります。はっきり写せばどんな場所で撮影したのかが良く伝わり、大きくボカせば2人をより際立たせ印象的に写すことができます。
焦点距離:49mm
雲のすき間から見える夕日の様子まで良く伝わります
焦点距離:200mm
望遠画角で撮影することで背景を大きくボカし、圧縮効果もある1枚に
「クリエイティブピクチャーコントロール」とは基本の8つのピクチャーコントロールに加えて新たに搭載された20種類のモードのこと。撮影したときの気持ち、空気感や温度といった微妙なニュアンスも写真に込めて表現できそうな多彩なモードがあり、クリエイティブピクチャーコントロールを使うだけで手軽に写真の仕上がりイメージを変えることができます。
撮影時に変えて撮ることも、RAW画像なら後から変更することも可能です。
クリエイティブピクチャーコントロール:サンデー
クリエイティブピクチャーコントロール:ドリーム
最後に、さまざまなウェディングフォトをご紹介します。アイデアの参考にしてみてください。
ブーケのみを撮影した1枚。小物だけを撮影するのも画になります
目線ありの決めた表情だけでなく、合間にふと見せる2人の自然な表情も魅力的です
必ずしも2人が映る必要はなく、ぜひそれぞれ個人の写真も撮影しておきましょう
定番の小物を使った写真はグリーティングカードやウェディングボードなど、便利に使うことができます
振り向いた瞬間、パートナーと目を合わせた瞬間の笑顔が印象的です
後ろ姿も画になります。こちらは少し引いて、2人だけの空間を演出するように撮りました
ブートニアを胸元につけてあげる瞬間をパシャリ。準備をしている様子も撮影しておくと、思い出になります
ベールを風になびかせて、夕焼けを背景に撮影した1枚です
日暮れの空を背景に、シャンパンを持って乾杯する手元を撮影。パーティーをイメージさせる1枚です
見つめ合う2人の写真は撮っておきたい大切なカット。幻想的な夕日を背景に、とてもステキな写真になりました
撮影当日は夢中になって、ついがんばり過ぎてしまうことがあります。水分補給をしたり適度に休憩を取ったりするなどして、体調に気をつけながら撮影に臨みましょう。
2人ならではのアイデアを盛り込みながら、思い出に残るステキなウェディングフォトを撮影してみてくださいね。