運動会は、一生懸命がんばる子どもたちの姿を見ることができる年に一度の晴れ舞台。目だけでなく写真にもしっかりとその姿を焼き付けておきたいと、撮影に力を入れる家族の皆さんも多いのではないでしょうか。そこで今回は運動会の写真について、失敗を減らしより良く撮るためのコツをご紹介します。
撮影監修:斎藤勝則
運動会当日は撮影だけに集中できるよう、事前に準備をしておきましょう。
学校から配布されたプログラムを見て、以下のようなことを当日までに確認しておきましょう。
あらかじめ撮影場所をイメージしておくことで、当日、バタバタと焦ってしまうことなくスムーズに撮影することができます。
大勢いる観客の中で手持ち撮影になることが多い運動会。ミラーレスカメラなどなるべく軽く、コンパクトなカメラがあると便利です。また今回は、APS-Cサイズ(DXフォーマット)の「Z 50」を使って撮影を行いますが、APS-Cサイズ(DXフォーマット)のカメラはフルサイズ(FXフォーマット)のカメラの約1.5倍、被写体を大きく写すことができるため、遠くの被写体を撮影するのに有利になります。
撮影場所から競技を行う子どもまでの距離はケースバイケースだと思いますが、近くから撮れないことがほとんどです。望遠画角のズームレンズ(今回使用した「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」など、標準から望遠まで幅広い画角を持つ高倍率ズームレンズがあると様々なシチュエーションに対応できおすすめです)を準備しておき、あらかじめカメラに装着しておきましょう。
競技中は校庭の土埃が舞うこともありますので、基本的にはレンズ交換はせず望遠ズーム1本での撮影がおすすめですが、競技以外で、友達同士の記念写真やお弁当を食べているときなどのスナップ用に、標準画角のレンズも持っておくと便利です。レンズ交換は大きめのバックの中など、なるべく風やほこりなどの影響を受けづらい場所で素早く行いましょう。
撮影中にカメラのバッテリーが切れてしまっては元も子もありません。バッテリーの充電を満タンにしておくこと、また予備のバッテリーを持っておくとより安心です。
決定的瞬間を逃さないよう、運動会では連写撮影をおすすめしています。メモリーカードがいっぱいになってしまうこともありますので、あらかじめデータをパソコンに移すなどしてメモリーカードを空の状態にしておきましょう。こちらも、予備のメモリーカードを持っておくとより安心です。
連写が必要になる運動会での撮影では、どんなメモリーカードを持っていくとよいのでしょうか。SDカードを例に、メモリーカードを選ぶときにチェックしたい項目をまとめました。
①カメラとの互換性
SDカードひとつとっても、さまざまな規格があります。カメラごとに「この規格のカードが使える」という注意事項がありますので、チェックしてから購入しましょう。
②UHS-I規格
転送速度を表す数値で、「I」 と「II」があります。「II」は新しい規格となり規格外のカメラを使っている場合、「II」を使ってもパフォーマンスを活かすことができませんので購入の際には注意しましょう。
③容量
今回の撮影においては最低でも32GB、64GB以上の容量があると(さらに予備カードがあれば)安心です。どれくらいの枚数を撮りたいかを基本に、容量に合わせて値段も変動しますので適宜セレクトしてください。
④書き込み速度
数値が大きいほどメモリーカードに速くデータを書き込める、連写撮影では途切れず次々とシャッターを切ることができます。ただし、今回の撮影では「ずっとシャッターを押し続ける」という撮りかたではないため、そこまで大きな数値を買う必要はないでしょう。数値が大きいほど値段も高価になりますので、適宜セレクトしてください。
運動会の当日にあれこれカメラの設定を行っていると、慌ててしまうこともあるかもしれません。あらかじめ、子どもたちの速い動きをしっかりと止めて写すためのカメラ設定を行っておきましょう。
1
[撮影モードダイヤル]を[S]に合わせ(カメラの機種によっては、中心のダイヤルロックボタンを押しながらダイヤルを回します)、[シャッター優先オート]に設定します
2
メインコマンドダイヤルを回して、1/1600秒に設定します
3
ISOボタンを押しながらサブコマンドダイヤルを回し、[ISO AUTO(感度自動制御する)]に設定します
4
印の部分が、「1/1600」、「ISO AUTO」と表示されていればOKです
5
ボタンを押し、メニューを表示させます
6
[レリーズモード]を選択、OKボタンを押します
7
[高速連続撮影(拡張)](一番多いコマ数撮れるもの)を選びOKボタンを押します
8
次に[AFエリアモード]を選びます
9
特定の人物を中心に撮影するときピントを合わせやすい[ワイドエリアAF(L)]に設定します
10
次に[フォーカスモード]を選びます
11
動く被写体を撮るときに最適な[コンティニュアスAF]に設定します
12
最後に、[光学手ブレ補正]を選びます
13
動きの変化が激しい被写体を撮影する場合に最適な[スポーツ]に設定します
ここからは競技別に、撮影のポイントをご紹介していきます。
徒競走の撮影は少し難しいイメージがあるかもしれませんが、カメラの設定をきちんとしておけばシャッターチャンスのポイントをつかむことで上手に撮ることができます。
撮りかたの基本は、まずスタート位置にいる子どもにピントを合わせ半押し(ピントを固定)、走る子どもをレンズで追いながら画面内で大きく子どもが捉えられたところでシャッターボタンを押し連写で撮影します。では、詳しく見ていきましょう。
スタートからゴールまで直線で走るコースを横から撮影する場合を例に、撮りかたの基本とシャッターチャンスのポイントを説明します。
子どもたちがどこからスタートしどんなコースを走るのかはケースバイケースになるでしょう。また、撮影できる場所についても学校で指定されていることが多く、好きな場所から撮影できることは少ないでしょう。そこでここではカーブを含むコースを走る徒競走を例に、撮影位置によってどんな姿が撮れるのか、どんな徒競走シーンを狙うと良いのかをご紹介します。
①スタート付近から撮影する場合、スタート位置についている姿やスタート直後の写真を大きく捉えることができます。
②トラックのコーナー側から撮影する場合、スタート直後から最初のカーブに差し掛かる辺りが狙い目です。
③トラックのコーナー終わり側から撮影する場合、カーブを走る子どもを大きく捉えることができます。カーブは他の子とかぶりにくく、撮影しやすいポジションです。
④ゴール側から撮影する場合は、ゴール直前やゴールの瞬間を写すことができます。
シャッターチャンスのイメージがわかったところで最後に、撮影の前に必ずやることがあります。撮影する場所についたらシャッターチャンスの位置を確認し、あわせてその場所に子どもが走ってきたときどれくらいの画角で撮るとちょうどよいのか、ズームレンズを覗いて確認してみてください。子どもが走る組の前にもし何組か走るようであれば、試し撮りをしながら練習しておくとよいでしょう。
体操やダンスは一定の場所に留まっているタイミングがあるため、そこを狙うと撮影しやすいでしょう。顔の表情にフォーカスしたり全身を入れてポーズを強調したり、様々に切り取ってみてください。
カメラの設定はそのままでOKですが、1点だけ注意したいのがピントです。場合によって子ども同士が重なるケースもあるため、上手くピントが合わなくなってしまう(手前や奥の子どもに合ってしまうなど)ことがあります。その場合はより細かなピント合わせができるよう「AFエリアモード」を「ワイドエリアAF (S)」にしてみてください。それでも難しい場合はダイナミックAFにするとピンポイントでピントを合わせる位置が選べ、また子どもが動いてもピントを追ってくれるため便利です。
徒競走のように速く動く子どもを捉えなければならないという競技ではないものの、玉入れや大縄跳びなど、ジャンプしたり横にズレたり上下左右の動きを伴う競技も多いと思います。そのような競技でも「運動会の基本のカメラ設定」で撮影することができますが、もしも被写体ブレを起こしてしまう場合はシャッタースピードをブレなくなるまで速くしてみましょう。
玉入れの玉を投げ入れる瞬間、縄跳びを飛んだ瞬間などがシャッターチャンスです。連写で狙ってみましょう。
子どもが友達と話をしたりはしゃいだりしている様子も、家族にとっては普段見ることができない貴重なシーンです。競技が始まる前に子どもが待機しているときなど、子どもの様子を観察してみてください。また、競技が終わったあとは友達同士で記念写真を撮ってあげるのもいいですね。記念写真の撮影は、標準画角のレンズがあると便利です。
運動会は年に一度、子どもの成長を垣間見ることができる家族にとって大切なイベントです。ここ数年は運動会に参加できる家族の人数が限られているケースもあり、良く撮れた写真を祖父母に送ったりする方も多いのではないでしょうか。今回の記事を参考に運動会前にしっかりと準備をして、ぜひ、思い出に残る写真をたくさん撮ってくださいね。