Nikon Imaging
Japan
プレミアム会員 ニコンイメージング会員

Lesson21:シャッタースピードを理解しよう

被写体を止めて写すことは写真の基本ともいえますが、速く動くものや暗い場所でブラさず撮るのは意外と難しいものです。「シャッタースピード」についてより深く理解することで、そんな失敗を防ぐだけでなく写真の仕上がりイメージも変えることができるようになります。今回は基礎知識から作例を交えた撮影テクニックまで、シャッタースピードについて学んでいきましょう。

撮影監修:斎藤勝則

1.シャッタースピードの基礎知識

シャッタースピードとは

カメラ内部を見てみると、「撮像素子(イメージセンサー)」とレンズの間に「シャッター幕」があります。シャッタースピードとは、この幕が開いている時間のことを指します。
カメラはレンズから取り込んだ光や情報を撮像素子に伝えることで写真を撮っていますが、厳密にいうと、“シャッター幕が開いている間の光・情報を撮像素子が捉えて写真を撮っている”ということになります。

たとえば「シャッタースピード:1秒」では、1秒間シャッター幕を開ける=1秒間レンズから光や情報を取り込むということになります

シャッタースピードの表しかた

シャッタースピードは1、1/250、1/1000のように秒数で表します。上の図はシャッタースピードの数値を並べたものですが、上にいくほど遅く(シャッターが開いている時間が長く)、下にいくほど速く(シャッターが開いている時間が短く)なります。遅いほうから速いほうに向かって1秒、1/2秒、1/4秒と1/2倍ずつ推移し(逆だと2倍ずつ)、これを「1段」といいます。

たとえば1/30秒で写真を撮っているとき、1/60秒に変更することを「シャッタースピードを1段速くする(上げる)」と表現します。1/500秒から1/125秒に変更するなら「シャッタースピードを2段遅くする(下げる)」となります。ニコンのカメラでは1段ずつだけでなく、1/2段、1/3段ずつシャッタースピードを変更することができます。

また、遅いシャッタースピードのことを「スローシャッター」、速いシャッタースピードのことを「高速シャッター」と呼びます。

写真の写りかたの変化

シャッタースピードが変わると、写真の写りかたはどう変化するのでしょうか。

動く被写体の写りかたが変わる

シャッタースピード:1/500秒

シャッタースピード:1/60秒

シャッタースピード:1秒

シャッターが開いている間、カメラはその被写体を捉え続けます。こちらはシャッタースピードを変えて滝を写したものですが、1/500秒の速いシャッタースピードでは流れ落ちる滝の一瞬を切り取り、1/60秒ではおおよそ人の目で見ている感覚と近いイメージの滝の流れを、1秒では水の流れが線となって写っています。動いている被写体を撮影した場合、シャッタースピードの違いでこのように写りかたが変わります。

写真の明るさが変わる

シャッタースピード:遅い

シャッタースピード:速い

シャッタースピードの速さによってカメラに取り込む光の量が変わるため、写真の明るさが変わります。こちらは同じ撮影条件(絞り、ISO感度同じ)でシャッタースピードを変えて撮影したものですが、シャッタースピードが遅いほうが多く光が取り込まれるため明るい写真になり、速いほうが取り込まれた光の量が少ないため暗い写真になります。

シャッタースピードと写真の関係は、以下の図ようになります。

2.シャッタースピードを変えて撮影できるシーン

ではシャッタースピードをコントロールすることで、どのような写真を撮ることができるのでしょうか。

被写体ブレを防ぐ(動く被写体を止めて写す)

動く(動いている)被写体を撮る場合、シャッタースピードが遅すぎると写真がブレて写ってしまいますが、シャッタースピードをコントロールすることで被写体ブレを防ぎ、肉眼では捉え切れないような速い動きもその一瞬を写し留めることができます。

シャッタースピード:1/80秒
シャッタースピードが遅く被写体ブレを起こしています

シャッタースピード:1/800秒
シャッタースピードを速くしたことで、被写体を止めて写すことができました

被写体の動く速さ、被写体と撮影者との距離、焦点距離などで適正なシャッタースピードは変化します。撮影状況に応じて被写体を止めて写すことができるシャッタースピードを見極めることが大切です。

歩いている人
シャッタースピード:1/250秒

新幹線
シャッタースピード:1/1250秒

ボールを蹴る瞬間
シャッタースピード:1/1600秒

走っている犬
シャッタースピード:1/2500秒

手ブレを防ぐ

シャッターが開いている間にカメラが動いてしまうと、いわゆる「手ブレ」の写真になってしまいます。シャッタースピードが遅い場合にはシャッタースピードを速くする、または三脚を使うなどカメラをしっかり固定しておくことで手ブレを防ぐことができます。

シャッタースピード:1/2.5秒
暗いシーンでは特にシャッタースピードが遅くなるため、手ブレしやすくなります

シャッタースピード:1/50秒
シャッタースピードを上げたことで手ブレを防ぎました

水の表現を変える

速く動く被写体を高速シャッター、スローシャッターで撮影してみると、肉眼では見ることのできない、写真ならではの表現で写すことができます。おすすめは滝や噴水などの流れる水です。高速、スロー、両方とも画になり、それぞれ全く違った水の表情を写すことができます。

シャッタースピード:8秒
滝つぼをスローシャッターで捉えました。水の流れが線状になり、スポットライトのようにも見えます

シャッタースピード:1/2000秒
滝つぼに落ちた水の粒を高速シャッターで捉えました。水が氷っているかのように写りました

被写体をあえてブラして撮る

シャッタースピードを遅くして動く被写体を撮影することで、あえて被写体ブレを起こさせて撮る表現方法があります。動く被写体であれば何でも画になるというわけではありません。臨場感を出したり幻想的に仕上げたり、意図したブレを得るためのシャッタースピードを見極めて撮影します。

シャッタースピード:1/2.5秒
強い風に揺れる花を撮影

シャッタースピード:1秒
空港でせわしなく歩いている人たちを撮影

流し撮りでスピード感を出す

動いている被写体をレンズで追いながら撮影する「流し撮り」。被写体は止めて背景のみ流れるように写すテクニックで、躍動感を出すことができます。流し撮りは、被写体の動く速度や背景をどのくらい流したいかによってシャッタースピードを決めますが、基本的にはシャッタースピードを遅くして撮影するのでブレやすく、何度か試し撮りをして練習するなど撮影技術も必要です。

シャッタースピード:1/50秒
走行中の鉄道を流し撮り

スローシャッター(長時間露出)で光跡を表現

スローシャッターを用いた作例としてよく撮影されるのが、車のテールランプです。夜、車が通りすぎる間シャッターを開けておくことで車はブレて写らず、テールランプがたどった光跡のみが写真に映し出されます。「長時間露出」とも呼ばれる撮影方法で、打ち上げ花火や流れる雲、先ほど挙げた滝の撮影でも使われています。
シャッタースピードは30秒でも15分でも、カメラの設定と撮影状況によっては何時間も開けておくことができます。空に円を描くような星の軌跡を捉えた写真などは、そのようにして撮られています。

シャッタースピード:8秒
車の光跡を撮影

3.シャッタースピードと露出の関係

ここまでを理解したところで、「では早速、好きなシャッタースピードで撮ってみましょう」となるところですが、実はどんな時でも好きなようにシャッタースピードを変えられるというわけではありません。
上でも述べましたが、シャッタースピードを変えるとカメラに取り込まれる光の量=「露出」が変わるため、写真の明るさが変わります。そのため、シャッタースピードによっては明るすぎる写真(露出オーバー)になってしまったり、逆に暗すぎる写真(露出アンダー)になってしまったりすることがあります。
シャッタースピードを変えたい、でも写真の明るさも適正に保ちたい。それを叶えるために、露出について少し理解を深めておきましょう。

写真の明るさ(露出)を決める3要素

写真の明るさ(露出)は、以下の3つの要素を組み合わせながら調整します。

1 絞り(F値)……取り込まれる光の量を調節
2 シャッタースピード ……光を取り込む時間を調節
3 ISO感度 ……光の感じやすさを調節

それぞれの要素と写真の明るさは、以下の図のような関係になります。

“3つの要素を組み合わせ撮る”というのは、たとえば絞りを開いて(F値を小さくして)撮りたいけれど写真が明るくなりすぎてしまう。そこでシャッタースピードを速くする、ISO感度を低くするなどして、カメラに取り込まれる光の量が少なくなるよう調整することで適正な明るさの写真を撮る、というふうに行います。

露出についての詳しい説明はこちら

ISO感度についての詳しい説明はこちら

4.撮影モードの選びかたと撮影のコツ

最後に、シャッタースピードを変更するのに便利な撮影モードについて、設定のポイントとあわせてご紹介します。

シャッター優先オートで撮る

[S シャッター優先オート]はシャッタースピードを自分で決めることができ、適正な明るさの写真が撮れるようにシャッタースピードに合わせてカメラが自動的に絞り値(F値)を決定してくれます。
このシャッタースピードで撮りたい、シャッタースピードを厳密にコントロールしたいという目的がある撮影のときには、このモードが便利です。

撮影モードを[S シャッター優先オート]に設定するには、撮影モードダイヤルロックボタンを押しながら撮影モードダイヤルを[S]に合わせます

メインコマンドダイヤルを回してシャッタースピードを変更します

絞り優先オートで撮影する

[A 絞り優先オート]は、絞り値(F値)を自分で決めることができ、適正な明るさの写真が撮れるように絞りに合わせてカメラが自動的にシャッタースピードを決定してくれます。設定するには同じく撮影モードダイヤルを[A]に合わせ、メインコマンドダイヤルを回して絞り値(F値)を変更します。
絞り(どれくらいピントを合わせるか、ボカしたいか)にこだわって撮影するときはもちろん、撮影状況に合わせて3つの要素をバランスよく組み合わせて撮るにときにも便利なモードです。スナップ、ポートレート、風景、テーブルフォトなど「ブレずに撮れればシャッタースピードは問わない」という撮影シチュエーションは意外とよくあります。シャッタースピードをカメラ任せにできるこちらのモードが、撮りやすくおすすめです。

シャッタースピードを変更するには

たとえば撮影してみたら手ブレしてしまった、という場合。シャッタースピードを速くするにはこのモードのまま、絞りを開く(F値を小さくする)か、またはISO感度を上げることでシャッタースピードを速くすることができます。

「絞り:f/5.6」「シャッタースピード:1/2.5秒」「ISO:100」で手持ち撮影しましたが、シャッタースピードが遅かったためブレて写ってしまいました。そこでシャッタースピードが速くなるよう設定を変えてみましょう

3本のろうそくの火すべてにピントを合わせたいので、これ以上絞りを開きたく(ボケさせたく)ありません。そこで、「ISO感度:2200」まで上げることで「シャッタースピード:1/50秒」を確保、ブレなく撮ることができました。このように、仕上げイメージに合わせながら絞り、シャッタースピード、ISO感度の設定をコントロールして撮影します

スローシャッターなどは、意識しないとなかなか撮る機会のない技法だと思います。シャッタースピードが変わるとどう写るのか、まずは動く被写体を撮ってみてその面白さを実感してみてください。
シャッタースピードは絞りやISO感度とともに、写真を撮る上で欠かせない基本の要素のひとつです。今回を機会にぜひシャッタースピードをマスターして、表現の幅をさらに広げていってくださいね。

ニコンイメージングプレミアム会員
ニコンイメージング会員