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Lesson10:露出

写真の仕上がりや印象を大きく左右する「写真の明るさ」。これをコントロールするのが「露出」です。
露出の知識を深めることは、絞りやシャッタースピードといった撮影の基本を理解することにもつながります。撮影モードを使ったカメラまかせの撮影は失敗も少なく楽しいものですが、「もっと自分好みに写真を仕上げてみたい」、「さらに自由な画作りが楽しめるマニュアル撮影にも挑戦してみたい」と思ったら、ぜひ知っておきましょう。

撮影監修:斎藤勝則

1.露出と適正露出

露出とは

写真を撮るとき、カメラの「撮像素子(イメージセンサー)」に取り込まれる光の量のことを「露出」といいます。露出を調整することで、写真の明るさを変えることができます。

取り込む光の量を増やすことを「露出を上げる」といい、写真の仕上がりは明るくなります。光の量を減らすことを「露出を下げる」といい、写真の仕上がりは暗くなります。

標準露出と適正露出

多くのカメラには、写真の明るさが適正となるよう露出を自動でコントロールする「自動露出(AE)」機能が搭載されているため、意識しなくても自然な明るさの写真を撮影することができます。この機能を使って得られた露出のことを「標準露出」といいます。
一方で、撮影者が「これくらいの明るさで撮りたい」と思う露出のことを「適正露出」といいます。注意したいのは、標準露出=適正露出ではないということです。標準露出が適正露出になることもありますが、被写体によっては明るさを調整しなければ適当な明るさにはならない場合もあります。また、撮影者の好みに応じてあえて暗めに、明るめに撮りたいという場合もあります。
カメラが決める露出が標準露出、適正露出を決めるのは撮影者ということです。

2.露出補正

カメラが自動で算出した標準露出では明るすぎたり暗すぎたり、または自分のイメージに合わせて写真の明るさを変えたい場合など、適正露出になるよう露出を変えることを「露出補正」といいます。
標準露出から明るく補正することを「プラス補正」、暗く補正することを「マイナス補正」といいます。

では、どのようなシチュエーションのときに露出補正が必要になるのか、露出補正でどのような効果が出せるのかを見ていきましょう。

露出オーバー

カメラの自動露出(AE)機能は、撮影画面の中に極端に明るい部分や暗い部分があったり、被写体の大部分が白かったり黒かったり、また逆光など太陽光線が一定でない時などはそれに影響されうまく露出が測れない場合があります。

たとえば、写真の明るい部分が真っ白に写っていたり(白飛び)、写真全体が薄くコントラストが低くなったりすることがあります。これを「露出オーバー」といいます。露出オーバーになった場合は、マイナス補正を行いましょう。

標準露出
晴天時、強い太陽光が当たり空や船の一部が白飛びしています

マイナス補正後
露出をマイナス補正することで白飛びが抑えられ、空や船の質感が出るだけでなく色にも深みが出ました

標準露出
色の濃いものや暗い被写体が撮影画面の多くを占めていると「暗すぎるから明るくしよう」とカメラが判断し、明るめの写真になってしまうことがあります

マイナス補正後
見た目の印象に近づき、白飛びしていた看板部分なども補正されました。暗い部分はしっかり暗く、画面全体が引き締まった印象になりました

露出アンダー

写真全体が暗かったり、影や黒色の部分の細かい描写がつぶれて見えなくなってしまってしまう(黒つぶれ)ことがあります。これを「露出アンダー」といいます。露出アンダーになった場合は、プラス補正を行いましょう。

標準露出
色の淡いものや白い被写体が撮影画面の多くを占めていると「明るすぎるから暗くしよう」とカメラが判断し、暗い写真になってしまうことがあります

プラス補正後
全体に暗いトーンだった写真が、プラス補正により明るくなりました。白いアジサイの色が正しく白く表現できています

標準露出
明るい部分と暗い部分が混在する逆光は、自動露出が難しいシチュエーションです。この場合、空の明るさに引っ張られ「明るすぎる」と判断し全体が暗く写ってしまいました

プラス補正後
空の雲の部分が白くなりすぎないよう気をつけながらプラス補正。全体に色もはっきりとし、黒つぶれしていた木の部分もディテールがわかるようになりました

マイナス補正で落ち着いた印象に

標準露出からあえてマイナスに補正することで色を濃くしたり深みを出したり、全体的に重厚感ある引き締まった印象にさせたりなどの効果を得ることができます。

夕日の赤みを強調する

夕日を撮影する際にはあえてマイナス補正して、全体の色味を濃く表現してみましょう。空の色は暗くなり夕日部分が赤く強調され、また画面全体が引き締まり落ち着いた印象を与えます。

標準露出

マイナス補正後

明るい部分を引き立てる

画面内に明るい部分と暗い部分があった場合、どちらに露出を合わせるかで仕上がりの印象は大きく変わります。この写真の場合、マイナス補正することで明るい部分に視線を集中させ、影になった暗い道の奥にすっとスポットライトが当たっているような印象を抱かせます。

標準露出

マイナス補正後

プラス補正でさわやかな印象に

標準露出からあえてプラス補正することで、明るく爽やかな印象、はかなげな印象、光を感じるクリアな印象にするなどの効果を得ることができます。

光を感じる1枚に仕上げる

逆光で撮影したチューリップ。すこし暗い印象だったところからプラス補正を行いました。チューリップの白の部分はきちんと白く写り、やわらかな春の光も感じます。透明感ある軽やかな印象の写真になりました

標準露出

プラス補正後

色味をクリアに見せる

淡い色合いの写真は色味がにごって見えることがあるため、見た目よりも明るく写すことでクリアな印象の写真に仕上げることができます。ティーカップ本来の白色、柄部分の色味もきちんと伝わる1枚です。

標準露出

プラス補正後

3.露出を決める3つの要素

露出は、撮像素子(イメージセンサー)に取り込む光の量を増やしたり減らしたりして調整を行っています。その光の量を決めている要素がこちらの3つです。

  1. 絞り 光の量を調節します(絞ると光は少なく、開くと多く取り込まれる)
  2. シャッタースピード 光を取り込む時間を調節します(早いと光は少なく、遅いと多く取り込まれる)
  3. ISO感度 撮像素子の光の感じやすさを調節します(低いと光を感じにくく、高いと感じやすくなる)

露出はこれらの要素を組み合わせて調節するもの、と覚えておきましょう。

以下の図をご覧ください。これは撮像素子(イメージセンサー)に当たる光の量をコップにたまる水にたとえたものです。

蛇口の開き具合が絞りを、蛇口から水を出す時間がシャッタースピードを、コップの大きさがISO感度を表しています。コップの大小に関係なく、8割水がたまった状態を適量=適正な明るさの写真が撮れる光の量とします。

たとえば水の出る量が多ければ短い時間でもコップに適量の水をためることができますが、少ない場合は長い時間をかけなければ水はたまりません。また、たとえばコップの大きさが大きければ水をためるのに時間がかかりますが、小さければ出す水が少なくても短い時間でためることができます。

露出の仕組みを理解するのは慣れるまでは難しいかもしれませんが、3つの要素の関係性をこの図のように覚えておくとよいでしょう。

3つの要素の組み合わせかた

ここに3枚の写真(A、B、C)があります。ISO感度を100に設定し明るさ(露出)を変えずに、絞り優先モードで絞り値を変えながら撮影しています。

A
絞り値:f/2.8
シャッタースピード:1/5000秒
ISO:100

B
絞り値:f/8
シャッタースピード:1/640秒
ISO:100

C
絞り値:f/22
シャッタースピード:1/80秒
ISO:100

3つの要素を比較してみると、絞り値に合わせてシャッタースピードが変化していますね。同じ明るさの写真を撮る場合でも、要素の組み合わせはさまざまだということがわかります。
一方で、3つの要素の数値が変わることで撮れた写真の印象が違ってくることがわかります。大きく違うのは背景のボケかたです。絞りが開放になるほど背景が大きくボケているのがわかります。また絞りを絞るほどシャッタースピードも遅くなっており、これ以上絞ると三脚を使う必要があるかもしれません。

このように同じ明るさの写真でも、絞り、シャッタースピード、ISO感度の設定値によって写真の仕上がりや撮影できるシチュエーションは変化します。「絞りを開いて背景を大きくボケさせたい」、「動いている被写体を止めて写したいのでシャッタースピードを速くしたい」、「暗い場所だけど手持ちで撮りたいので、ISO感度を上げてシャッタースピードを上げたい」など、撮影目的に応じて組み合わせかたを変えればよいのです。

なお、撮影モードを使い分けることで撮影者が優先したい要素(たとえば「絞りを開いて背景を大きくボケさせたい」、であれば“絞り”) 以外はカメラに設定を任せて撮影することができるため、より簡単に撮影できます。参考にしてみてください。

Lesson2:シーンに合わせて撮影モードを選ぶ

露出の仕組みを理解しようとすると少し難しく感じるかもしれませんが、そこは気にせず、まずは撮影モードを使って露出補正で自分のイメージ通りの明るさで撮影することからチャレンジしてみてはいかがでしょうか? 自分好みの画作りの楽しさを、ぜひ実感してみてくださいね。

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