普段の生活の中ではそれほど気にすることがないかもしれませんが、写真を撮るうえで光はとても重要です。なぜなら、光の状態が写真の仕上がりに大きく影響を与えるからです。
今回は、「順光」や「逆光」などの基本的な光の知識から撮影テクニックまで、写真を撮るうえでいつも意識しておきたい“光”について学んでいきましょう。
撮影監修:斎藤勝則
向き、角度、強さ、そのほか撮影場所の状況が組み合わさって光の状態は変化します。まずはそれぞれ、どのような写りかたをするのか見ていきましょう。
光の方向にはどんなバリエーションがあるのでしょう。被写体とカメラ、そして光の方向の関係性を表した図で確認してみましょう。
撮影者側から被写体に当たる光。被写体をくっきり鮮やかに表現できます。全体的に光が当たるため凹凸や奥行きは出にくくなります。
被写体の左右側面から当たる光。真横からの光をサイド光、斜め前からの光を斜光と呼び分ける場合もあります。被写体の凹凸に合わせて明るい部分と陰になる部分ができ、立体的な写真になります。
撮影者の反対側から被写体に当たる光。斜め後ろから当たる光を半逆光と呼ぶ場合もあります。背後から光が当たるため被写体の前面は暗くなりますが輪郭が際立ちます。被写体自体が暗くなりすぎる場合は、露出補正やフラッシュ、レフ版などで明るさを調整しながら撮影します。
光は方向だけでなく角度も意識する必要があります。こちらの図をご覧ください。
被写体の真上から当たる光。被写体全体に光があたり影も短くなるため、より明るい印象の作品になります。平面的な被写体は特に凹凸や奥行きが出にくくなります。
被写体に横、斜めから当たる光。立体感ある作品に仕上がり、また光の角度が低いほど影が長くなるため影を活かした撮影をしたりすることができます。
屋外では太陽の動きにつれて刻々と光の角度は変化しますし、季節によっても太陽の高さは変わります。屋内でも天井の照明・窓からの自然光・床に置いたライトなど光が当たる角度はさまざまです。
屋外であれば、太陽の高さに合わせた時間を選んで撮影する、室内であればライトを使って光の角度を変えてみるなど撮りたい作品にあわせて撮影計画をたててみるといいでしょう。
光の強弱も作品に影響を与えます。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
日中の晴天時や明るいライトなどは強く、硬い光になります。彩度とコントラストが高くなり、明るくはっきりとした色合いの写真になります。白飛びや逆に影の部分が濃く出て黒くつぶれてしまう場合は、カメラの設定などで調整しながら撮影するとよいでしょう。
曇りの日やレースのカーテンを通した窓などは弱く、やわらかい光になります。彩度・コントラストともに低くなり、ふんわり淡い印象の写真になります。意図せず締まりのない“ねむい”写真になった場合は、カメラの設定などで調整しながら撮影するとよいでしょう。
光の強弱は、屋外であれば天気が大きく左右します。雲ひとつかかっても光の状態は変化しますし、室内でも光の強さをコントロールできないケースもあると思います。その時の光を活かしながら撮影したり、露出補正やピクチャーコントロールなどカメラの設定で仕上がりを調整したりして画作りを行うとよいでしょう。
光には太陽光だけでなく、電球、蛍光灯など、色温度(色味)の違う光源がいくつか存在します。
光源と色温度の詳細についてはこちら(Lesson3:ホワイトバランスを使いこなす)
「ミックス光」とは、撮影場所に色温度の違う2種類以上の光源が存在する状態のことを差します。たとえば、日中のカフェの店内。窓から太陽光が差し、店内の天井にはライト、テーブルに間接照明が置いてあるといったシチュエーションです。
どこからどのような光が被写体に当たり写りにどう影響するのか、ミックス光の場合は複数の光を読み解く必要があります。とはえいそれほど難しく考える必要はなく、撮影しながら気になる光があればその影響を抑える手立てを取ったりカメラの設定を変えてみたり、また色味が気になる場合はカメラのホワイトバランスを変えてみたりするとよいでしょう。
イメージ通りに撮影するためには、光の特長を作品に活かしたり、写したい被写体によって光をどう取り入れるのか考えたりすることが大切です。ここからは具体的に、光を意識した撮影例とそのポイントをみていきましょう。
晴天時、順光での撮影は強い光が差し、色鮮やかでメリハリのある華やかな印象の写真を撮ることができます。風景写真やカラフルな被写体の撮影によく使われる光です。メインの被写体だけでなく遠くの風景、背景までしっかりと写すことができます。
曇りといっても薄曇りなのか、厚い曇が出ているかで仕上がりの印象は変わります。ですがいずれも晴天に比べ光がやわらかくなり、落ち着いた雰囲気の仕上がりになります。
弱いながら太陽光が感じられる薄曇りの場合は、光がきれいに回るのでやわらかさの中に立体感も出て色彩も豊かに写すことができます。雲が多く出ているときは暗くなりがちなので、露出をプラス補正して明るさを調整する必要があります。また、コントラストや彩度が低くなるので、ピクチャーコントロールで自分好みに写真を仕上げてみてください。
サイド光は被写体の形を明暗で再現してくれるため、立体感を出したいとき、奥行きを出したいときなどにおすすめの光です。晴天時の西日や明るいライトなど強い光の場合は、ハイライト部分が明るくなりすぎないようマイナス補正しながら撮影することで色もしっかり出すことができます。ただし、ポートレート撮影など被写体によっては影の出かたが作品に悪影響となる場合があります。被写体に変な影が落ちていないか、また光の方向により被写体に撮影者の影がかかってしまうこともあるため、意識して構図を確認しましょう。
被写体が黒くつぶれがちな逆光ですが、あえてその効果を利用してドラマチックでかっこいい印象の写真に仕上げてみましょう。画面上に暗い部分が多くなるとカメラは自動で明るく写してしまうため、撮影状況に応じて露出をマイナス補正しながら撮影します。
人物をシルエット気味に写せば、手前に伸びる影と一緒にストーリーを感じさせるような1枚になります。また朝日や夕日のタイミングでは影も長く伸びよりドラマチックになりますので、狙ってみてはいかがでしょうか。
ガラスや薄い素材など光を通す被写体に強めの光を逆光で当てて撮影。光を透過させることで鮮やかさが増したり透明感が出たり、一味違った印象の写真を撮ることができます。新緑や紅葉は透過光で撮影すると葉の色が濃くなり燃えるような赤、みずみずしい緑などが表現できるのでおすすめです。飲み物のボトルやグラスも光を通すことで透明感のある独特の雰囲気に写ります。
ポートレート撮影では顔を明るく写そうと晴れた日の順光を選びがちですが、強く硬い光は鼻や顎の下に濃い影を作りコントラストの高い強い印象に写ります。逆光や曇りの日、レースカーテン越しの光などやわらかい光を選ぶことで影は薄く、肌色もふんわりとやわらかい雰囲気で写すことができおすすめです。ただし、逆光時は顔が暗く写ってしまいますので、露出をプラス補正したりレフ版を入れたり、日中シンクロを使って撮影するとよいでしょう。
食べ物をおいしそうに撮るためには、光をしっかり意識して撮影することが大切です。斜光・逆光ぎみで写すことにより料理の凹凸をきちんと描写、表面は光ってつややかに写ります。また色味がしっかり再現できるやわらかい光が適しており、直射日光や強いライトが当たる場所、フラッシュでの撮影は避けた方がよいでしょう。逆光ですので露出補正やレフ版などで暗く写った部分を調整することで、よりおいしそうに撮影することができます。
被写体にどんな光が当たっているかによって、写真の写りかたは大きく変わります。「こういうイメージに仕上げたいから、こんな光で撮ろう」「こう光が当たっているから、露出補正をしよう」というように、光を意識し活かしながら作品づくりを楽しんでくださいね。