撮影した写真を見て、「色の雰囲気が思っていたものと違う」と感じたことはありませんか? そんなときはホワイトバランスで写真の色味をコントロールしてみましょう。ホワイトバランスを使いこなして、より自分のイメージの色味の写真が表現できるようになれば、撮影はより楽しくなることでしょう。
撮影監修:斎藤勝則
雲ひとつない晴天の屋外、間接照明をつけた室内や今にも雨が降りそうな曇り空など、実にさまざまな「光」。人の目ではわかりづらいのですが、光はモノの色に影響をあたえています。カメラはその光の影響ごと写し取るために、自分の見た印象と異なる色味の写真になってしまうことがあるのです。撮影時の光の色合いを補正し、イメージに合わせて写す機能が「ホワイトバランス」です。
オレンジ色の電球が光源になっている室内におかれた骨董品を、ホワイトバランスを変えて撮影した写真です。同じ条件と被写体でも写真の色味や雰囲気が変わっていることがわかります。
今度は屋外で蛍光灯のついたビル群を撮影してみます。
ホワイトバランスには、よくある光源にあらかじめ合わせた設定が用意されています(※1)。代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
カメラが自動的にホワイトバランスを調整。多くの光源に対応できます。
自然光下での撮影に適したホワイトバランスに調整されます。
晴天の屋外での撮影に適しています。
曇り空の屋外での撮影に適しています。
晴天の日陰での撮影に適しています。
白熱電球下での撮影に適しています。
さまざまな蛍光灯での撮影に対応できるように蛍光灯の種類および高色温度の水銀灯を選択することができます。
いろいろあって迷ってしまいますが、使い方としては普段は[オート]にしておき、思い通りの色にならなかったり意図的に色味を変えたりしたいときに別の設定に変更するのが基本です。設定によってはさらに細かく種類が選べるものもありますので、いろいろ試してみましょう。
ところで、天気は同じ「晴れ」なのに[晴天]と[晴天日陰]があるのはなぜでしょうか?実は、同じ晴れでも撮影場所の条件によって光の色味は変化しているのです。
それぞれの「光」は「色温度」を持っており、これで光の持つ色味を知ることができます。「色温度」とは光源が持つ色味を数値化したもので「K(ケルビン)」という単位で表します。光と色温度の関係はこちらの図をご覧ください。
これを見ると「光」が持つ色温度はそれぞれに違うことがわかります。先ほどご紹介したホワイトバランスのメニュー、[晴天]と[晴天日陰]の謎もこれで解決したのではないでしょうか? 太陽光という同じ光源でも状況によって色温度は変化するので2種類用意されているということなんですね。
ホワイトバランスはこうした光源ごとの色温度による影響を打ち消す機能です。たとえば、約6000Kの青みがかった曇天時の光の色合いを白く写すためのホワイトバランス[曇天]は赤みを補い、逆に赤みがかった約3000Kの電球の光に対応するホワイトバランス[電球]は青みを補うような調整がされています。
ところで、カメラ側の設定にない「ろうそくの光」や8000Kの色温度などの撮影条件で白を白として写したい場合はどうしたらいいのでしょうか。ここで活躍するのが静止画撮影メニュー[ホワイトバランス]の[プリセットマニュアル]です。これは撮影者が被写体や光源を基準にホワイトバランスを合わせたり、記録媒体内の画像データと同じホワイトバランスで撮影したりできる機能で、より正確に色を合わせたいときなどに活用できます。このほかケルビンの数値を直接指定することができる[色温度設定]もあります。意図的に色味を調整したいときなどにも重宝する機能です。
ホワイトバランスは見た目通りの色味に調整するための機能ですが、意図的に使うことでその場の雰囲気や被写体の個性を強調するなど、よりイメージをふくらませた作品作りに活かすこともできます。
どのホワイトバランスを使うとどんな色味になるかは撮影条件にもよりますのでいろいろと試して自分好みの画作りを楽しんでみてください。まずは普段撮影するときにホワイトバランスを意識して撮ってみる、という習慣をつけてみましょう。天気による自然の光の違いや室内を照らす明かりのバリエーションなど、気づきも広がり撮影がさらに楽しくなることでしょう。
マジックアワーとは太陽が沈んだ直後から空が暗くなるまでの時間帯のことです。マジックアワーにホワイトバランスを変えて撮影すると、それぞれに印象の違う作品に仕上がるのでぜひ試してみてください。ここでは、ホワイトバランス[蛍光灯]から[白色蛍光灯][温白色蛍光灯][ナトリウム灯混合光][昼光色蛍光灯]で撮りくらべてみました。