ニコンが写真家のために創った、新しいコンセプトのソフトウエア。
ユーザー本位の操作性を持つ、新しい画像編集ソフトとして注目を集めたCapture NX。
今回Capture NX 2となり、従来のソフトでは非常に時間のかかった画像処理が一瞬で行えるなど、さらなる進化を遂げました。しかし「Capture NX 2のすばらしさは画像編集機能ばかりにあるのではない」と、フォトグラファー・三浦健司氏は語ります。
撮影からフィニッシングまで、PC上の作業のほとんどをCapture NX 2でこなし、同時に仕事のスピードも大幅にアップさせたという三浦氏。現在のデジタル環境にマッチしたCapture NX 2のさまざまな機能と、それを活用して効率化につなげるための具体的なノウハウを教えていただきました。
画期的な画像選択技術「Uポイント テクノロジー」。
まずはCapture NX 2とはどのようなソフトなのか、教えていただけますか?
ニコンではこのソフトに、「画像編集ソフト」というサブタイトルを付けているようです。確かに前のバージョンから導入された、直感的に使える独自の画像補正技術も磨きがかかり、画像編集の機能は強化されています。しかし実際に仕事で使ってみると、Capture NX 2は他の画像処理ソフトとは一線を画す、写真家の撮影イメージを具体的にする撮影支援シミュレーションソフトであることがわかるでしょう。
特にプロのニコンカメラユーザーの方には、ぜひ試してほしいソフトです。
独自の画像補正技術とのことですが、どういった点が特長なのでしょう?
特長として、「U Pointテクノロジー」を代表する[カラーコントロールポイント][選択コントロールポイント]の2つがあげられます。これは画像の特定部に補正をかける際、大変便利な機能です。
通常画像処理ソフトでは、まず補正したい部分を選択ツールで囲んだり特定色を指定してから、目的の整正・補正を行います。しかし単純な形ならまだしも、複雑な形態や肌などの微妙な階調部の選択には、パスを切ったりブラシで複雑な形のマスクを作らなければなりません。とても神経を使う作業で、労力も時間もかかります。
ところがCapture NX 2は、Nik Software が開発しニコンがCapture NXで搭載した「U Pointテクノロジー」の採用により、画像全体はもちろん、これまで手間のかかった部分的な色相、彩度、明度なども、こだわって調整することが容易になりました。
例えば下の写真。
1.夕暮れ時の風景ですが、夕焼空にならなかったため、湖面が赤や黄に染まりませんでした。
2. そこで[カラーコントロールポイント]ツールを選び、湖面でクリック。クリックした場所に[カラーコントロールポイント1]が設置され、初期設定ではサイズとBCSのスライダーが現れます。このスライダーを左右にスライドし長短させるだけで、効果の反映範囲や色の明るさ、鮮やかさ、色相などを自在にコントロールすることが可能です。さらにコントロールポイント下の三角マークをクリックし、表示されたRGBのスライダーを伸ばして色味を調整。自分のイメージをより具現化した色に変えることができます。
3. またこの[カラーコントロールポイント]は、複製することも可能です。[カラーコントロールポイント1]を右クリックして 複製し、[カラーコントロールポイント2]を作ります。これを画面右下の湖面に移動。Rのスライダーを伸ばして赤みを増やします。より印象的な夕暮れ時の風景写真になりました。
ご覧いただいてわかるように、[カラーコントロールポイント]を置いていない白鳥には湖面ほど赤みが増していません。カラーコントロールポイントは、ポイントを置いた場所の色情報を自動分析し、近似する色以外にはあまり効果がかからない仕組みになっています。そのため他の画像処理ソフトのように、選択した部分としない部分との境界が不自然に分かれることもありません。あくまで自然な見え方で補正することが可能です。
仕事のスピードを上げるための各種機能。
なるほど、従来の画像処理ソフトと違い、直感的かつ自然な補正が行えるということですね。
ところで「写真家の撮影イメージを具体的にする撮影支援シミュレーションソフト」とはどういったことでしょうか?
現在、他のソフトで作業をされている方は、画像の取り込み、管理・整理・分類、画像処理・調整・補正、後処理といったそれぞれの作業を、複数のソフトを使って行っているのではないでしょうか。
しかし、それでは個々のソフト間のデータの受け渡しに手間がかかります。またソフトごとに使い方を覚えたりバージョンアップを行ったり、撮影とは全く関係のない事に無駄な時間や労力を費やさねばなりません。
その点Capture NX 2の機能は、ワイヤレストランスミッターWT-4を使用して無線LANによる撮影画像の転送から取り込み、管理、補正および現像といった、写真の撮影にまつわる一連の工程全てをカバーできます。
実際私は、定番の画像処理ソフトなどは使わず、ほとんどCapture NX 2で仕事を行っています。またそれにより作業効率も大幅にアップしました。
どのような点が効率化に繋がったのでしょう?
まずなんといっても、撮影を進めながらWT-4を使用し無線LANで画像をPCに取り込むことができる点です。
さらにPC上での撮影画像の確認から使用画像の決定まで、スピーディかつシームレスに行えるのもいいですね。
作業中のソフトの切り替えなど、微々たる手間のように思われるかもしれません。しかしこれが意外と、仕事のスムーズな進行の妨げになっているのです。Capture NX 2を使ったら、おそらく複数のソフトによる作業には戻れないでしょう。これは、他社のソフトでリモート撮影しているフォトグラファーにとって公然の事実です。
具体的にどのような流れで撮影を行っているのでしょうか?
撮影に出かけるときは、ノートPCとワイヤレストランスミッターWT-4、さらにカラーキャリブレーションを行った19インチ液晶モニタなども持って行き、どこでも取り込み、写真の確認、補正などができる環境を構築しています。
撮影現場では、まず14bitRAWで撮影した画像をパソコンに転送し、「ピクチャーコントロール」や「ホワイトバランス」をシミュレート。決定値をカメラに設定します。
実際の撮影画像はJPEGとRAWで記録。転送スピードの速いJPEGのSだけをPCに転送し、RAWはカメラに保存するようにします。このシステムでは、カメラの背面液晶で撮影画像のヒストグラムやブリンキングを確認しながら撮影が進められるというメリットもあります。
これなら、ほとんどリアルタイムに確認ができますね。
Capture NX 2であれば、クライアントやデザイナーなどが同席の場合、撮影内容の確認だけでなく、気に入った写真には直接0~9までの[ラベル]や[レーティング]を付けてもらうことも可能です。つまりそのように仕事を進めると、撮影が終わった時点である程度使用する画像の選択も完了していることになります。
撮影とチェック作業を同時進行させることで、無駄な撮影もなくなり、目的に沿ったカットが多数を占めるようになります。撮影後に画像を一から選択する無駄な時間も激減しました。
ところでこの[ラベル]情報は、他のソフトでも有効なのですか?
NX2になって、 [ラベル]情報は画像そのものに記録されるようになりました。ですので、他社のソフトでも確認が可能です。
例えば選択したJPEG画像とその前後のカットを、撮影後そのままデザイナーなどにフラッシュメモリやCDに入れてお渡しすることもあります。そのような場合、社に戻って[ラベル]情報をもとに再チェックをしてもらい、最終的に必要だと連絡を受けた画像のみを後日TIFFなどにして郵送しています。
以前は、「撮影したカットを全部ほしい。」と言われることもありました。そのために実際には使わない画像まで補正をしていたのです。でも今ではその場で絞り込んでくれるので、余計な補正作業をする必要がありません。
一般的に「画像処理ソフト」というと派手な編集機能に目がいきがちですが、無線LAN対応や[ラベル][レーティング]といった機能こそ、実務には必要なのかもしれませんね。
そうです。他の方々も、こういった機能を仕事に取り入れると良いと思います。
ところでこの無線LANシステム、例えばモデルの撮影の時にも大変喜ばれています。制作担当者はもちろん、モデルも自分がどのように写っているか即座に見られるので、ポーズや表情をすぐに改善できます。
今や無線LANの便利さは、クライアントからモデルまで知っています。このシステムを使っていないフォトグラファーには撮影させないというタレントもいるほど、当たり前になってきているのです。
このような点においても、画像編集ソフトでありながら無線LANによる画像転送まで対応しているCapture NX 2は、現在のデジタル環境にフィットしたソフトであるといえます。