Nikon Imaging
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vol.2 D700のポテンシャル

3.D700にこれから触れる会員の方々へ

ニコンへの提言と、今後への期待。

D700のファインダー
D3のファインダー

良いことずくめのようですが、検討の余地のある点などはありますか?

ご存じだと思いますが、ファインダーの視野率が95%だという点はやはり不満が残ります。構図をきちんと決めて撮りたいときは、100%で見たいですよね。
ライブビューであれば100%で確認できますから、三脚を立てて撮影という方法もありますが…。
でもボディをコンパクトかつバランスを良くするために、ガラスペンタプリズムの大きさを調整した結果であって、これはいたしかたない。むしろD3のハイスペックに機動性を持たせたという点を評価すべきなのかもしれませんね。

鹿野宏氏

1200万という画素数についてはいかがでしょう?

僕が仕事に使うには1200万画素で十分です。カメラの用途にもよるのでしょうが、画素数は増やせば良いというものではありません。確かに最近ではもう少し上の画素数のカメラも出ています。もちろん設計段階でピクセルピッチを小さくして画素数を増やすという選択肢もあったのでしょうが、その分画質にしわ寄せがきます。D700ではむしろ画質を向上させる道を選んだのではないでしょうか。

大きな作品を作るわけでないのなら、十分ということですね。

実のところ、D3でもほとんどクロップモードしか使っていません。僕らがやっているコマーシャルの仕事は、雑誌の表紙やポスターのような大きな写真ばかりではありません。印刷サイズの小さな写真に対して必要以上の画素数で撮影すると、かえって後処理の手間もかかりますし、後処理をすれば当然画質も劣化します。
もともとニコンとしては、クロップモードをスポーツシーンなど向けに、速いシャッターが切れることをポイントとして用意したようですが、コマーシャルの仕事においてもこのクロップモードは実用的なのです。
それに普通の人が使うにしても、写真をプリントする際にキャビネ以上に引き延ばすことはほとんどないですよね。つまり、本来は600万画素もあれば十分なのです。

なるほど。D700もクロップモードで使われるケースが多いのですね。

そうですね。ただ、このクロップモードについても、残念な点があります。D700ではクロップモードの比率に4×5がありません。この比率、商品撮影を行うのにちょうど良いバランスなのです。もちろん後からトリミングやリサイズを行うこともできますが当然劣化するわけで、4×5のクロップモードで撮影できれば写真の質を落とさずにデザイナーに渡すことができます。
それからコンパクトデジカメユーザーから移行してきたアマチュアの方にしても、従来の一眼レフの写真の比率よりもなじみがあるのではないでしょうか。

デジタル一眼レフ初心者からプロまで、全てのユーザーに勧められる。

最後に、D700はどのような位置づけのカメラだと感じましたか?

非常にターゲットの幅が広いカメラではないでしょうか。
単にD3とD300の間というわけではなく、どちらのユーザーも魅力を感じるはずです。
ワイドフォーマットで撮りたいがD3にはちょっと手が届かないアマチュアフォトグラファーの方や、D3の予備機を探しているプロのD3ユーザーの方などにも最適です。でも僕は使っているうちに、ハンドリングの良さから、D3よりもD700が主力機になるのではと感じています。

そしてこれからデジタル一眼レフを使おうという人が初めての一台としてD700を使うならば、その人はとても幸福な方だと思います。
なぜなら、これまで銀塩のカメラでは写すことができなかったシーンも、撮れてしまうのですから。

例えば、夕暮れの風景のように、以前からカメラをお使いの方では躊躇してしまうような暗いシーンでも平気で手持ちのままシャッターを押してしまう、そんな新米一眼レフユーザーの方が、むしろ自由な写真が撮れるかもしれませんね。
もちろん長年のカメラユーザーも十分に満足させる、しっかりとした設計であることはいうまでもありません。

発売からまだ日も浅く、僕自身まだ十二分に使いこなしているとは言えませんが、これからD700がどれだけ仕事の幅を広げてくれるか、それが楽しみです。

鹿野宏氏
鹿野宏氏

インタビューを終えて・・・

プロアマ問わず、どのようなニーズにも一台で対応できる幅の広さがD700の魅力、と鹿野氏。
特にプロフォトグラファーにおいては、従来以上にフレキシビリティが求められている昨今。多岐にわたる仕事の中、常に理想の状態で撮影できるとは限りません。「D3よりもD700を主力機として使いそうな気がする」という鹿野氏の言葉からも、D700は「実戦仕様のD3」と感じた、今回のインタビューでした。

プロフィール

鹿野宏氏

鹿野 宏(Hiroshi Shikano)

1956年
福島県四倉に生まれ。中学、高校時代は青森県八戸市で過ごす。高校時代は理数科に籍を置き、電子の世界に興味を示していたが、卒業間際に一転して油絵に進路を定める。以降7年間絵画の世界に暮す。武蔵野美術大学専科実技専修課を卒業後、写真館に勤務。それまで趣味であった写真の世界へ足を踏み入れる。写真館退職後オーストラリアへ1年間の撮影旅行。

1983年
帰国後杉並区永福町にてフリーランスとして開業。

1991年
有限会社ハンディ設立、練馬にスタジオを移転。ジュエリー、アクセサリー、衣料などの商品写真を初め、人物、料理、風景、建築写真などを手がける。

1996年
後半に電塾創立メンバーである早川氏、阿部氏、金田氏らと出会い、デジタルフォトに興味を示し始める。Power Mac 9500、Pictrography4000を導入。

1997年
Agfa StudioCAM (当時としては画期的な1600万画素のスキャナータイプ)を導入し、二十数年を経て、電子の世界に舞い戻り、デジタル処理を開始。

1998年
デジタルカメラ学習塾に塾生として参加。
ワンショットタイプデジタルカメラDCS560を導入。

1999年
ハイエンドデジタルカメラ、メガビジョンS3、ニコンD1を導入し、仕事におけるデジタル化率が90%を越す。

2002年
スタジオを千代田区岩本町に移転。この時点ですでにデジタル化率は100%。

一眼レフデジタルカメラ郡はNikon D1 に始まり次々と導入。ほとんどのワンショットタイプ一眼レフデジタルカメラを検証。実際に使用した機材はNikon D1、Canon EOS 30D、Nikon D1X、FUJIFILM Fine Pix S3 Pro、Nikon D70、Nikon D200、Canon EOS-1Dsなど。現在の主力はFUJIFILM Fine Pix S5 Pro、Nikon D3。現在もっともデジタルカメラを仕事で活用しているフォトグラファーの一人である。
デジタルフォトの普及、啓蒙のための執筆、セミナー多数。

著書:「面白フォト加工」グラフィック社「Photoshop CS新機能ガイダンス」インクナブラ「新・デジタルフォト講座 基礎編」株式会社Lab 「RGBワークフローガイド2007」(共著) APA 「図解 カラーマネージメント実践ルールブック」ワークスコーポレーション(共著)最新刊「デジタルフォト講座 BASIC」株式会社Lab
その他、コマーシャルフォト、プロフェッショナルDTPなどに寄稿。
セミナー:写真学会主宰カラーマネージメント講座、学校アルバム協会主催デジタルフォトセミナー、電塾セミナー、自身でも毎月「新・優しい電塾Lab編」を開催している。

電塾運営委員。

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