第68回ニッコールフォトコンテスト

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第3部 ネイチャー

ニッコール大賞・U-31賞
推選
特選
入選
※ 第3部:ネイチャー(入選)は受賞者本人からご辞退の申し入れがあり19点とさせていただきます。
応募点数 5,923点
講評 三好 和義

講評 三好 和義

今だから、なおさら心癒される自然写真

 自然の中に身を置いていると心が癒されるものです。このコロナ禍で近頃は部屋にいることが多く、自然の風が恋しくなりました。そういった中で自然を写した作品に触れると、気持ちがワクワクしてきます。自然の中に身を置けるありがたさを強く感じます。
 ニッコール大賞、及びU-31賞に選ばれた峯田翔平さんの「神環」は、西日本最高峰の石鎚山の山頂で出会った神々しい風景を感動的にとらえています。私はこんなシーンに出会ったことがありません。太陽の周りに現れた日輪、流れる雲の動き、凍りつく足元の樹木。ハーフNDと濃いNDフィルターを合わせて明るさのバランスを整え、ISO感度32でのスローシャッターなど、工夫のうえ完璧な1枚に仕上げています。こんなシーンに出会うことは、一生に一度かもしれません。ミラーレスカメラのメリットを最大限に生かした、緊張感のある作品です。
 推選は田畑寿彦さんの「暮れなずむ頃」。キツネに愛情を注いで撮影された作品です。アニメーション映画のような物語性があります。暗い条件の中、ISO感度を上げ素早く切り取った3枚組には、リズム感があり、奥行きも感じられます。また、スクエアの画面が安定感を生んでいます。
 「エゾに暮らす」で特選に入賞した佐藤圭さんは、昨年も北海道で撮った「エゾモモンガの生活」で受賞しています。今年はエゾナキウサギ、エゾオコジョ、エゾライチョウ、エゾクロテンの4枚組。こんなにも小さな動物が動き回るシーンを撮るのは難しいと思われますが、ニコンD5を使い、毛並みの1本1本までシャープにとらえています。佐藤さんは動物たちと心を通わせることができるようです。
 同じく特選、高橋海斗さんの「つながりゆくもの」。シャチ、クマ、キツネ、ワシと被写体はさまざまでオーソドックスな撮り方ですが、いい写真を撮る人だなと直感しました。テクニックだけでなく、暖かく優しい眼差しがいいですね。200−500ミリのレンズ1本で、これだけのものを撮っているというところにも驚きます。まだ20歳、将来が楽しみです。
 椿茂正さんの「黎明逆光愈々離水コハクチョウ」は、美しく透明感のあるハクチョウの飛翔シーン。NDフィルターを使い、シャッタースピードをコントロールしてとらえた一瞬が、格調高く仕上げられています。完成度の高い作品です。鏡になった水面に映り込んだ影もうっすらと写り、シンプルな構成ながらも驚きと感動が伝わってきました。
 ネイチャー部門には自然風景、動物、植物、水中、マクロなど、幅広い世界が含まれます。その中でも例年ニッコールフォトコンテストは自然風景を広くとらえた入賞作品が少ない傾向にありますが、今年度は、雑誌『風景写真』の編集長を長らく務められた石川薫さんをゲスト審査員にお迎えしたことで、自然風景が多く入賞するかも、と期待され方もいたかもしれません。しかし、7人の審査員揃って決めた今年度も、大きな変化は見られませんでした。来年以降の応募作品に期待されるところでもあります。
 最終的に残る作品は、テクニックだけではなく、撮影者の人柄が現れているような写真です。暖かい眼差しで、自然を通して自分を表現できるといいですね。