第68回ニッコールフォトコンテスト

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第2部 カラー

ニッコール大賞
推選
特選
入選
応募点数 14,690点
講評 佐藤 倫子

講評 佐藤 倫子

写真を通して身近なものの大切さを実感

 2020年は誰もが記憶に残る年となったのではないでしょうか。まったく予想していないことが、突然、世界中で起こりました。これほど真剣に生きることを考える機会は今までになかったように思います。
「ステイホーム」で撮影に行くこともできず、現在もさまざまな規制があって自由に写真を楽しめずにいます。その反面、身近なものや出来事を被写体として敏感に意識したり、写真で表現することへより貪欲な自分がいることにも気づかされます。同じような思いをされた方も多いのではないでしょうか。
 このような時世でのニッコールフォトコンテストにどのような作品が集まるのだろうと案じておりましたが、今年もバリエーション豊かな作品と出会うことができました。
 ニッコール大賞に選ばれた後藤安男さんの「日日の記2020.4‒6」は、まさにコロナ禍を表現している作品です。作者の思いはもちろん、見る側にとっても、緊急事態宣言による先の見えない不安や恐怖、困惑が共感できるのではないでしょうか。4枚組の写真をじっくり1枚1枚見入ってしまいます。作品の色合いや雰囲気から感じる静けさは、コロナ禍を体験した全ての人に伝わります。また、人物写真が1枚入ることでよりリアルに、あの時期が思い起こされます。いつもと同じ光景であるはずが、時間の流れが止まったかのように見える。目に映るものを必死で撮っていた自分を思い出しました。
 推選は小川照夫さんの「結界」。眩しく日の当たるマンションの手前、影の中に整然と墓が並んでいる光景は、インパクトのあるシチュエーションです。現世と来世、昼と夜の世界が確かに共存しています。日の動きを感じながら、その結界を待って撮影していたのでしょうか。青のグラデーションを描く空、ディテールまでしっかりとらえた静かな墓地、建築写真のように真っ直ぐ写った建物。右下へ流れていく日の光が、印象的な一枚でした。
 特選には萩原由紀夫さんの「紙吹雪」が選ばれました。愛知県の拳母祭りは紙吹雪が舞う中、山車が練り歩く祭りですが、この作品はクライマックスより後のシーンをユニークな視点で撮影しています。シャッターチャンスを逃さずとらえ、背景の子どもたちの表情もいいアクセントになりました。黄色の紙吹雪が華やかで、目に留まります。
 同じく特選、上田禎亮さんの「只今営業中」は、50年以上前から続く自動車修理工場を撮影した組写真。被写体そのものだけでなく色づかいがインパクトを生み、力強い作品となっています。吉村俊祐さんの「虹」もまた、色の美しさと、そこに写る子どもの仕草のバランスが絶妙に表現されている作品でした。
 今年の第2部カラー部門は、「日本」を改めて認識させられる写真が多く集まっているように思います。地域の暮らし、祭り、伝統、そこで暮らす人びとを、しっかり作品に仕上げているのが印象的でした。このような時期ゆえに、改めて身近なものに目を向け、その大切さを実感することができたのかもしれません。
 どんな時代でも、写真を通して何かを伝えることを続けていきましょう。来年は皆さまにとってよい年であることを心から祈っています。