朝霧が葦野原を全面覆い尽くす遊水地、また一本の枯れ木の間から真横の朝日が差し込む初冬の頃、また季節が変わり野焼き後まだ煙が立ち残る殺風景な情景、また葦の芽が出始めた瑞々しい情景。
四季を通して季節を感じさせる渡良瀬遊水地。
この遊水地には、歴史的に大変な時期があったからこそこの美しい自然となったのだと想像する。
渡良瀬川と利根川に挟まる数部落が纏まった谷中村は度重なる洪水に見舞われ苦しい時期をおくっていた。更に追い討ちをかけるように足尾銅山からの鉱毒被害を受け村民は甚大な被害を受けた。
明治期、国会議員田中正造を中心に村民達は国会陳情や天皇に直訴し、やっと遊水地開拓が始まった。明治後期から大正にかけて谷中湖造成や河川改修が完了するとともに村民は堤外に移住させられ現在に至っている。
この大変な時期をカメラに収める事は出来ないが、美しい自然を通してその歴史に想いはせていただければと思う。
(立川 潔)
1946年 埼玉県生まれ 。
理系の大学を卒業し光学関係の仕事に従事。
2005年、写真活動を開始。 地元の写真グループに所属して、風景写真を撮っていたが現在はスナップを主に撮影している。
2009年、“フォーカスPCクラブ”を設立し、代表として活動開始。
月1回の定例会、年1回のクラブ展を開催し発表している。
2019年6月、川越美術館で二人展を開催。テーマは"世代の交代“