私が初めてこの地を訪れたのは2014年の春だった。海岸線を歩きながら、ポツリポツリと会う猫たちを写真に収めた。秋になり、精悍な顔つきになった猫たちを見て、これから来る長くて厳しい冬を、どのように生き抜いていくのだろう。好奇心より心配が先だった。
そして迎えた冬。氷点下が続く北国の港町。北海道の凍てつく大地の上、小さな体で自然と対峙する姿があった。その健気で逞しく、そして切実に生きる猫の姿に私はすっかり心を奪われ、冬が来る度に猫に会いに行く。
猫の世界へ足を踏み入れ、ファインダー越しにそっと覗くこの世界は、私に命の素晴らしさとともに、生きるとは何か。を問いかける。(土肥 美帆)
1971年 北海道生まれ
2014年より北海道、小樽で生きる猫たちの姿を撮り続けている。
2018年 「北に生きる猫」を出版(河出書房新書)
-主な賞歴-
2016年 JPS展 文部科学大臣賞
2017年 ニッコールフォトコンテスト 大賞(モノクロームの部)
2016、17年 滋賀県写真展覧会 芸術文化大賞