2019年3月26日(火) 〜 2019年4月15日(月) 日曜休館
2019年3月26日(火) 〜 2019年4月15日(月) 日曜休館
2019年5月 7日(火) 〜 2019年5月22日(水) 日曜休館
かつて昭和の日本映画を熱心に観ていた時期がある。雑誌の仕事で何度もご一緒した文芸・映画評論家川本三郎さんの影響が強かったのだが、やはり東京が舞台の映画が中心だった。主演女優や個性派男優の背景に映るありし日の「東京」に胸をときめかせたものだ。それこそが「ノスタルジー」なのだろうが、川本さんが、このノスタルジーについて、「決して後ろ向きの情感ではない」ときっぱり言い放ってくれた。さらにある雑誌に寄せたエッセイでは「昔とは、父母、祖父祖母が生きていた時代を思うこと」と川柳作家の一句から解釈を加えられている。そんなこともあり、また私も相応の歳になり、いまやすっかり開き直ってこのノスタルジーの虜になっている。
そろそろ「平成」も終わり。「昭和」はずっと遠い昔のことだとやがて隅に置かれてしまうようになるかもしれない。しかし、私たちが育まれてきたその時代、近過去はいとも簡単に忘却の彼方に押し込められてよいというものではないはずだ。むしろ「今」を様々な角度から照らす材料にあふれている。
東京の下町にこだわり続けてきた私が勝手に作りあげていく日本のとある場所、景色、ひと、幻の町。父や母が生きていた時代を緩やかに記す試み。そこには、絶景も名所もないが、ささやかな希望に満ちた「まちのひかり」がある。
遠くて近い昭和の町にようこそ!
(大西みつぐ)
1952年東京深川生まれ。東京綜合写真専門学校卒業。1970年代より東京下町や湾岸の人と風景、日本の懐かしい町を撮り続けている。
写真集・著書に「下町純情カメラ」、「wonderland」、「川の流れる町で」など。
1985年「河口の町」で第22回太陽賞。1993年「遠い夏」ほかにより第18回木村伊兵衛写真賞。江戸川区文化奨励賞。2017年日本写真協会賞作家賞。
2017年自主映画監督作品「小名木川物語」を公開。
現在、(公社)日本写真家協会会員、(公社)日本写真協会会員、大阪芸術大学客員教授、ニッコールクラブ顧問。