20年前、お下がりのニコンF4で初めて撮った写真が蓮の花でした。レンズを通して見た花托の輝く美しさは今でも鮮烈に覚えています。花の美しさは一瞬。春は散る桜の池、夏は煌めく太陽の池、秋は真っ赤に燃える紅葉の池、冬は氷や雪の池に様々な表情を見せてくれました。やがて取り憑かれる様に毎年蓮池に通ううちに枯れ行く蓮の姿の中に滅び往くものの最後の美しさを感じ、写真に表現したいと思うようになりました。また蓮池は命を育む子宮の様でもありました。しかし一方で壮絶な食物連鎖の現実に出会うこともありました。枯れた蓮自身もやがては池に沈み、全てを飲み込んだ池から再生するという自然の大きな営みに畏敬の念を感じます。
近年、琵琶湖から一つの在来蓮の群生池が忽然と消滅しました。これも自然の大きなサイクルに過ぎず大賀蓮の種が2000年以上前の遺跡から発掘された様に次の芽吹きまでの永い眠りに就いたのかも知れません。私の蓮池巡礼はまだ続きます。(溝口広子)
愛知県出身
2003年 ニッコールクラブ入会
2004年 ニッコールクラブキャッスル大阪支部入部
受賞歴
ニコンフォトコンテスト準推薦
ニコンフォトコンテスト特選
ニコンフォトコンテスト入選
JPS入選