解説:山野 泰照
D850に搭載されたサイレント撮影は、レリーズ音を発生させずに撮影できる、無振動で撮影できるだけでなく、ミラーやメカニカルシャッターの機構部品が動作しないため耐久性を気にせず撮影できるなどの特徴があります。ライブビューから撮影することが前提の機能で、さまざまな場面で有効に使えますので、目的に応じて使いこなしてください。
設定方法
静止画撮影メニューから設定
01. MENUボタンを押し、静止画撮影メニューの[サイレント撮影(静止画Lv)]を選択する
02. [する(モード1)]、[する(モード2)]のいずれかを選択する
静止画ライブビュー状態から設定
01. 静止画ライブビュー状態からボタンを押す
02. 画面右に現れるメニューの中から[サイレント撮影(静止画Lv)]を選択する
03.
[1]、[2]のいずれかを選択する
04. OKボタンを押す、または[決定]をタップする
モード1とモード2の違い
サイレント撮影には[モード1]と[モード2]があります。記録画素数だけでなく、高速連続撮影性能、ローリングシャッター歪、撮像範囲、画質モードにも違いがありますから、比較表を掲げておきます。
モード1 | モード2 | |
記録画素数 | 4575万画素 | 864万画素 |
高速連続撮影 | CH 約6コマ/秒 | CH 約30コマ/秒 (最大3秒) |
ローリングシャッター歪 | モード1>モード2 | |
AF/AE | 連続撮影時は最初のコマに固定 | |
その他 | ----- | 撮像範囲はDX、画像サイズ3600x2400、画質モードNORMAL★に固定 |
記録画素数として4575万画素が必要であればモード1を選択することになりますが、864万画素でも問題ない場合はモード2も選択肢に入ってきます。その他いくつか、被写体や画像の用途によって判断しなければならないことがありますので、以下に整理しておきます。
ローリングシャッター歪
サイレント撮影では原理的に、ローリングシャッター歪という、画面を横切るような動きをする被写体に対して記録される画像に歪が出てしまう現象が目立つことがあります。その程度は、モード2の方がモード1と比較して小さいため、画面上で動きのある被写体に対してはモード2の方が相対的に安心です。被写体によってはモード1でも問題ないことがありますし、またモード2でも気になることがあります。被写体の実際の動きのスピードではなく、画面上での被写体像の移動スピードに関係しているため簡単に表などで説明できませんので、一度試写して確認しておくことをおすすめします。
撮像範囲
モード2では撮像範囲がDXに限定されます。したがって、より望遠効果を得たい場合には便利ですが、撮像範囲としてFXが必要な場合はモード1を選択して下さい。
画質モード
モード2では画質モードがNORMAL★になります。RAWなど、他の画質モードに設定したい場合にはモード1を選択して下さい。
筆者は、舞台やコンサートのような、比較的動きが速くなくて、照明条件が厳しくコントラストや色の調整が必要と思われる場合は、RAWで撮影したいという理由でモード1を基本とし、スポーツなどの比較的動きが速い場合は、1秒間に30コマの連続撮影が可能ということと、ローリングシャッター歪をできるだけ抑制したいという理由でモード2を基本に考えていますが、あまり単純化できる話ではなくその都度考えて決めています。そういう背景から、みなさんご自身で目的と許容レベルという視点から一度試してみて判断されるのが良いでしょう。
徹底して音を出さないために
ライブビューのタイマーをOFFにする
サイレント撮影は、ライブビュー状態で使うことができる機能です。したがって、すでにライブビュー状態になっている場合にはそのままサイレント撮影が可能ですし、撮影後もライブビュー状態に戻りますからミラーやシャッターのメカニカルな動作はありません。コンサートの場面などで、カメラの動作音をできるだけ出したくない場合には大変便利な機能なのですが、念のために事前にやっておきたいことがひとつあります。それは、液晶モニターのパワーオフまでの時間を[制限なし]にしておくことです。
カメラは無駄な電力の消費を防ぐためにさまざまなタイマーが働いているのですが、サイレント撮影に関係する[ライブビュー表示]は、初期値として10分に設定されています。一連のサイレント撮影が10分以内に終了する場合は問題ないのですが、それよりも長い時間撮影を継続する可能性のある場合には不意にライブビューが終了してミラーダウンすることがないように、以下の手順で[制限なし]にしておくと安心です。そうすれば、撮影終了時に撮影者がLvボタンを押すまで、電池容量が
⼗分であればミラーが動いてしまうということはありません。
絞り動作を固定させる
また、サイレント撮影と言っても、カメラに耳を近づけて音を確認すると、プログラムオートやシャッター優先オートの時にはレリーズのたびに絞り動作音がしているのが分かることがあります。これらの音が問題になることはほとんどないと思いますが、もしそういう音すらなくしたい場合は、ライブビューを開始したらライブビュー中に絞りを変更する時にしか絞りの動作をしない絞り優先オートかマニュアルを選択すると良いでしよう。
場を乱さない工夫
光を出さない
サイレント撮影が期待される場面は、コンサート会場や厳かなイベントなど、場を乱してはならないシチュエーションが多いです。そういう場合には、音に対する配慮だけでなく、サイレント撮影では必須のライブビュー画面を見る画像モニターの表示さえも迷惑になるため、配慮することが必要になる場合があります。そのような時には市販のフードルーペが有効ですので、検討してみてはいかがでしょう。アイレベルで撮影できることも含めて、使いやすさが増すことがあります。
後編の「サイレント撮影2 風景撮影で振動を防ぐ」に続きます。