NIKON

WXで春の星空散歩。
美しい乙女座を眺めたい。

柳家 小ゑん

Yanagiya Koen

落語家。天文ファンの間では、星を題材にした「星空落語」で高い人気を誇る。趣味は双眼鏡や銀塩カメラのレストア、電気工作、鉄道模型、鳥見、ジャズなど多彩。

WXはニコン双眼鏡の大看板だ!

 私は、双眼鏡という物がとても好きだ。その昔、双眼鏡で初めて天の川を覗いたときは、まさにそれが無数の星の集合体というのがわかり衝撃を受けた。それから幾星霜、何故かニコンの20×120mm大型双眼鏡が我が家に鎮座している。
 今回、縁あって噂のニコンWX7×50、10×50を手にする機会をもらい、本能のままに寄席の合間を狙って星空を堪能してきた。これは凄い“芸”の双眼鏡だ。名人に値する星像、明るい、広い、分解能が良い、収差がない。
 初めて我が家(東京・品川)から覗いたとき、偶然M45が飛びこんできた。「えっ、すばるってこんなに良く見えたっけ!?」それは、明るくて針の先で突いたような星の輝きで、バックグラウンドの東京の夜空も暗く感じられた。奥多摩や秩父へ行って見たときにも同様の印象で、M42のガスが細部まで良く見え、プレセペ星団もくっきりと分解して美しい。これはコントラストが極めて良いからだろう。おうし座を眺めていたら誂えたようにウィルタネン彗星がいた。尾を引いているのがわかる!これでM13を見たらどのように見えるのか。想像するとワクワクする。

 7倍と10倍、ともにすばらしい星像だが、10倍は見掛視界76.4°と超広角で、星空を眺めていると自分が宇宙の一部になったような錯覚を覚える。一方、7倍は見掛視界66.6°だが実視界10.7°と広く、すばらしい宇宙画を鑑賞しているような気になる。落語家でたとえるなら、10倍はスケールが雄大でいつの間にかその世界に包まれてしまう私の師匠“柳家小さん”。7倍は描写がはっきりして誰が見ても心地の良い“古今亭志ん朝”と言ったところか?どちらも大看板の名人に相違ないが、私が好きなのは、やはり10倍。
 せっかくなので昼間に鳥見もしてみた。覗いた途端に木々や葉の緑、空の青さ、その色の美しさに驚いた。この双眼鏡で覗くと世の中が現実より美しく見える。コーティングの良さなのか、アッベ・ケーニッヒ型プリズムの威力なのか、EDレンズを3枚も使っているからなのか。世の中の女性も皆美人に見えるかも!?ニコンの技術力が光る“大看板”の双眼鏡だ。

写真:沼澤茂美

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