NIKON

都会の空での新たな双眼鏡の楽しみ方を教えてくれた

白尾 元理

Motomaro Shirao

写真家。天体写真をはじめ、ライフワークとして世界中の地形・地質・火山を研究・撮影。『月の地形観察ガイド』、『月のきほん』、『火山全景』(いずれも誠文堂新光社)、『地球全史』(岩波書店)、『双眼鏡で星空ウォッチング』(丸善)など、天文、地質、火山の分野で著書多数。

WXによる双眼鏡の新たな楽しみ方

 ニコンが創立100周年を迎える節目の年に発売した双眼鏡がWX。7倍と10倍モデルがあるが、私が選んだのは10倍モデル。10倍モデルの最大の魅力は実視界9.0°・見掛視界76.4°と超広視界で、他社の高級双眼鏡の10倍モデルの約2倍(面積比)の実視界があること。WXの接眼部が巨大なのは、眼鏡をかけたままで超広視界の最周辺部までシャープな像を結ばせるためだ。
 双眼鏡の良いところは、見たい対象をすぐに見ることができること。WXは重量が約2.5kgあるので、当初は三脚に固定して見ていたが、そうするとサッと見られる双眼鏡の自由さはなくなる。また接眼部が45°に傾斜していれば天体は見やすいが、それでは双眼鏡ではなく「双眼望遠鏡」と呼ぶほうが相応しいものになる。試行錯誤の結果、自分の身長まで伸ばせる3段伸縮式のカーボン三脚(重量1.3kg)に自作の5cm×25cmの支持板を固定し、その上に双眼鏡を載せ、接眼部を親指で支えて眺めることにした。

 見る仰角によって、三脚のエレベーターの高さを調節すれば、楽な姿勢で見ることができる。まずは手持ちでWXを見たい対象に向ける。対象をさらに詳しく見たい場合は三脚を取り出し、支持板の上にWXを載せて眺める。
 木星・土星・火星・天王星と月の接近、朝夕の水星・金星、暁に消えてゆく極細の月。望遠鏡で見る場合は邪魔なだけの雲も、WXのシャープな広視界の中では、惑星たちや月に彩りを添えてくれる。都会の空での新たな双眼鏡の楽しみ方を教えてくれた。
 8月末、能登に出かけた。新幹線で金沢下車、レンタカーで2時間走ると先端にある見附島に着く。全島が珪藻土でできた小島で、潮が引くと島の間近まで歩いて行くことができる。日没直後に海から満月が昇ってくるはずだが、東の空は厚い雲に覆われていた。砂浜に座って待つこと1時間、雲の切れ間から満月が覗き始めた。WXを向けると雲間を動く満月の姿を見ることができ、楽しい。やがて上空の雲だけが残り、彩雲となって満月とともにWXの視野一杯に広がった。

写真:白尾元理

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