製造現場との“魂”の共鳴が実現。
世界最高のものを世の送り出すためには、世界最高のものづくりをしなければならない。
その要は、言うまでもなく、製造の現場だ。
牛久保も中尾も、口を揃えて高く評価しているのが、その製造現場の“魂”の入り方だった。
WXの場合、レンズなどの光学部品や金物部品の公差はギリギリにまで詰めてある。
それだけに、製造現場では精確に組み立てる必要がある。たとえば各光学系の光軸が合っていなければ、設計で意図した性能は得られない。「部品の精度にも多少の幅があり、100点のものも95点もあります。
すべてのレンズの実力を100%発揮させるためには、組立技術の熟練度が非常に重要になります」と牛久保は言う。
だが、初めてWXの設計図を見たとき、製造現場の誰もが思った。
「形にはなるだろう。だが、この図面通りの“見え”を本当に実現できるだろうか」一般の双眼鏡はレンズや金物の精度をしっかり出しておけば、組み込んだ後にレンズを僅かに動かす程度の微調整で済む。だが、WXはそうはいかない。
WXは、いわば究極のハンドメイド品だ。
加工にしても最後は人の手がすり合わせていく。部品同士は現品合わせで、一つひとつ丁寧に組み立てていく。
そして組み立てた全鏡体は光軸を調整している。その調整が非常に難しい。仕上げ塗装も手作業だ。
WXは、ものづくりにかける意地にも似た職人魂と熟練の技がなければ、決して実現しなかっただろうと、牛久保は考えている。
中尾はこう言っている。「製造に関して一番大きかったのは、製造現場との信頼関係です。
現場側も精魂込めて作ったものだけに全部合格にして欲しい。
だけどこちらとしては、基準に合わないものを合格にするわけにはいかないので、時にぶつかることもあります。
しかし、良いものを送り出したいという想いが現場と共有できていました。
意地とプライドをかけて取り組んでくれる製造現場あってこそのWXシリーズだと思っています」
一方、製造現場ではこう言っている。
「牛久保や中尾は厳しい。ですが、私たちが品質で迷った時に考えるのは、その二人ならどう判断するだろうかです。牛久保と中尾が、WXの品質の基準になっています」