奇跡の現象“アリバダ”
9月から12月の下弦の月のころ、何十万頭にもおよぶヒメウミガメたちが、コスタリカのオスティオナルに産卵にやってくる。スペイン語の“Arribar(到着)”を語源とする“アリバダ”と呼ばれる現象だ。彼女らは、このビーチで20年ほど前に生まれ、その後数千キロにわたる旅を続けながら成熟し、今この生まれ故郷に、はるばる産卵のために戻って来ているのだ。ここで産み落とされ、その20年後に生きて戻って来られるのはわずか0.1パーセント。その確率にかけ、重い体に鞭打って砂浜を這い上がり、時間をかけて穴を掘り、50~60個の卵を産み落とし、丁寧に砂をかけ、またやっとのことで海に戻っていく。他のウミガメの卵を掘り返して食べるクロコンドルたちには脇目もくれず、まるで宇宙につながったような眼差しで黙々と産卵を遂行していく。ウミガメが危険を感じて上陸をあきらめないよう、地元の人たちはビーチの静寂や安全の確保に全力を尽くしていた。この神聖な現象は、そんな努力があって続いているのだ。
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