JUNJI TAKASAGO THE PLANET2 GRAND JOURNEY

Behind the Scene

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SEASON1 NEW ZELAND 03 / Art of Nature

原初の地球が息づく風景

ニュージーランドには、一般に温暖で居心地のいいイメージがあるかもしれない。しかし、今回訪れた南島は、南極に思いがけないほど近く、とてもワイルドな場所だ。氷河が削った大地が広がり、雨が激しく降る地域、風が厳しく吹き付ける地域が点在する。そうした南島には、太古の時代を思わせるシダの森や、独特な存在感を放つモエラキ・ボールダーズなど、不思議な風景が多数存在する。さらに子細に観察すると、地球を構成するエレメンツや生命の起源を想像させるような形の鉱物、植物などが無数に目に飛び込んでくる。ニュージーランドのあちらこちらで見られる地球の創生を思わせる風景。その場所を構成する鉱物、地衣類、植物、造形物などには、目に見えないスピリットのようなものが感じられる。そんな形のないエネルギーや地球の働きを写し込みたくて、風景を構成する細かなものの一つひとつに注意深くカメラを向けてみた。

モエラキ・ボールダーズ

モエラキ・ボールダーズ

南島南部のモエラキ海岸には、
まるで人が作ったようにまん丸い巨岩がゴロゴロと転がっている。
貝殻や生命体の残骸などが核となり、
約400万年かけて石灰質などに覆われてできたものだとか。
まるで宇宙に浮かぶ天体を思わせる不思議な岩だ。

満ちゆくモエラキ

満ちゆくモエラキ

不思議な丸い巨石は、場所によってはまとまって鎮座している。
潮が満ちていくに従って、惑星が一列に並ぶとても珍しい天体現象、
“惑星直列”を思わせる光景が出現した。
小さな宇宙を見ているような、そんな感覚になった。

トンネルビーチ

トンネルビーチ

細いトンネルを抜けて降りていくと、
そこには絶壁から落下してきたかのような巨大な岩が
ゴロゴロと転がるビーチがあった。
波の音以外は一切聞こえないその場所で、
太古の昔にワープしてしまったような錯覚に陥った。

プカキ湖

プカキ湖

南島の中程にあるプカキ湖は、
まるで南の海のようなエメラルドグリーンの水をたたえている。
氷河が移動しながら岩を削り、
その岩が白く細かい粉となって水に溶け込んでいるためだ。
長い年月にわたる地球の営みがこの美しい色を醸し出している。

フラクタルな葉

フラクタルな葉

シダの葉を子細に観察してみると、大きな葉の形、
それを構成する小さい葉、さらにその中に秘められる微小な形が見てとれる。
そこには大きな世界から小さな世界までの相似形が存在する。
見つめていると、一本一本それぞれの中に“命”そのものが感じられる。

人間に体があって心があるように、
森羅万象の内側には何らかの精神性が存在する。
それらは地球のリズムを含んでいたり、
宇宙誕生から引き継がれたエネルギーを含んでいたりと、
あまりに微弱で人間の五感では捉えにくいものの、
確かな生の鼓動を宿している。

小さな森
生命体“シダの葉”

生命体“シダの葉”

シダの葉の1本1本は、まるで胎児が母親の胎内で大きくなっていくように、
うずくまった姿から次第に大きく伸長していく。
一枚の葉は、触手を伸ばしながら生きる一匹の原生動物のようにも見え、
そのまま歩き始めそうだ。

小さな森

小さな森

岩の表面いっぱいに生えていたコケ。
まるでヤシの木が無数に生えた南の島を、
はるか上空から見下ろしているかのようだった。
よく見るとそれぞれに個性があり、それぞれが何かを主張しながら、
同時に互いに協力し合って生きているようにも見えた。

地衣類

地衣類

“地衣類”とはよく言ったものだ。
まさに大地の衣のような、赤やオレンジ、
黒などの硬軟おり交ぜた物体が、
コケの合間をひっそりと埋め尽くしていた。
生き物のようにも見えるし、そうでないようにも見える。
かれらも地球を構成する、なくてはならない一員なのだ。

岩のディテール

岩のディテール

ひとつの岩はいろんな地層が折り重なってできている。
地殻変動や火山活動などで複雑に重なり合い、亀裂が入り、
隆起したりして今の姿になった。

強風のアート

強風のアート

ダニーデンの丘の上は風が強い。
しかしそんな場所にも植物は根を張り、しぶとく生きている。
人間なら頑丈な家を作って自然に抗うが、
植物は自らがしなやかに形を変えて環境に順応していく。
そんな姿が人間の感動を呼び起こすというのもまた面白い。

雲のアート

雲のアート

地面の地形と風とが相まって、いろいろな形の雲を作り出す。
そこに夕日が当たり、色の変化や濃淡を描き出し、
そのとき限りのアートを見せる。

変幻自在の雲

変幻自在の雲

雲はまるで意思をもっているかのように、
一方向に伸びたり丸まったりと、形をどんどん変えていく。

ニュージーランドが心地よい理由

ニュージランドの南島には、自然の厳しさと美しさが共存している。そうした土地では助け合うことが当たり前になっているためか、会う人会う人がとても親切に接してくれる。また、キャンピングカーで思いつくままに行動している間も、(多少の不便さはあったものの)不快さや怖さを感じたことがなかった。
ニュージーランドの人々は、僕らのような訪問者に対してだけでなく、あらゆる生き物に一様に心を開き、愛情をもって接しているように見える。そんな“気”が満ちているからだろうか、ニュージーランドは旅人の僕にも、心地よく自然と向き合わせてくれた。

ダニーデンの絶壁に立つ高砂。激しい風雨で岩肌が丸みを帯びている。この海の向こうに南極があるのだ。この下に前出の「トンネルビーチ」がある。

ダニーデンの絶壁に立つ僕。激しい風雨で岩肌が丸みを帯びている。この海の向こうに南極があるのだ。またこの下に前出の「トンネルビーチ」がある。

クライストチャーチ近くの海岸にて。ここでニュージーランドでもまれに見られるというオーロラを待ってみた(今回は見られなかったけれど)。地元のおじさんが近寄ってきて、このビーチで見つけたという、美しく磨いた石をくれた。

クライストチャーチ近くの海岸にて。ここでニュージーランドでもまれに見られるというオーロラを待ってみた(残念ながら今回は見られなかったけれど)。地元のおじさんが近寄ってきて、このビーチで見つけたという、美しく磨いた石をくれた。

刻一刻と形を変える雲や、その間からこぼれるまだらな光を受けて自己主張する山々は、いくら撮っても撮り切れた感じがしない。つい時間が経つのを忘れてしまう。

刻一刻と形を変える雲や、その間からこぼれるまだらな光を受けて自己主張する山々は、いくら撮っても撮り切れた感じがしない。つい時間が経つのを忘れてしまう。

氷河が削った微粒子が水に溶け込んだ、まるで南の海のような色をしたプカキ湖。こんな美しい場所でただ一人、思う存分に撮影するぜいたくを楽しんだ。

氷河が削った微粒子が水に溶け込んだ、まるで南の海のような色をしたプカキ湖。こんな美しい場所でただ一人、思う存分に撮影するぜいたくを楽しんだ。

今回の旅の間、一緒に周ってくれたキャンピングカー。昼に夜に、大事な機材と荷物と体を守り、安全と安眠を約束してくれた、頼もしい相棒。

今回の旅の間、一緒に周ってくれたキャンピングカー。昼に夜に、大事な機材と荷物と体を守り、安全と安眠を約束してくれた、頼もしい相棒。

良質で巨大なデータに込めたD850の表現力

地球上の雄大な風景から、片隅に佇むものの微細なディテールまでを、その背後に見え隠れする地球の働きを意識しながら、様々な画角のレンズを使って撮影していった。ニッコールレンズの優れた性能を引き出しながら、D850は巨大なデータで、シダの葉一本一本の尖った葉先やザラザラとした岩の質感を隅々まで再現し尽してくれた。時には暗い森の中で、時には雨がしとしと降る山の中腹で、高感度を生かし手持ちでも安心してガシガシ撮ることができた。
人間の目というものは、高性能ではあるけれど、細かなところまで詳しく映すことはできない。しかし大きく緻密な画質を誇るD850で撮った画像を撮影後に拡大してみることで、肉眼では気づかなかったディテールやその奥行き感を改めて観察することができる。良質で大きなデータというものは、想像を超えるポテンシャルをもっているのだ、ということを驚きとともに感じさせられた。

D850

NEW ZEALAND ロケ撮影機材リスト

Body
D5D850D500
Lens
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDAF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR
撮影協力
・ニュージーランド政府観光局 ・ニュージーランド航空 ・EARTH & SKY(小澤英之氏)
モエラキ・ボールダーズ

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/18
焦点距離:22mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:64に対して約1段減感 ピクチャーコントロール:ビビッド

満ちゆくモエラキ

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/6.3
焦点距離:19mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 64 ピクチャーコントロール:ビビッド

トンネルビーチ

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/10
焦点距離:17mm ホワイトバランス:色温度(4000K) ISO感度:ISO 64 ピクチャーコントロール:ビビッド

プカキ湖

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:マニュアル、6秒、f/22
焦点距離:17mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:64に対して約1段減感 ピクチャーコントロール:ビビッド NDフィルター使用

フラクタルな葉

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/5.6
焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:ビビッド

生命体“シダの葉”

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/8
焦点距離:300mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード

小さな森

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/200秒、f/8
焦点距離:290mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:スタンダード

地衣類

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/4
焦点距離:70mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:ビビッド

岩のディテール

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/2000秒、f/4
焦点距離:70mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:ビビッド

強風のアート

カメラ:D850 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/320秒、f/13
焦点距離:16mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:ビビッド

雲のアート

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/1600秒、f/5.6
焦点距離:120mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 640 ピクチャーコントロール:スタンダード

変幻自在な雲

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW (14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/2000秒、f/5.6
焦点距離:135mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 640 ピクチャーコントロール:スタンダード

Profile

高砂淳二JUNJI TAKASAGO

写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。
ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。著書は、「LIGHT on LIFE」「night rainbow ~祝福の虹」「ASTRA」「虹の星」「Children of the Rainbow」「free」「BLUE」「life」(以上小学館)、「Dear Earth」「そら色の夢」「南の夢の海へ」(以上パイインターナショナル)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(共著・七賢出版)ほか多数。ザルツブルグ博物館、Nikon THE GALLERY、渋谷パルコ、阪急百貨店、大丸百貨店など写真展多数開催。2008年には、外務省主催・太平洋島サミット記念写真展「Pacific Islands」を担当。海の環境NPO法人“OWS”理事。自然のこと、自然と人間の関係、人間の役割などを、トークショーや、テレビ、ラジオ、雑誌などを通して幅広く伝え続けている。

高砂淳二

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