– 謎に彩られた古代文明・マヤ文明 –
マヤ文明は紀元前後から16世紀にかけて、 メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ベリーズなどで栄えた。 最盛期には60もの宗教的都市国家が併存し、それぞれに盛衰を繰り返していたと言われている。 マヤの人々は数学や天体観測に長けており、十数種類もの非常に緻密な暦を持っていたことは広く知られている。 実は僕の友人がマヤカレンダーを制作しており、マヤの暦に沿った生活を実践しているそうだ。 暦のリズムを感じ、その周期を意識して生活することで、身体が「宇宙のリズムと合ってくる」 などと聞かされると、ますますマヤ文明への興味が高まっていくばかりだった。 独特の文化が至るところに刻まれている遺跡やその周辺を訪れて文明の足跡を辿り、 そこに残されているマヤの人々の想いを写真に収めたいと思った。
「トゥルム遺跡」
マヤ文明は紀元前後から16世紀にかけて、 メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ベリーズなどで栄えた。最盛期には60もの宗教的都市国家が併存し、それぞれに盛衰を繰り返していたと言われている。マヤの人々は数学や天体観測に長けており、十数種類もの非常に緻密な暦を持っていたことは広く知られている。実は僕の友人がマヤカレンダーを制作しており、マヤの暦に沿った生活を実践しているそうだ。暦のリズムを感じ、その周期を意識して生活することで、身体が「宇宙のリズムと合ってくる」などと聞かされると、ますますマヤ文明への興味が高まっていくばかりだった。独特の文化が至るところに刻まれている遺跡やその周辺を訪れて文明の足跡を辿り、そこに残されているマヤの人々の想いを写真に収めたいと思った。
<撮影の裏側で>
ピクチャーコントロールを「モノクローム」に設定して、仕上がりの印象をモニターで確認しながら撮影した。強烈な太陽に照らされる白いビーチや雲と、漆黒に近い木陰の強烈なコントラストは、デジタルカメラにとって再現しにくい過酷な撮影条件だ。D810はダイナミックレンジが広く、こうした状況でも白とびあるいは黒つぶれが起こりにくい。階調表現もとても滑らかで、きめ細かなホワイトサンドビーチから砂をさらっていく波や、岩の上に建つ遺跡のごつごつした質感も丁寧に描き出してくれた。
カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/1600秒、f/8 焦点距離:17mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:400 ピクチャーコントロール:モノクローム
「古樹の根」
遺跡の森に、地面に立派な根を張って生きている古樹を見つけた。遺跡が建造物としてその役割を果たしていた時代から生きてきたのだろうか。生命力の強さを物語るように縦横無尽に根を広げていた。自然や宇宙の時間を織り込んでいくつもの暦を作っていたと言われるマヤの人たちは、自然を尊び、自然のあらゆるところに神を見出した。古樹の根にマヤの神が鎮座する様子が見えたような気がしたのは、僕が八百万(やおよろず)の神を崇めてきた日本人だからだろうか。
<撮影の裏側で>
古樹の生命力の強さを表現するために、露出を1.3段下げてアンダー気味に撮影した。少し暗めにしても影になっている部分がつぶれずに表皮の質感をうまく表現できているのは、D810の有効画素数3635万画素の精細さと低ノイズ設計による優れた描写力のおかげだろう。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、新たに設計された光学系により解像感がとても良く、繊細に表現したい被写体も信頼して撮影できる。
カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/50秒、f/5.6 焦点距離:24mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:1600 ピクチャーコントロール:ビビッド
「遺跡の主」
トゥルム遺跡のあちこちにイグアナがいた。地面、石段の上、遺跡のてっぺんなどにどっかりと居座り、目だけ動かしながら周りを監視しているようだった。既に滅んだ恐竜を思わせるその風貌は古代の遺跡と妙にマッチし、悠久を感じさせる景観の一部となっていた。彼らの祖先もまた、マヤ文明が栄えていた当時から同じ場所に生息していたのだろう。ここに棲み続けてきたイグアナたちは、遺跡の主(ぬし)として人間の栄枯盛衰を見守ってきたに違いない。
<撮影の裏側で>
遺跡の白い壁と青空をバックに、日陰に隠れているイグアナを撮った。相当に露出差があるこうしたシチュエーションでの撮影では、D810の優れた画質を再認識させられる。主役であるイグアナの鎧のような肌の感触が失われてしまうのが心配だったので、鮮やかな青空を保ちながら、シャドー部の黒つぶれを軽減できるアクティブD-ライティングを「標準」に設定した。その上でRAW(NEF)画像から現像すると、ごつごつした質感も爬虫類独特の沈んだ色調も忠実に再現できた。
カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/640秒、f/8 焦点距離:24mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:400 ピクチャーコントロール:スタンダード
「精 霊」
主に農民の信仰の対象だった雨の神“チャク”の石像が目を引いた。マヤの人々は、自然の中に潜む精霊たちの声を聞き、目に見えないエネルギーを感じとりながら生きていたそうだ。これは世界の先住民たちに不思議なまでに共通する敬虔な生き方であり、自然と調和を保って暮らしていくための智慧でもあるようだ。
カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/160秒、f/4 焦点距離:50mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:3200 ピクチャーコントロール:モノクローム
「ピラミッド」
ピラミッドは神殿としてだけでなく、その一部は王の墓として造られたようだ。また、その構造が精密で有名な暦とも関係しており、マヤ文明を理解する上でも欠かせないものだと聞いた。写真は8〜10世紀の間に繁栄したコバ遺跡のピラミッドで、楕円錘形の階段状神殿「シャイベ」。これだけ完全な形で見られるのは珍しいという。
カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/400秒、f/8 焦点距離:24mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:800 ピクチャーコントロール:モノクローム
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「見つめる木」
カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/320秒、f/5.6 焦点距離:280mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:1600 ピクチャーコントロール:スタンダード
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「遺跡を被う密林」
カメラ:D810 レンズ:AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/80秒、f/8 焦点距離:16mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:3200 ピクチャーコントロール:ビビッド
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「悠久の海」
カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/13秒、f/14 焦点距離:280mm ホワイトバランス:プリセットマニュアル ISO感度:64に対して約1段減感 ピクチャーコントロール:ビビッド
マヤの人々が生きた土地への憧れと好奇心が、僕をユカタン半島へと導いた。
ユカタン半島は、メキシコ、グアテマラ、ベリーズにまたがり、メキシコ湾とカリブ海に挟まれている。特に世界的なリゾート地カンクンが有名だが、マヤ文明の遺跡が数多く残っていることでも知られている。
そもそも僕がユカタン半島に興味を持ったのは、10年ほど前に友人から聞かされた「セノーテ」の話がきっかけだった。テレビの水中カメラマンをやっている彼が教えてくれた、透明なブルーの水に満たされた巨大な鍾乳洞。そのイメージに魅せられた僕は、ぜひ一度自分の目で見て、撮影してみたいと思っていた。
ユカタン半島と言えば、25年ほど前に一度だけ訪れたカンクンの海も忘れられなかった。南国のエメラルドグリーンとは全く異なる、不思議なブルーの鮮烈なイメージが記憶に残っていた。
我々日本人と同様に、八百万(やおよろず)の神を祀っていたというマヤ文明への興味も重なり、マヤの遺跡をぜひ見なければと思った僕は、ユカタン半島での旅程を考え始めていた。
思えば、NIKKORレンズとの出逢いは、およそ30年前に初めてF3を手にしたときに遡る。それ以来、ともに様々な土地を旅し、数えきれないほどの写真を撮影してきた。
特に定評あるワイドレンズの完成度は、他のメーカーには望むべくもないとさえ思える。その中でも今回使用したAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDは決して手放せない愛用レンズで、星空愛好家に神レンズとまで呼ばれている超広角ズームの大傑作だ。
望遠レンズに関しても信頼性は高い。例えばAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRはVR機構つきで、手持ち撮影でも安心して使用できる逸品だ。超広角から超望遠までが必要な今回のロケでも、カメラバッグひとつにすべての機材を収納できたのは、望遠域を1本で引き受けてくれるこのレンズがあったおかげだ。
陸上にしても水中にしても、自然を撮影するときには、カメラのポテンシャルを最大限引き出してくれる。自然写真家として、僕は極上の描写力が魅力のNIKKORレンズに頼りきっている。
高砂 淳二(たかさご じゅんじ)
自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。最新作「Dear Earth」(パイ インターナショナル)をはじめ、「night rainbow」「yes」「ASTRA」「虹の星」「free」(以上小学館)、「PENGUIN ISLAND」「そら色の夢」「南の夢の海へ」(パイ インターナショナル)ほか著書多数。 ザルツブルグ博物館、東京ミッドタウン、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。海の環境NPO法人“OWS”理事
オフィシャルウェブサイト
http://junjitakasago.com/
facebook artist page
https://www.facebook.com/JunjiTakasago/
– 謎に彩られた古代文明・マヤ文明 –
第6回 ロケ撮影機材リスト
- Body
- D810
- Lens
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AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR
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