カメラ・映像製品 ニコンイメージング

JUNJI TAKASAGO THE PLANET 高砂淳二 母なる地球を巡る

アメリカ

Season4|アラスカ – 水と生命の循環・豊かな森 –

豊かな森

「幸せなグリズリーの親子」

アラスカのなかでも、遡上するサケを狙ってグリズリーが集まる場所として有名なのが、カトマイ国立公園のブルックス滝だ。サケの優れた猟場として知られる滝周辺には、特に強いオスが集まる。グリズリーのオスは時に仔グマを襲うこともあるため、仔連れの母グマはめったに近寄らないようだ。その滝から少し離れた広い川で、母と仔が一匹のサケを抱えている微笑ましいシーンに出合った。このとき見た母グマの表情は、優しさに満ちた母親のそれそのものだった。

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit)
撮影モード:絞り優先オート、1/1600秒、f/8 焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 
ピクチャーコントロール:スタンダード

「幸せなグリズリーの親子」

<撮影の裏側で>

今回のアラスカロケを通して、D500とAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRの組み合わせでの撮影が圧倒的に多かった。中でもこのカットは、僕のお気に入りの1枚となった。母グマが警戒心を抱かないように、遠くから400㎜(35㎜判換算:600㎜相当)で撮った。実際には300メートル近く離れていただろうか、グリズリーの親子は安心しきって普段通りの姿を見せてくれた。さらに背景の森の暗い部分から親子がいる水面まで、階調豊かに表現できているのは、D500に採用されている新開発のCMOSセンサーによる低ノイズと高い解像度のおかげだろう。

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit)
撮影モード:絞り優先オート、1/1600秒、f/8 焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 
ピクチャーコントロール:スタンダード

「立ち上がったグリズリー」

茂みから何頭かのグリズリーが川に出てきてあちこち走り回っていた。しばらくののち、そのうちの一頭がふとその場で立ち上がった。手や顎から水が滴り落ちるのも気に掛けず、二本足でヒョイと立ったまま、こちらの方を興味深げに眺めている。どうやらサケを捕りにきたわけではなく、ただ仲間と遊んでいたようだった。好奇心旺盛なその表情は愛嬌たっぷりで、“怖いグリズリー”というより、どこか愛くるしい存在に思えた。

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 
撮影モード:絞り優先オート、1/2000秒、f/8 焦点距離:270mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 
ピクチャーコントロール:スタンダード

「立ち上がったグリズリー」

<撮影の裏側で>

急に立ち上がったグリズリーに、とっさにレンズを向けてシャッターを押した。グリズリーの手から滴り落ちる水のしずくが見えるのは、決定的な瞬間をしっかりと捉えることができた証拠だ。D500はD5と同様に、画面の広い範囲をカバーする153点AFシステムとAF専用エンジンを搭載して捕捉性能と追従性能を向上させている。そのためにAF精度が高く、被写体の急な動きにもしっかり反応してくれる。

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 
撮影モード:絞り優先オート、1/2000秒、f/8 焦点距離:270mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 
ピクチャーコントロール:スタンダード

「森の守り神」

森を歩いていたら、先住民族の手による彫り物が目に飛び込んできた。アラスカの先住民族たちは、自然のなかに精霊を見出し自然との調和を保って生きてきた。水の循環や命の循環、そして母なる大地の豊かさを感じながら、そのサイクルを尊び、壊さないように気を配って生きてきたに違いない。そんな彼らが刻んだ彫り物は、まるで魂が宿っているかのような、ものすごい存在感を放ちながら、森の中に静かにたたずんでいた。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/80秒、f/5.6 焦点距離:24mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード

「森の守り神」

<撮影の裏側で>

暗いところでアンダー気味の写真を撮ると、暗い部分が硬くつぶれてしまうことがある。D5で撮影した森の木は、影の部分までつぶれずにじんわりと暗くなって、とてもいい感じの質感になっている。木を削った彫刻の部分にしみ出てきている樹脂(ヤニ)の、微妙な光沢感も忠実に写し出されている。立体的な深みのある画像が撮れるのは、ダイナミックレンジの広さや低ノイズ性能のおかげだ。卓越した画質による表現力の違いというのは、こうした細部にこそ現れるものなのだろう。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/80秒、f/5.6 焦点距離:24mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード

「偶然の出合い」

滝を遡ろうと、何度も何度も必死にジャンプを繰り返すサケ。グリズリーが捕まえたサケの食べ残しを狙って岩の上で待ち構えるカモメ。それぞれの目的をもって必死に生きるもの同士が、たまたま鉢合わせをした瞬間をカメラが捉えてくれた。

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 
撮影モード:絞り優先オート、1/3200秒、f/11 焦点距離:360mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 
ピクチャーコントロール:スタンダード

「溢れる命」

産卵のために海から河口に集まったサケたち。無数の命が海から森に遡上して無数の新しい生命を産み落とし、自らの命を全うしたのちはほかの生き物の糧となる。それぞれの命は形を変えて循環し、森をはぐくみ、海を豊かにしていく。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/320秒、f/7.1 焦点距離:16mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 400 ピクチャーコントロール:スタンダード

「遡上」

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/8000秒、f/8 焦点距離:120mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 800 ピクチャーコントロール:スタンダード

「捕獲」

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/8000秒、f/8 焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード

「豊かな川」

カメラ:D500 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/15秒、f/25 焦点距離:210mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 100 に対して約1段減感 
ピクチャーコントロール:スタンダード

夏のアラスカで、豊かに輝く生命に出合った。

生き物を撮るならアラスカ。中でも夏は、すべての生き物が活動期に入り、イキイキした素顔を捉えることができるベストシーズンだ。「THE PLANET」では風景を中心に撮ってきたが、今回は生命にフォーカスして撮影したいと思い、これまで訪れる機会のなかったアラスカに向かうことにした。僕の想いに応えてくれたかのように、2週間ほどの旅程だったにもかかわらず、予想以上に数多くの生き物に出合い、撮影することができた。ここまで豊かな命がアラスカに息づいているのは、人が住むすぐ近くまで野生の動物が住める環境があるからだと思う。もし、人間が住むことをやめれば、たちまちその土地は森に覆われ、さらに多くの命に満たされていくのだろう。僕は、力強い自然の恩恵に感謝しながら、動物たちの豊かな表情を写真に収めていった。

今回、主に使用したカメラは、DXフォーマットのD500だった。このカメラの何物にも代えられないアドバンテージは、ボディーのコンパクトさにある。撮影現場でもう一歩奥まで踏み込みたいとき、より高くまで登りたいとき、何の躊躇もなく歩を進めることができる。さらにFXフォーマットで使用する場合に比べて約1.5倍の焦点距離でレンズが使用できることも、望遠での撮影が中心となる生き物の撮影には適している。今回、D500との組み合わせで多用したAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRなら、35㎜判換算で600㎜相当までの撮影が可能だ。僕の愛用するバッグに難なく入るサイズで、ここまで被写体に寄れるレンズは、まさに動物の撮影に最適だった。さらにD500はAF性能が高く、被写体にレンズを向けるだけで瞬間的にピントを合わせてくれる。これまで使用してきたニコンの一眼レフと操作性がほとんど変わらないのもありがたかった。初めて使用するときから、瞬時の判断での設定変更にも咄嗟に対応できた。カメラの進化が実感できた、アラスカへの旅だった。


高砂 淳二(たかさご じゅんじ)

自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。最新作「Dear Earth」(パイ インターナショナル)をはじめ、「night rainbow」「yes」「ASTRA」「虹の星」「free」(以上小学館)、「PENGUIN ISLAND」「そら色の夢」「南の夢の海へ」(パイ インターナショナル)ほか著書多数。 ザルツブルグ博物館、東京ミッドタウン、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。海の環境NPO法人“OWS”理事

オフィシャルウェブサイト http://junjitakasago.com/
facebook artist page https://www.facebook.com/JunjiTakasago/


水と生命の循環・豊かな森

  • 幸せなグリズリーの親子

  • 立ち上がったグリズリー

  • 森の守り神

  • 偶然の出合い

  • 溢れる命

  • 遡上

  • 捕獲

  • 豊かな川

第10回 ロケ撮影機材リスト

Body
D5
D500
Lens
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR

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