カメラ・映像製品 ニコンイメージング

JUNJI TAKASAGO THE PLANET 高砂淳二 母なる地球を巡る

アメリカ

Season3|アメリカ – 生命の源泉を訪ねて –

大地うるおい

「フクロウ」

オウル・キャニオンと呼ばれる洞窟を探索していたとき、順路から10メートルほど上にある棚状の岩にフクロウの親子が巣くっているのを見つけた。1羽の親鳥と3羽のヒナだ。闖入(ちんにゅう)者を警戒しているのか、鋭い目で僕らの動きを監視しているようだった。ヒナたちも眼光鋭くこちらを睨んでいるのには驚いた。あまり彼らを刺激したくなかったので、岩の陰に隠れながら望遠レンズで緊張感の残るフクロウ親子を狙ってみた。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/200秒、f/8 焦点距離:400mm ホワイトバランス:4000K ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:ビビッド

「フクロウ」

<撮影の裏側で>

フクロウの親子までは相当な距離があったので、AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRを、焦点距離400mmで使用した。洞窟の中は薄暗いが、手ブレ補正効果4.0段※のVR機構はさすがに効きが良く、手持ちで難なく撮影できた。D5は優れた解像力と豊かな階調性能を実現しており、被写体のディテールまで緻密に表現してくれる。フクロウの漆黒の瞳やヒナのフワッフワな羽毛、砂岩特有のザラザラした壁など、それぞれの質感が感じ取れるほど画質の良さが際立った作品になった。

※CIPA規格準拠
 NORMALモード使用時。最も望遠側で測定。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/200秒、f/8 焦点距離:400mm ホワイトバランス:4000K ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:ビビッド

「地球上最大の生命体」

セコイア国立公園には、巨大なセコイアの木が林立しているが、中でも「シャーマン将軍の木」と呼ばれるものが最も大きい。根元の周囲が31.3メートル、地面からの高さ83.8メートル。なんと地球上で一番体積の大きい生命体なのだそうだ。ちなみに樹齢は推定2000~2700年。あまりにも常識の範囲を超えた大きさであるため、比較するものを画面に入れないとなかなか巨大さを表すことができないが、そのただならぬ迫力は充分伝わっているかと思う。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:マニュアル、5秒、f/5.6
焦点距離:16mm ホワイトバランス:電球 ISO感度:ISO 6400 ピクチャーコントロール:スタンダード

「地球上最大の生命体」

<撮影の裏側で>

深夜のセコイアの森は、通路を照らす明かりもなく漆黒の闇に包まれる。この夜は、たまたま巨木だけに月の光が当たり、木肌を浮かび上がらせていた。感度をISO 6400、シャッタースピードは5秒に設定。機構ブレを抑えたかったので、電子先幕シャッターを使った。高感度での撮影だったにもかかわらず、数千年の歴史が感じられる根元のこぶや、風雨にさらされてきた木肌の質感まで、D5はノイズを抑えてリアルに描写してくれた。さらに、星空の撮影に定評のあるAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDとの相乗効果で、梢を透かして輝く夜空の星もクリアーに表現することができた。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:マニュアル、5秒、f/5.6
焦点距離:16mm ホワイトバランス:電球 ISO感度:ISO 6400 ピクチャーコントロール:スタンダード

「シカの視線」

数頭のシカが道を横切っていた。あまりこちらを気にすることもなく歩いているように見えたので、望遠レンズを付けてその中の一頭を覗こうとカメラを持ち上げた。するとその瞬間、こちらの気配を敏感に察知したように振り向いたシカと期せずして目が合った。思わずシャッターを切ったのだが、その両目には警戒心と好奇心が入り混じり、戸惑いのなかに、無垢な可愛さがあふれていた。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/500秒、f/7.1 焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 320 ピクチャーコントロール:ビビッド

「シカの視線」

<撮影の裏側で>

動物たちは、写真家の都合で動いてはくれない。興味があるものに目を向け、興味がなくなると去っていく。ある程度動きを予測しながらシャッターチャンスを待つのだが、大抵は予期しない瞬間にそれがやってくる。このときもシカと目が合ったとたん、反射的にシャッターを切った。D5は高性能な「AF専用エンジン」を採用して演算処理と制御を高速で行っているとのことで、AFの反応が速く快適に撮影できる。カメラを向けた被写体に素早く対応することができ、シカの大きな目にきっちりとピントを合わせてくれた。野生の動物たちのイキイキとした表情を瞬間的に捉えるために、このカメラは絶対的なアドバンテージを与えてくれる。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/500秒、f/7.1 焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 320 ピクチャーコントロール:ビビッド

「緑の木」

セコイアの森の中で、一本だけ全体が緑色の苔で被われている木を見つけた。どういうわけでその木だけが苔むしているのか、その理由は分からない。だが、グリーンの色がとても鮮やかで、森の中でもひときわフォトジェニックな輝きを放っていた。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/100秒、f/7.1 焦点距離:16mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 3200 ピクチャーコントロール:スタンダード

「野生馬たち」

モニュメントバレーを車で走っていたとき、野生の馬たちに遭遇した。静かに車を止めて近寄ってみたが、人に慣れているのか僕らを恐れる様子がない。その場にしゃがんで撮影していたらどんどんこちらに近づいてきてしまい、構図を決めるのにかえって苦労させられた。

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/640秒、f/8 焦点距離:18mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 400 ピクチャーコントロール:ビビッド

「中空の月」

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/2000秒、f/8 焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 400 ピクチャーコントロール:スタンダード

「リス」

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、
1/1250秒、f/5.6 焦点距離:400mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:ISO 400 ピクチャーコントロール:スタンダード

「夜の川」

カメラ:D5 レンズ:AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:マニュアル、15秒、f/8
焦点距離:14mm ホワイトバランス:電球 ISO感度:ISO 1600 ピクチャーコントロール:スタンダード

アメリカのむき出しの素顔を撮りたくて、広大な大地をクルマで渡り歩いた。


アメリカの南西部、ユタ州とアリゾナ州の境にあるレイクパウエルという人造湖を中心に、半径230kmの円に囲まれる地域を「グランドサークル」と呼ぶ。ここには太古から変わらない雄大な景観や神秘的な奇岩、先住民族の遺跡が集中し、実に40カ所を超える国立公園や州立公園が含まれている。僕は今回、撮影地から撮影地へと飛行機を使ってピンポイントで飛び回るのではなく、あえてクルマを借りてグランドサークルを中心としたこの地域をじっくりと巡った。岩山や砂礫だけが存在するような荒涼とした風景を何百キロも走っていくと、突然に風景が一変し、巨木や動物たちが共存する豊かな生態系が広がっている。そうした大地の変化を五感で味わいながら、アメリカの素顔を撮影したかった。アンテロープキャニオン、ホースシューベンド、グランドキャニオン国立公園、モニュメントバレー、アーチーズ国立公園、キャニオンランズ国立公園、ザイオン国立公園、そしてデスバレー国立公園とセコイア国立公園(いずれもグランドサークルの西)。訪ねた撮影地が見せてくれたさまざまな表情は、その土地の匂いや感触とともに僕の心に刻まれていった。

僕が今回撮影に用いたD5に見たのは、デジタルカメラの成熟した姿だ。まず感心したのは感度の良さ。高感度でも見事なまでにノイズが抑えられ、夜間の撮影にも余裕をもって臨める。さらに、オートフォーカスが速く、カメラを向けた途端にシャッターが切れる感覚が、ほんの僅かでもタイムラグを感じてしまっていたこれまでの感覚とは違うように思える。夜、暗い中でも迷わずピントを合わせてくれるのも、自然写真家にはありがたい。今回の撮影では防塵性能の高さも実感できた。強風が吹きつける砂漠や荒野など、普通ならカメラを出すのをためらうような状況でも撮影に専念できた。これまで一生懸命に工夫を凝らしてようやく撮れていたような困難なシチュエーションでも、D5ならラクラクと撮影できてしまう。性能・機能が飛び抜けているから、諦めていた撮影にも挑戦できる。この懐の広さが、ニコンのデジタル一眼レフにおけるフラッグシップモデルとしてのD5の真骨頂だと思う。

高砂 淳二(たかさご じゅんじ)

自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。最新作「Dear Earth」(パイ インターナショナル)をはじめ、「night rainbow」「yes」「ASTRA」「虹の星」「free」(以上小学館)、「PENGUIN ISLAND」「そら色の夢」「南の夢の海へ」(パイ インターナショナル)ほか著書多数。 ザルツブルグ博物館、東京ミッドタウン、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。海の環境NPO法人“OWS”理事

オフィシャルウェブサイト http://junjitakasago.com/
facebook artist page https://www.facebook.com/JunjiTakasago/


生命の源泉を訪ねて・大地のうるおい

  • フクロウ

  • 地球上最大の生命体

  • シカの視線

  • 緑の木

  • 野生馬たち

  • 中空の月

  • リス

  • 夜の川

第8回 ロケ撮影機材リスト

Body
D5
Lens
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR

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