この瞬間の光と想いを焼き付ける。二人で撮るセルフポートレートの楽しみ方
互いにアイデアを出し、協力して作り上げる二人のポートレート。一人の撮影とは違った面白さがあります。
学生の頃からずっと一緒に撮影
jyotaさん(以下、J):大学でクラスメイトだった彼女は、通学途中いつも楽しそうに何かを撮影していて。それが気になって、ある日声をかけてみたんです。それまであまり写真に興味はありませんでしたが、カメラを借りて撮影してみたらすっかり写真の魅力にはまってしまいました。
misuzuさん(以下、M ):それからは学内でも、ずっと一緒に写真ばかり撮っていました。クラスの中でかなり浮いた存在だったと思います(笑)。
J:撮影した写真も二人でInstagramにアップ。すると徐々にフォローしてくださる方が増えていって、そのうちに仕事の依頼もいただくようになりました。
M:大学3・4年生になると空き時間が増えたので、在学中から広告写真を撮影したり、水族館から依頼され写真のワークショップを行ったりしていましたね。
J:大学を出てから、僕も彼女もそれぞれ写真関連の仕事に就いて経験を積み、その後二人ともフリーランスになって一緒に「tsukinami」という名義で活動を始めました。夫婦となった今も、変わらず撮影の仕事を続けています。僕は結婚式場の専属フォトグラファーをしていたので、フリーになってからもウエディングフォトをお請けしたり、インテリア系の撮影をしたりすることが多いですね。
M:私もウェディング系の広告写真や花の写真、それからマタニティフォトなども。互いの得意とすることやできることを活かしながら、幅広くお仕事をしています。
それぞれのこだわりと互いの作品の魅力
J:プライベートでも、毎日二人で撮影をしています。僕は広々とした景色の中に人物がいるような画が好きなので、いつも一緒に出かけては、風景を活かした彼女の写真を撮っています。色的には淡い色調が好みですね。もともとオールドレンズのフィルムカメラから始めたので、光を多く取り込んだふんわりとした雰囲気の写真が好きになったのかもしれません。
M:私もよく彼のポートレートを撮ったり、他には木漏れ陽やお花など日常の中でふと惹かれたものにレンズを向けたりしています。制作をする上でこだわっているのは、シンプルな美しさ。あまりごちゃごちゃしていない、見ていて気持ちの良い写真を目指して撮影や編集を行っています。
J:彼女の作品はシンプルといっても、例えば髪のなびき方や自然な色の出方など、細部まで神経が配られています。自分としても参考になりますし、また彼女は人と接するのがとても上手で、いつも生き生きとした表情を捉えている点もパートナーとして誇らしく感じています。
M:彼と撮影をしていてすごいと思うのは、あらかじめ最終的なイメージを明確に描いているところ。だから私を撮影してくれるときも「こういう写真が撮りたいから、ここにこのように立って」と指示がわかりやすく的確です。構成がしっかりとしているので、風景の中で人物が小さく描写されていてもきちんとそこに目がいくんです。
二人で撮るセルフポートレート
M:新型コロナウイルスが蔓延してから、外に出ていくような仕事は減りました。その代わりに「『二人でおうちカフェ』のようなものを提案してください」といった企業からの依頼が増えたんです。学生の頃からずっと続けてきた二人のセルフポートレートをご覧になったのでしょうね。
J:二人でポートレートを撮るときは、カメラの設定や画角など、相談しながら作業を進めています。意見が違う時はそれぞれのイメージで何パターンか撮り、最終的にどの画を完成作品にするかなども話し合います。
M:構図やポーズを決めタイマーで撮影し、確認。気になった点を修正して、またポーズをして撮影……。納得がいくまで随分時間がかかるときもありますが、良い画が撮れたときはそれだけに嬉しいです。
J:毎回似たようなファッションにならないように小物もよく使うので、僕の車の中は小物だらけ(笑)。また実際の風景を前にして、そのシーンに合った服を現地で買ったりすることもあります。
M:服でも小物でも普段から様々なバリエーションを試していると、仕事においても役立つことが多いです。結婚式関係の撮影でお客さんが服のコーディネートやお花の選択で迷っているときにも、「写真にするとこの色の方が映えますよ」などといったアドバイスができるようになりました。
同じカメラで一緒に撮る面白さ
J:プライベートで出かけるときは、二人ともZ fcを持っていきます。見た目がおしゃれで可愛く、二人で持つとさらに絵になります。またデザインだけでなく、僕が理想としているような色を出してくれます。決してフルサイズのミラーレスカメラにも引けを取らない画質のクオリティだと思います。
M:露出や感度もダイヤルで設定。シャッター音もクラシックなカメラで撮っているかのよう……。フィルムカメラをずっと使っている方も親近感を感じるのではないでしょうか。カメラ初心者の方からおすすめのカメラを教えてくださいとよく聞かれるのですが、そのときは自信を持ってこのカメラを紹介しています。
J:レンズは互いの好みの画角に合わせ、僕はNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR、彼女はNIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)を主に使っています。同じ場所を同じカメラで撮っていても撮れる画が随分と違うので、撮影した写真を見せ合いながら違う視点にハッとすることがあります。こんなことも二人で一緒に写真を撮る面白さではないでしょうか。
長く二人で撮り続ける秘訣
M:二人でポートレートを撮るときに意識しているのは、あまりガチガチに決めすぎず、できるだけ自然な印象で撮るということです。日々のふとした一瞬を切り取るような感じ。ただ本当にそれだけだと画になりづらいので、ポーズを工夫したり編集で色味を加えたりして、「理想の二人」像に近づけています。
それから細かな点でいうと、夕景など撮影時間が短い中でも譲り合って撮るとか、撮影途中に不機嫌になることがあっても互いに気持ちよく撮影するための空気づくりを心がけるとか……。撮りたいイメージに合う音楽を流しながら、自分たちの気分を高めたりすることもあります。
J:まずは撮影することよりも、その場の雰囲気を楽しむことが一番ではないでしょうか。楽しんでいる気持ちが写真にも現れますから……。二人の思い出にもなりますし。
M:思い出というと、アルバムを作るのも良いと思います。私たちは旅先でも、写真をその日のうちにパソコンに取り込んでアルバム編集をしています。すると帰ってきてから写真を見直すようにもなりますし、思い出を振り返りながら次の計画を立てたりするのも楽しいです。そういったことも長続きの秘訣ですね。
スペシャルギャラリー「おそろいのZ fcとふたりの日々」
私たちのプライベート撮影では、事前に場所を決めておくことがほとんどありません。仮に「この場所で撮影しよう!」と決めていても、そこにむかう途中の道端で撮影したり、池や草むらで撮影したりすることも多いです。その日の天気や時間、季節や気候によって魅力的に感じる部分は様々で、『何気ない場所での何気ない瞬間』が私たちにとって1番大切にしたくて、愛おしい時間です。今回のギャラリーは、二人でコーディネートしたお洋服を身に纏い、おそろいのZ fcを持ち、セルフポートレートで撮影しています。美しい風景も含めてご覧いただけると嬉しいです。
jyota tomonori / misuzu