人と波と光のアンサンブル。独自の視点で最高の瞬間を捉える
体を包み込むチューブ。エメラルドや金色に輝く波。サーファーが感じている美しい世界を、多くの人たちにも見せたいのです。
日本から世界の海へ
日本に住むようになって20年ほど。千葉県を拠点に、主にサーフィンフォトグラファーとして活動をしています。サーフィン以外にもファッションや車、アウトドア関係など多くの企業や雑誌社に作品を提供したり、写真だけでなくTV関係の映像のディレクションやプロデュースを行ったり、国内外を問わず活動の幅は年々広がってきています。
キャリアのスタートはオーストラリアでした。生まれ育ったブラジルよりも美しく良い波でボディーボードがしたいという思いから移住。私の叔父が経営している大手写真スタジオに就職しました。そこで著名なフォトグラファーたちからさまざまなジャンルの撮影を学び、自身のスキルを高めていきました。
その後日本に移り住むのですが、それにはいくつか理由があります。
一つには日本の位置です。オーストラリアもサーフィンで有名ですが、世界のサーフスポットを巡ることを考えた時、ハワイやインドネシアなどの主だったエリアからアクセスの良い日本は、拠点とするのにちょうど良い場所だったのです。
もう一つはオーストラリアやブラジル、アメリカはサーフィンの文化が成熟しているため、何か新しいことを始められる可能性は限られていると感じていました。対して日本のサーフィン業界は、当時これからさらにレベルアップしていくであろうという時期でした。この国であれば自由なチャレンジができるかもしれない。そんな期待から日本で暮らすことにしました。
パイプラインはフォトグラファーにとっても戦いの場
普段はプロのフォトグラファーとして、クライアントの意向によりさまざまな被写体を撮っています。でも個人的に好きなのは、やはりサーフィンの撮影ですね。
サーフィンの撮影が他と違うのは、撮っている瞬間以外は自分も泳ぎを楽しめること。でも実際は楽しいだけでなく、水泳をしながらの撮影はかなり大変です。だから毎回チャレンジで、飽きることはありません。ボディーボードでよくビックウェーブに乗っていた頃のように、撮影時はすごくアドレナリンが出てくるのを感じます。
撮影スポットで好きなのは、ハワイの「パイプライン」です。おそらく世界で最も有名なサーフポイントでしょう。
パイプラインの魅力は、波の形がとにかく綺麗。水の色も美しい。そしてなにより世界トップクラスのサーファーが集結し、さらに彼らを狙う有名なサーフィンフォトグラファーが集う場所であること。パイプラインで良い作品が撮れるということは一流の証であり、その後の仕事にも大きな影響があります。だから私も毎年12月〜2月の、波が一番良い時期にパイプラインへ出かけます。
サーファーたちの戦いの場であるとともに、フォトグラファーたちにとっても腕を競い合う重要な場所なのです。
海へ入る前から撮影は始まっている
私が撮影時に意識しているのは、アングル、光、色などにこだわった、独自の視点を作品に反映するということです。あまり他の人が撮らないような角度から狙ったり、太陽の位置などもよく確認し撮影ポイントを考えたりしています。
私のクライアントも、そして私自身も、単なる記録的な写真とは違う、ありきたりでない写真をいつも求めています。だから撮影時は、一瞬で人の目を引きつける雑誌の表紙になるような写真を思い描きながら撮っています。
でもそのような作品を撮るためには、何よりもまず事前のイメージが大切。海に入る前に、今日の海はどのような波がくるのか、それにあわせどのように撮るのかを、完璧なまでに頭の中でシミュレートします。海の中では途中でレンズ交換などできませんからね。
サーフィンの撮影を始めたばかりの頃は、この準備に随分苦労をしました。正確な判断はやはり経験を積み重ねないとできません。
最近では若いフォトグラファーが「ペドロさん、今日の海はどのレンズを使いますか?」などと尋ねてきて、私と同じようなレンズをつけて海に出ていたりします。私も若い頃は、同じように有名なフォトグラファーのレンズなどを見て随分と学んだものです。
プロのツールとして信頼できるニコン
良い作品を撮るためにフォトグラファーのスキルが大切なのは言うまでもありませんが、使用するカメラの性能も同じように大変重要です。描写力のみならず過酷な状況下でも安心して使える堅牢性なども含め、高いレベルにないカメラでは良い作品は撮れません。私がニコンを使い続けている理由は、その点にあります。
ニコンのカメラの良さは、まずレンズ。以前使用していたFマウントのレンズを現在のミラーレスカメラにレンズマウントを介して装着していても、遜色のないクオリティを提供してくれます。
それから色です。私は仕事の関係でニコン以外のカメラを使うこともありますが、ニコンの色は他の同クラスのカメラと比較しても美しく、私好みです。
ところで、現在私がメインで使用しているカメラはZ 7です。個人的に気に入っている点としては、まずムービー性能。色が綺麗だし、手ブレ補正も強力。ライブビューの反応が早くなったのも、特にビデオ撮影時には大変助かっています。
最近は映像作品の依頼を受けることも多くなったのですが、クライアントから特に使用機種の指定がない限り、Z 7を使っています。
それから連射速度の向上。これまでの一眼レフカメラに比べかなり進化していて、決定的な瞬間を今まで以上に捉えられるようになりました。
そしてなんといってもコンパクトさ。海の中での撮影が随分と楽になりました。このコンパクトさでこのクオリティの画を出してくれるZ 7は、私のように水中で撮影を行うフォトグラファーにとって最適のカメラだと感じています。
海の中で見た美しい光景を伝えたい
海の中で迫力のある、エモーショナルな写真を撮るためには、多少危険も伴います。
例えば魚眼レンズをつけてチューブをくぐるサーファーの動きや表情を捉えるためには、サーファーとの距離が近い位置で撮影することになります。
すごいスピードで滑るサーファーや、自分をも巻き込んでくる波の動きを読みながら、ベストな一瞬を捉えるとともに、次の瞬間サーファーや波の動きに合わせてその場から逃げる必要もある。ましてハワイのように、波の高さが5mも10mもあるような状況での撮影は、毎回恐怖を感じています。
だから日頃から鍛錬を重ね、いざ撮影のときは写真や泳ぎの技術はもちろん、長時間泳ぎながらとっさに動ける体力・判断力など、自分の持てる力を最大限に出し切りチャレンジをしてきました。
このようにサーフィン写真は、一般の方ではなかなか触れることのできない世界を描き出した写真といえます。今後もこのようなギリギリの環境に身を置きながら、こんなに素晴らしく美しい世界があるのだということを、写真や映像を通じて皆さんに伝えていきたい。それが私の思いです。
新年スペシャルメッセージ
新年は、新しいことや新鮮なことを始める絶好の機会を与えてくれます。新たな挑戦に希望を持ち、そしてより良い世界になっていくことを願います。 Happy New Year 2022!
ペドロ・ゴメス
ペドロ・ゴメス氏がZ 7で撮影したスペシャルムービーもご覧いただけます。迫力あるサーフィンシーンを動画でもぜひお楽しみください。
※ ペドロ・ゴメス氏のYouTubeチャンネルに移動します。