写真と言葉で紡ぐ、心の中の物語
写真と文章、その組み合わせから生まれる温度感が、作品をより私のイメージに近づけてくれます。
世界一周が写真への入り口
初めての海外は26歳のとき。世界一周の旅でした。世界一周というと、旅行好きの方には特別な思い入れを持たれている方もいらっしゃるかと思います。ですが私は、この旅自体にこだわりがあったわけではありません。
将来に不安を抱えていた高校生時代。ふと手にした高橋歩さんの自伝に衝撃を受けます。彼は世界中を巡りながら、執筆・会社経営・学校設立などジャンルにとらわれない、多彩な活動をされている「自由人」。そんな彼の姿に、いずれ私もこんな生き方をしたいと考えていました。ですから世界一周も「高橋歩さんになる」ための第一歩に過ぎず、ずいぶんと気楽にスタートしたように思います。そのために準備が不十分で、いろいろ大変な経験をすることになるのですが……(苦笑)。
当時、Webデザインや執筆の仕事をしていたのも、どこにいてもパソコン一つで仕事ができるという理由からです。実際に旅先では、世界各地の温泉をレポートする記事を書いたりしていました。しかしレポートにはやはり写真も必要ということで、そこから実務を通じて写真を学び始めます。
現在私は主に写真家兼ライターとして活動しているのですが、撮影は私の職歴の中でも比較的あとから始めた仕事です。でも今では仕事的にも個人的にも、写真は私にとって欠くことのできない大切なものになっています。
撮影は子どもの頃の遊び心を思い出させてくれる
仕事で必要に迫られるまで、写真にはあまり興味がありませんでした。ですが本格的に始めてみると、その面白さや奥深さにどんどんと惹かれていきます。
もともと私は、絵を描いたり物語を作ったりすることが好きな子どもでした。今でも撮影のときは、景色を見ながら頭に浮かんでくる物語を、心の中で被写体に重ね合わせシャッターを押す、などということがあります。大人になると、無駄なことや合理的でないことを自分の中から排除してしまいがちです。でも写真は、幼い頃夢中になっていたお絵描きのように、私の中の純粋な遊び心や創作意欲を解放してくれる気がしています。文章を綴るのも、私にとって同様の意味があるのかもしれません。
仕事としては「写真家として」「ライターとして」依頼を受けることが多いのですが、個人的には写真と文章を組み合わせた作品作りも好きです。
文章のみでは説明しにくい情景を写真が補ってくれたり、逆に写真だけだと伝えきれない気持ちを文章が補ってくれたり……。それでいて、見る人が想像する余白みたいなのも残せる。その温度感が私の感覚にマッチしているのです。
とはいえ、必ず写真と文章を組み合わせなければといった形式的なこだわりもありません。あくまでその時々、私の感じた世界を表現するのに適した表現方法を優先しています。
写真とSNSから生まれる好循環
毎日のようにSNSに写真をアップしています。
私は個展を開くこともあるのですが、展覧会を行う際は、作品を見たり購入してくれたりする人の気持ちも想像しながら展示作品を選んでいます。でもSNSは、親しい友人に「こんな写真を撮ったんだけど」と気軽に見せるような感覚。すでに歯磨きのように、毎日自然と行うものになっています。それに作品を日々発表すると、常に自分の方向性を客観的に確認できてよいのです。
同時にSNSは、仕事面でも大いに役立っています。
「Instagramのこの写真、書籍のカバーに使えませんか」とか、「作品が素敵なので、一緒にプロダクトを作りたいんですけど」など、見知らぬ人からお声掛けいただくことも多いですね 。むしろSNSを中心に仕事が回っている感覚すらあります。
企業さんからの依頼で撮影をするそれまでの仕事と違い、SNS経由の仕事は自分が思いもしなかった世界へ連れてってくれるのが面白いです。「この時代、SNSを使わないと駄目」とまでは思いませんが、仕事に新しい展開を求められている写真家の方は、上手に活用すると楽しいことがいっぱいあるように思います。
ユーザーに寄り添ってくれるニコンのカメラ
ニコンのカメラを使っていて思うのは、使う人に寄り添ってくれているということ。カメラを始めて間もない頃、使用感にはあまりこだわりがありませんでした。ところが撮影の仕事が増えてくるにつけ、「もっとこうできたら良いのに」といった小さな不満が出てくるようになります。でもニコンのカメラは、かなり細かな点までカスタマイズできる。写真の仕事をするなら、操作にわずらわされることなく撮影に集中させてくれるこんなカメラが必要だと感じました。
それから私はずっと青の表現にこだわって作品を作ってきましたが、最近ではZ 6IIの暖色に惹かれています。そのきっかけは岡山通い。現在私は東京と岡山の二拠点生活をしていて、一ヶ月の半分は岡山にいます。のどかな景色の中で見る夕陽やレトロな喫茶店の木のテーブルなど、ぬくもりのある色彩をZ 6IIは感じたまま表現してくれるように思うのです。そう気づいてからは、仕事のみならずプライベートでもZ 6IIを持ち歩くようになりました。
機能的には瞳フォーカスが気に入っています。私は野良猫を撮るのも好きなのですが、猫がこちらを向いた瞬間、目にきちんとフォーカスしてくれるのです。動物は目からピントが外れてしまうと、ぼやけた印象の写真になってしまいがち。この重要なポイントをカメラにまかせながら、構図に集中できるのは大変助かります。動物を飼っている人は、とても重宝するのではないでしょうか。
レンズはNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを使うことが多いですね。旅先で出会うさまざまなシーンも、これ1本で大抵カバーできます。とても頼りにしています。
それからNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sもお気に入り。特にボケが美しく、その描写にハマってしまいました。単焦点は自分が引いたり近づいたりしないといけませんが、このレンズで構図を探る作業はとても楽しいです。
新しいことへの挑戦。これまでも、これからも
撮影や執筆以外にも、オンラインのコミュニティを作ったり、会社の運営に携わったり、さまざまな活動を行っています。「何かを作っていたい」「新しいことにチャレンジしたい」という気持ちがいつも私を駆り立てています。
それから、ワクワクする気持ちにも忠実でありたいですね。例えばお金のためとか、人間関係がややこしくなるからとか、そのためにワクワクを手放すと後悔します。子どもの頃、つまらない大人になりたくないと思っていました。今でもその思いは続いています。
まだまだやりたいことはたくさんあります。例えば、しばらく先になるかもしれませんが、自分のお店を持つこと。撮影、執筆、デザイン、それから世界を回って集めたものを販売するなど、これまで自分がやってきたことを全部詰め込んだようなお店です。
近いところでは、2度目の世界一周を計画中。もちろんその際にはニコンのミラーレスカメラも持っていき、撮った写真で作品集も作ってみたい。
そして、50代60代になっても高橋歩さんのように、世界を飛び回りながらワクワクする活動を続けることも……。これもまた大きな夢の一つです。