「Boundary Melt」
男女間の性差を構成する要素を覆い、あるいは足すことで、日常的に向けている性別への意識を溶解させる。
ヘア&メイク:Risa Hitomi(Luz)、モデル:Yukiro Dravarious
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「Boundary Melt」
アンドロギュノス的魅力をたたえるモデルを花弁に侵食させ、ヒトと植物の境界線を融合させた。
ヘア&メイク:Risa Hitomi(Luz)、モデル:Yukiro Dravarious
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「Boundary Melt」
人間と自然界の融合を目指すこと、それが男女の性別や個としての存在を超越し、ワンネスの境地へと我々を誘(いざな)う。
ヘア&メイク:Risa Hitomi(Luz)、モデル:Yukiro Dravarious
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「Night Seeker」
下手側からルーセントアンブレラを装着したクリップオンストロボでライティングし、様々な光が交錯する路上に揺蕩うモデルを浮かび上がらせた。
ヘア&メイク:イザベラ、モデル:Koichi Niiyama
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「Night Seeker」
モデルが左手でクリップオンストロボを持ち、路面に向かって照射。
顔へ照り返すフラッシュ光は、背景の光柱と相まって沸き上がるオーラを想起させる。
ヘア&メイク:イザベラ、モデル:Koichi Niiyama
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「騙されたい」
58mm f/0.95 Sを開放で。
マニュアルフォーカスだが、高精度のフォーカスピーキングとレンズの心地よいトルク感で、むしろ撮影行為を一層楽しめる。
モデル:永友春菜(WALK)
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「誘われたい」
曇天の日、窓際のフラットな環境光で撮影。
瞳AFの効きの良さがわかる一枚で、モデルの瞳の中にモデルをカメラ内に捉えようとする私とその背景がしっかり映り込んでいる。
モデル:永友春菜(WALK)
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「15歳女性 哲学者」
中学校は不登校ながら、創作活動で数々の受賞歴を持ち、ギフテッドとして高校3年間の海外留学が決定(コロナ禍で渡航順延中)。揺れる自我や葛藤、鬱について動画を通して吐露し、毎日YouTubeで配信。母子家庭のため乏しい活動資金を、自らクラウドファンディングを企画するなどして手探りながら自らの道を切り開こうとしている。本写真は人生で初めてカメラ前に臨んだもの。
モデル:Miyabi
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「We all eat, It's a small world」60代男性 建築家、50代女性 団体職員/ソムリエ
バーで出会って20年、お互いの元恋人も顔見知りのところから、事実婚となり10年。左利きと右利きで並んで日々の晩酌を楽しんでいる。
モデル:高安、岡部
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「We all eat, It's a small world」30歳女性 漫画家、22歳男性 アルファツイッタラー
愛する祖母の遺伝子を残したいと婚活を始め、パートナーに求める条件を精査した末、自宅の納戸に住み着いていた居候がベストだと気付く。手を繋ぐ前に婚約することとなり、少しずつ距離を縮めている。
モデル:Natsumi、Naka
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LGBTという言葉が、当たり前に使われるようになりました。私が写真を撮り始めた十数年前にはアンダーグラウンドな言葉だった「女装子(じょそこ、女装を楽しむ男性を指す)」も、2014年には流行語大賞にノミネートされました。ほかにもジェンダーフリー、ノンバイナリーといった、生まれ持った身体的な区分に縛られない多様な性のあり方や価値観が、社会にも随分認められてきたようです。写真家としてキャリアをスタートした時からそのような人たちを多く撮影してきたので、この状況を喜ばしく思っています。
私が女装する人たちの撮影を始めた当時は、人に知られぬように女装をしている人が大半でした。でも好きなものを好きと言えない社会なんて、窮屈ではありませんか。誰もがもっと自分を堂々と表現できるようになれば良いという思いで、女装をして写真が撮れるスタジオの開設、女装がテーマの写真集の出版、メディアへの出演などを積極的に行いました。
私が携わったのは全体の流れのほんの一部ですが、女装にまつわる人たちそれぞれの思いが連なり、今では女装したいと思う人は自分でネットを見ながらメイクの勉強をして、街中に洋服を買いに行って、自撮りをしてSNSにアップ。そんなことが普通に行われるようになってきましたね。
写真は私にとって、想いを表現するツールでもあります。一つには、これまで光が当たらなかったものに対して私が写真を撮ることで、世間に「こんなにも素敵なものがあるんです」と提示したいという想い。それから、世の中の既成概念を壊したいという想い。
一般的に「かわいい」「美しい」というと、若くてプロポーションが良く、目鼻立ちが整っている女性をイメージしがちです。でも女性自身がその呪縛に囚われ苦しんでいたり、まして女装をしたい男性にとっては高いハードルになっていたりもします。でもそれは、とても残念で悲しいこと。型にとらわれず、それぞれが自分なりの「かわいい」「美しい」を表現できたら素敵だと思うのです。
だからポートレートを撮るとき、私はその人を全肯定。その人の魅力を目一杯引き出すことを意識しています。写真を撮られることで「自分も意外ときれいだったんだ」「自分にも魅力的な部分があるんだ」ということに気が付き、それが自信につながってくれたらという気持ちでシャッターを切っています。
食卓に見る、さまざまな幸せの形
2021年の年明けから新たに取り組んだのが「We all eat, It's a small world」というシリーズです。緊急事態宣言中、皆さん家にこもって食事をしていましたよね。そこで何軒かの家にお邪魔して「食卓の風景」を切り口にこの期間の人々の営みを記録できたらと考えました。
これにはもう一つ「さまざまな幸せの形」というテーマもあります。撮影させてもらったのは私の友人たちですが、職業も家族構成も生活スタイルもバラバラです。例えば家族といっても、子供がいる人、夫婦だけの人、事実婚の人、同棲している人。また、ずっと一人の人もいれば、離婚して好きなことをやっている人もいる。安定した職に付き、結婚して子どもを作り、家を買って穏やかに生涯を送っていくといった人生ももちろん良いですが、暮らしや幸せの形は人それぞれ、決まった形などないということを提示したかったのです。
これまでアンダーグラウンド的な世界を撮影してきた私を知る人は、方向性が変わったと思われるかもしれません。でも根っこは同じです。「あなたがそれを幸せだと思うなら、そのままで良いのです」というメッセージ。その想いはこれからも変わらないでしょう。
「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
晴子さんは結婚という形態に疑問を持っていたが、「人妻にはならないけど飼い猫ならいいかな」と結婚式様のお披露目パーティーを行い、事実婚。男性側が独身時代から10年以上住む10畳ワンルームの近くに物置・作業用の部屋を借り、通い婚をしている。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
生活習慣の乱れにより健康診断でメタボ指導をされるほどだったが、自炊を趣味にしたことで劇的に体調が改善。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
本棚から溢れた料理本の数々。新鮮な食材を求め、最小限の調理でいただくことを信条としている。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
自宅で仕込む味噌は塩分控えめ。
冷蔵庫に収まるサイズの桶で、年に何回かこしらえる。調理用具はオタク的目線で選び抜かれている精鋭揃い。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
自家製梅干し。米も農家から購入し、自宅精米するほどのこだわり。食を楽しむ手間を厭わない。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
裕之さんの週末の楽しみは料理。雪が谷大塚のなじみの店で食材を買い回り腕を振るう。
猫の手も借りたい忙しさに、晴子さんが配膳しあしらいものを載せていく。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
工程の一つ一つを楽しむかのような、丁寧な仕込み。この日のメインは牡蠣のバター醤油焼き。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
同居人を眺める猫のような佇まい。ちょっと遠まきにしているところが、またそれっぽい。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
身長180センチを超える裕之さんに、一般住宅のキッチンはいささか小さい。長身を折りたたむようにして日々調理台に向かう。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
よく手入れされた鉄製のフライパンは裕之さんのお気に入り。厳密に火加減を調整しながら、ふっくらと仕上げていた。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
晴子さんが帰宅時間を知らせておくと、在宅勤務の裕之さんが夕飯を仕込んで待っている。
写真撮影が趣味の晴子さんが料理を撮ってSNSにアップし、寄せられる「いいね!」の波に裕之さんはご満悦。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
もてなし好きの裕之さん、あれもこれもと次々に料理をこしらえていく。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
鰤、牡蠣、椎茸、ほうれん草など、色とりどりの豊かな食卓。
「飯(めし)がうまいと通いますからね、ふつうに」とは、餌付けされた晴子さんの談。
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「We all eat, It's a small world」50代男性 経営者 裕之、40代女性 外資系コンサル 晴子
裕之さんは彼女のために文旦を剥き、じょうのう(果実を包む内側の袋)も一房づつ取り除いて口に運んであげていた。
「一人が好きな野良猫だったけど、飼い猫になってもいいかなと思った」という晴子さん。
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ニコンはD300からのユーザーで、ここ最近はD850を気に入って使っていました。ですからZ 7Ⅱを試用したときもミラーレスカメラに特別な思い入れはなかったのですが、実際に使ってみて即購入(笑)。今ではZ 7IIがメインのカメラです。
なにより画質がすばらしい。それにオートフォーカスも高精度。これまでポートレートは、マルチセレクターでフォーカスポイントを瞳に合わせるなどして撮っていました。でもセレクターでの微調整はそれほど素早くはできないため画が硬くなりがちで、それが悩みのタネでした。
「We all eat, It’s a small world」には主にNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sを使っているのですが、写した画から感じるまろやかで艶やかな質感は、まさにこのドキュメンタリーを撮るのに私が求めているものでした。
それから使い心地の良さ。レンズの感触も良いし、リングのトルク具合も絶妙です。ちょっとした操作の違和感も、長時間の撮影では結構なストレスになります。気分良く撮影に没頭させてくれる機材はありがたいです。
これからも多様性をテーマに
私は人とコミュニケーションを取ることが好きで、出会いをきっかけにこれまでもさまざまなことにチャレンジしてきましたが、まだまだやりたいことは尽きません。
今考えているのは「ギフテッド」をテーマにした展覧会。ギフテッドについて現在日本では明確な定義はありませんが、生まれつき高い知能や卓越した才能を持つ人たちのことと言われています。でもその能力ゆえに社会から浮きこぼれて孤独を抱え、生きづらい思いをしている人も少なくありません。
私はそういった人たちを繋ぎ、支援するためのサロンイベントを開いているのですが、写真展では彼ら・彼女らのロールモデルになるような人たちのポートレートを撮って、エピソードとともに展示をするのはどうだろうかと。周囲と馴染めず孤独を抱えているのはあなただけでない。世間には同じように素晴らしい能力を持つ人がいて、こんな生き方をしているんだよということを提示できたら、きっと励みにしてもらえるのではないかと考えています。
そして「We all eat, It’s a small world」の展覧会もやってみたいですね。小さなモニターではなく、大きくプリントした写真を展示した空間で鑑賞してもらえたら、部屋の小物一つひとつが存在感を持って立ち上がり、より生活の空気がリアルに伝わるのではないかと思うのです。
ここ10年ほど女装する人たちを撮り続けてきましたが、世間に認知されるようになったので、私の気持ちの中では一区切りついた感があります。ギフテッドや食卓のシリーズにしてもそうですが、これからはさらに広い視野で生き方の多様性について考え、表現していければと思っています。