美しくも、儚く移ろう光景に惹かれて
今まで知らなかった素晴らしい世界との出会いを、カメラは叶えてくれました。
さまざまな被写体を撮り続ける理由
自分ではあまり意識したことはなかったのですが、人に言われて「確かに私は幅広いモチーフを撮っているかもしれない」と。早朝の自然、男女の人物、山の景色、花火、バルーン、他にも……。
転勤の多い仕事のため、住んだその土地だからこそ撮れる被写体が気になってしまうからかもしれません。広島に住んでいたときも「夏の阿蘇を撮ることができるチャンスは、今年で最後かもしれない」と思ったら、足を延ばさずにいられなくなってしまう。そんなふうに、その土地や人とのご縁がつながって、私の作品群があるように思います。
もっとも最初からそのような撮り方をしたかったわけではありません。8年ほど前、ふと優しい雰囲気の写真を撮りたくなって、ほとんどカメラの知識がないままにコンパクトなミラーレスカメラを購入しました。
手始めに自宅から見える富士山を撮影。よく撮れていたのでSNSにも投稿しました。ところが自分では気に入っていた写真だったのに、反応が薄いのです。そこで他の人が撮った富士山写真を見なおしてみると、素敵だと感じた写真は富士山だけでなく星空や日の出と絡ませているものが多いことに気づきました。それがわかったら今度は自分でもそんな写真にチャレンジしたくなって、早朝にカメラを持って出かけるようになり……。夜景や早朝の景色を撮ることの多い私の撮影スタイルは、この頃から始まっています。
ちなみに、当初思い描いていたふわっとしたかわいい感じの写真は、ほとんど撮らずじまいです(笑)。
惹かれるのは優しい空気感
撮影する上でのこだわりは、特定の被写体にあるわけではありません。
私がレンズを向けたくなるのは、まず一つに星空や花火やホタルなどの夜空にキラキラするもの。それから、夜明けや夕暮れ時のような色彩がゆっくりと移ろいゆく様子や、優しい光に満たされた柔らかな場の雰囲気。
何を撮るにおいても、こういった要素が感じられる瞬間に心が動きます。一瞬輝きながらも、すぐに消えていってしまう儚さに惹かれるのかもしれません。
主に夜から朝にかけて撮影するのは、写真を始めるまで知らなかったこのような美しいシーンに出会えることが多いからです。
そんな実際に感じた空気感を大切にしたいという思いもあり、画作りは現像しながらイメージに近づけるより、できるだけ撮影時に追い込むようにしています。
その点ニコンのカメラの発色は自然で、私のイメージに近い画が撮れるので好きです。日の出とともに変化する空、寒さでうっすら赤みを帯びた肌など、撮って出しでも微妙な階調がしっかりと再現されるように感じています。
出会いが私のフォトライフを支えている
写真を撮り続けているうちに、大切なカメラ仲間が増えていきました。
初心者向けのミラーレスカメラからニコンのD7000に切り替えたのも「良い写真を撮りたいのなら一眼レフのほうがいいよ」という知人からのアドバイスでした。ニコンのハイエンド機を持った人と星空を撮りに行ったときは、同じ空を撮っているのにあまりにも写っている星の数が違うので理由を尋ねると「それはセンサーがフルサイズだから」と……。そこであらためてセンサーサイズの重要性を認識し、D810へと移行。そんなふうに私のステップアップは、新たに出会った友人・知人たちに支えられているように思います。
人とのつながりといえば、SNSの影響も大きいですね。
九州から北海道まで、さまざまな場所へ撮影に出かけていますが、日本全国にSNSを通じて知り合った人たちがいますので、遠征時はその場所周辺に住んでいる方たちと連絡を取り合い、現地で集合して撮影することも少なくありません。また人物をモデルとして撮影したりもするのですが、皆さんやはりSNSで知り合った人たちです。住む土地、年齢、仕事も関係なく、写真を軸にフラットに付き合える関係が作れるのはとても楽しく、また刺激にもなります。
作品作りに欠かせないレンズ性能
今私が使っているカメラはZ 7です。
D810の性能に不満だったわけではありません。ただ長時間持ち歩くことを考えるとやはりZ 7の軽さは魅力的。
実際に使ってみてまず感じたのが、EVFの見やすさです。仕上がりの画がそのままそこに表示されるのが非常に良いですね。ファインダーを覗くだけで「おっ!」と圧倒されたり感動したり。撮っていて、とても楽しいカメラです。
もちろん撮影性能にも満足しています。夜間の撮影が多い私にとって、高感度性能は重要な要素。Z 7は暗所の描写もノイズが抑えられていて、非常に高感度耐性に優れていると思いました。またオートフォーカスで撮影することが多いのですが、暗くてもピントがくるので助かっています。
レンズのお気に入りはNIKKOR Z 35mm f/1.8 SとNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sです。これらを開放で撮影したときのボケがなめらかで優しく、とても好きです。もちろん解像感も高く、それでいて軽い。逆光の状況でも白飛びや黒つぶれなどなく、微妙な階調も再現できていて、逆光でも気兼ねなく被写体にレンズを向けることができます。NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 SとNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sも揃えたので、これで私の撮りたいものはある程度カバーできるのですが、できれば早く135mmのレンズも出してくれないかと期待しています(笑)。
定点観測的な作品展も開いてみたい
今は世間的に、あまり自由にあちこちに出かけて撮影ができる状況ではありませんよね。私も身近で良い場所、良い時間を探して撮影をしています。今までもポートレートなどは長く同じ人を撮らせてもらったこともあるのですが、今後はあえて同じ人や景色を撮り続け、撮り始めた当初からの時間の経過なども残せるといいかなと思っています。時間のかかる計画ではありますが、いずれはそんな作品を展示する個展を開いてみたいですね。