カメラで描く、独自の景色。世界の人たちを魅了する梶原ワールド
モデルは我が子、色の構成は妻のアドバイス。家族で作品を創り上げています
作品作りは家族全員で
「まるでアニメの世界のようで素敵ですね」
海外の方からこんなコメントをいただくことがあります。Instagramが私のアカウントを公式に紹介してくれてから、国内外にかかわらず随分とフォローしてくれる人が増えました。もちろん褒めていただけるのはとても嬉しいのですが、「誰か」や「何か」の作風を意識して撮るようなことはありません。あくまで実際の風景を前にして、湧き出てくるイメージに近づけるように撮影しています。
写真を始めたきっかけは、子どもの写真を撮りたかったからです。それまで特にカメラを趣味としてきたわけではなかったので、まずはニコンの一眼レフのエントリー機からスタートしました。
5〜6年ほど前にInstagramを始めた当初は、投稿していた写真も我が子の笑顔などでした。その後趣味で登山を始め、自然と触れ合う機会が増えるあいだに風景の撮影へ興味がいくようになり、さらにその風景に子どもをマッチングさせたらどうなるだろうと……。それが現在の作風の出発点となりました。
撮影は大抵週末に家族全員で出かけます。モデルである子どもたちはもちろん、妻も写真が趣味なので、二人で協力しています。場所が決まった時点で、妻にどのような場所であるかを説明し、その景色に合うような服や小物を用意してもらいます。私の作品は「赤の使い方が印象的」とよく言われますが、実は妻のアドバイスに寄るところが大きいのです。
私の作品を、女性が撮影しているのだと思っている方も多いようです。おそらく妻の感性も作品に反映されているからでしょう。
風景を魅力的に描くために、重視していること
私の写真のテーマは「風景」です。子どもとの組み合わせに物語性を感じる人もいるかもしれませんが、いかに目の前の景色を私なりに魅力的に描くことができるかが関心事になっています。
そのために重要と考えていることの一つは構図。大きな構成、ポイントを置く位置、視線の誘導など、独学ながら構図には神経を使っています。
広々としたロケーションの撮影時には、奥行き感を大切にしています。それには何キロ先までもきっちりと描写できるレンズ性能が必須。その点ニコンのレンズやカメラは私のイメージに近い画を出してくれるので、満足しています。
事前調査も重視しています。事前に現地へ行けるようであれば行って状況を確認しておくことはもちろん、その土地の特徴や気象状況などについてもできるだけ調べています。撮影のタイミングの良さを褒められることも少なくありませんが、偶然に任せるのではなく、せっかくの撮影機会を活かすための準備は可能な限り行っています。
また撮影場所の選定ですが、住んでいる岡山からアクセスしやすい範囲で気になる場所を、ネットの情報やGoogleマップの航空写真、ストリートビュー等で確認し決定しています。
ちなみに有名な撮影スポットに行っても、誰もが撮るような撮影ポイントにカメラを向けるとは限りません。むしろ現地で自分なりの撮影ポイントを探しています。情報に囚われなければ新鮮な視点を発見できたりするものです。
さらにカメラの設定で、よく行なっていることが2つほど。
一つにはアクティブDライティングの設定を「より強め」にしていること。自然の豊かな色の変化をできるだけ作品に反映したいという考えからです。
もう一つはピクチャーコントロール設定。風景を撮る場合でも「ポートレート」で撮っています。「風景」設定で撮ることもありますが、「ポートレート」の方が私のイメージに近い明るさになるからです。
想像を超えていたミラーレスカメラの使いやすさ
ミラーレスカメラの評判も聞いてはいましたが、この数年使っていたD750に満足していたので購入するつもりはありませんでした。たまたまZ 6を試すことのできる機会があり使ってみたところ、「これはすごい!」と感激して……。
なによりファインダーを覗いたら、そのままの色合いがでる。設定もファインダーを覗きながら行えますし。これまでの光学ファインダーでは、イメージに近い色を出すために何枚か試し撮りをしなければなりませんでした。それがなくなり、撮影がずいぶんと楽になりました。
また構図をイメージに近づけようとすると「水面ギリギリに構えなければ撮れない」といった難しい状況での撮影になってしまう場合もあります。ミラーレスカメラは軽量なので、多少きつい姿勢でも片手でカメラをコントロールできる。助かっています。
それからダイナミックレンジの広さ。微妙な階調もさらに豊かに表現されるようになったように感じます。
また、ここまで揃えてきたF マウントのレンズが随分あるのですが、マウントアダプター FTZを使用することで、すべてのレンズが以前のカメラで使っていた時のように問題なく活かせています。
今では撮影に持っていくのは、ほぼZ 6です。
ミラーレスカメラに変えて、私にとっては良いことしかありませんでした。
カメラと出会い、世界が変わった
カメラを始めてから、世界の見え方が変わったように感じています。毎日見ていたはずの田んぼや雲がとても魅力的に映るようになり、これまで気がつかなかったものに気がつけるようになりました。
私の作品を見て「今後個展は?」と尋ねる人もいますが、これまでの表現活動の形を変える予定はありません。
毎週のように家族で出かけ、家族と共に作品を作り、約15万人のInstagramのフォロワーの人たちと感動を分かち合う。しばらくはそんな日々を続けて行きたいと思っています。