柴崎 まどかMadoka Shibazaki
NIKKOR Z50mm f/1.2 S
「私の想いを受け止め、
心躍らせる」
開放F値1.2という明るさで私の想いを確実に受け止める。思い描いた以上の表現力に心は躍り、シャッターをきる手が止まらなくなった。フォーカスを合わせたい部分は確実に捉えた上で、アウトフォーカスに向かって柔らかくなだらかに背景に溶け込んでいくボケが気持ちいい。いつもは、背景も含めて人がその場所にいるリアリティーを表現したいという想いから、パンフォーカスで撮ることが多い。しかし、このレンズは開放であっても隅々まできちんと描写してくれる安心感がある。信頼できるレンズとの出会いは、私の作品の幅を大きく拡げてくれるだろう。
立ち寄ったカフェテリアで撮った一枚。窓から入る柔らかい自然光と室内の電球光が混ざる複雑な光の中、しっかりと肌や服の色を表現してくれている。至近距離からf/1.2の開放で瞳にフォーカスを合わせているが、肌や唇の瑞々しさまでしっかりと、そして上品に描写されている。
一面の雪を見て嬉しくなり、私も彼女もはしゃいで走りながらの撮影。ほぼ開放でここまで被写体の動きを捉えるAF性能には驚いた。服のディテールやファーの毛並み、マフラーや手袋についた雪までもしっかりと描写し、美しくぼけた背景が彼女の躍動感をいっそう際立てている。
晴天の雪原で、舞い上げた雪とともに捉えた瞬間。逆光にも関わらずゴーストやフレアがまったく気にならない。そして、ピント面では雪の粒一つひとつが見事な解像力でくっきりと描かれている。前景の丸ボケと背景の大きく柔らかなボケが、作品に深い奥行きを与えてくれた。
ため息が出るほど引き込まれる解像力。彼女の語るようなまなざしのニュアンスをそのまま写すことができた。ここまで存在感が際立って見えるのは、ピント面のシャープさもさることながら、入り組んだ背景が柔らかなボケによって、美しくまとまっているからだろう。
凍った湖を背景にポツンと彼女が立った瞬間、どこか遠い国の絵を見ているようだった。このレンズは、小さな彼女はもちろん、橋や左右の枯木の細部までシャープに描写した。何より驚いたのは、ここまでの遠景でありながら背景の山並みが彼女を包み込むように優しくぼけていることだ。
夕暮れの湖畔、彼女の帽子の色や素材感と背景の枯れ草が不思議なシンクロを見せていた。山に隠れていく夕日を見つめる瞳にフォーカスを合わせる。その睫毛まで、そして風に揺れる帽子の細部まで克明に捉えた。背景の枯れ草は美しくぼけ、その表情を際立てている。
ロケ地から戻る途中のサービスエリアで撮影。目の前にいるような雰囲気を出すために、携帯型のフラッシュにアンブレラとディフューザーを装着し、柔らかく控えめな光を当てた。陰影の絶妙なグラデーションが彼女の表情をより印象的にしている。そして何より、背景となった車のライトや街灯の美しい丸ボケが、このシーンをよりドラマチックに演出してくれた。
写真家
柴崎 まどか(しばざき まどか)
1990年、埼玉県生まれ、東京都在住。大手アパレルメーカーでファッション広告のデザイン・ディレクションを経験。退職後、フリーランスフォトグラファーとして「アルプススタンドのはしの方」、「転がるビー玉」、「左様なら」など、数多くの映画作品のスチル撮影を手掛ける。さらに、雑誌、広告、カタログ、アーティスト写真など幅広い活動を展開。